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壷中天  作者: 木の枝
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私と“私”

 人と関わることが苦手だった。


 私はどうやら“理性”とでも言うべきものが人より強いらしく、“私”が私をどこかから観察しているような感覚が常にある。その“私”は、私がどんなに笑おうが悲しもうが怒ろうが、常に冷静に私を見ている。そして“私”から見た私は―――――ひどく滑稽に見えた。冷めた“私”にとっては些細なこと、どうでも良いことに私はいちいち反応する。それが“私”には滑稽さと憐れみと蔑みを誘う光景に映った。


 だから私は“私”に従うように行動しようとした。そうすることで私は“私”から滑稽だと思われるのを防ぎ、“私”の憐れみと蔑みから逃れようとした。しかし―――――私はしばしばそれを忘れ“私”の嘲笑をよそに私の思うまま動いた。そしてふと“私”のことを思い出すと、今度は私に向けられる憐れみと蔑みをより強く感じつつ自己嫌悪に陥った。


 そんなことを毎日何度も繰り返し、いつの頃からか、周囲の者からも私は“私”が見ているように見えているのではないかという考えに取り憑かれるようになった。そう考える、いや、妄想する私を“私”はやはり嘲笑ったが、私はその妄想から逃れるためより一層“私”に従うよう腐心した。以来、私が“私”に嘲笑われないよう行動しようとすればするほど、妄想に取りつかれた私を“私”は嘲笑う。そして“私”を忘れて私の思う通りに動けばやはり“私”は嘲笑う―――――どう行動しても私は“私”に憐れまれ、蔑まれるという状態に追い込まれた。唯一の逃げ道は―――――独りになること。だから休日などは必ず一人で過ごした。


 独りのときは良い。独りでただ無為に過ごし、笑うことも泣くことも怒ることもしなければ“私”が私を嘲うことはない。しかし僅かでも人が関われば私は“私”に従うように行動しても私が思うように行動しても“私”に嘲笑われ、蔑まれ、憐れまれる。

―――――だから私は人との関わり合いが苦手だった。


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