壷の中
漸くここから出ることを決めたというのに、私はまたベッドの上に逆戻りしていた。うずくまって頭を抱える。出口が見つからない。もしかするとここはそういった場所だったのだろうか。……いや、そう決めるのはまだ早い。何かここを出るヒントになるものはないだろうか。
ヒント……。「壷中天」。壷中天は故事だ。故事に何かヒントになるものは……。だめだ。私はその故事を詳しくは知らない。元が対して知らないうえにうろ覚えでは話にもならない。何か他に……。ほかには……壷を購入した店で交わした会話。あの女性が壷に関して言った言葉。確か……。
「『壷中天』、ですね」
「商品名のようなものです。『壷中天』。意味は読んで字のごとく―――――壷の中の天国、ですね。ただし、その人にとってだけの天国ですが」
「それに、『天国』とはいうものの……この商品自体はただの壷であることに変わりはありません」
何かが引っ掛かった。もう一度思い返す。「ただの壷」。……そうだ、壷だ。あの女性はこの壷をただの壷だと言った。この部屋は壷の中だ。壷の中から出るには……。
私は上を見上げた。視界に白い天井が広がる。続いてあるものを探す。ずっと変わっていると思っていた。本棚の最上段から二、三段下までの高さがあれば十分用は足りるはずなのに天井にまで届く、単に書架用だと思っていた梯子。あの梯子は―――――書架用としての役割はむしろついでで、本来の役割は中と出口を繋げるものなのではないだろうか。