重生
梯子に手をかける。考えが正しければこれで外に出られるはず。登り始める前に、今まで私が過ごした部屋を振り返った。可能な限り、部屋は片付けてある。さすがに破れた本や表紙のひしゃげた本はどうにもならなかったが。どことなく、独り立ちして地元を離れた時のような寂寥感に襲われ、しばしじっとたたずむ。やがて部屋の光景を目に焼き付けるかのようにゆっくりと目を閉じ、一つ息をつく。目を開き、梯子に向きなおり、どことなく決死の面持ちで登り始めた。
一段一段、確かめるようにゆっくりと登る。あともう少しで天井に手が届く。手が届いて―――――すり抜けた。何の抵抗もなく。そしてその瞬間、周囲は真っ暗になった。自分と自身がとりついている部分の梯子、そして遠く上方に、弧を描いた光の筋だけが見える。ああ、あれが出口だ。自然とそう思った。
出口はまだ遠い、それでもゆっくりと焦らずに私は登る。登りながら、ふ、と考えた、いや、連想したことがある。―――――産道。この産道を通ることで、新たに生まれなおす。そんな、連想。だとすればあの部屋は子宮になるのだろうか。
あと少し。私は下を見下ろしてみた。足元には闇が広がる。ここまで来ると、なぜかあの部屋がとても懐かしい気がした。戻るならきっと、今なのだろう。もし次にこの壷の中に入ることがあったとしても、その時には私にとっての天国は別のものになっているだろうから。しかし私は決別するように顔をあげ、上を見据えた。
あと数歩。もう光がすぐ目の前にある。その光に向けて、私は手を伸ばした。