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狭い中で

作者: 羽田恭
掲載日:2020/01/03

 あつい あつい あつい


 彼女はあえいでいました。

気が付いた時にはこの中にいて、体がひどく熱い。

それはいつからだったのか。これはいつまで続くのか。

今、自分は何をやっているのか。

 ただ一人。これまでも、これからも、どこまでも。

考えがまとまることもなく。


 あつい あつい あつい


それだけを感じて。



―――――これよりあなたに送るものがある。

声。

初めて聞く自分以外の声。

―――――すまない。

―――――あなたに贈るものは、絶望だ。


 すると彼女の頭上に光が差し込みます。

初めて見るまぶしい白い光。

でもそれはすぐに遮られ、黒い影に。

 ドサ

黒く、茶色く、臭い何か。

孤独な彼女が初めて接するものに、嫌な気持ちになりました。

 少しして、それの姿が変わっていくのを見ます。

溶け出し、縮み出し、燃え出し、炎へ。

 彼女と同じ姿へ。

「うあ。ああああああああ」

また声。それは高らかな声。

「うあ、ああああああああ。ありがとう」

燃え尽き、消えました。


 最後に残された言葉、意味はよくわからなかったけれど、また聞きたい言葉。


 次々に、次々に。

頭上に光が差し込み、嫌な気持ちになる何かが落ちてきました。

そのどれもが彼女のいる場所に落ちると、溶け出し、縮み出し、燃え出し、炎へ。

炎へ。

炎へ。

光へ。

消えていくのです。

「ありがとう」

そう言い残して。


それがずっと続いたある日。

 でも少し寂しいな。

体がひどく熱いのも、なんだかそこまで苦しくなくなってきたけれど。

みんなすぐいなくなる。

「ありがとう」

いくらでも聞きたい言葉だけれど。


―――――ダメだ。入れろ入れろ入れろ!

不意に荒々しい声が聞こえてきました。

―――――落とすしかない。許してくれ。


 ズドン

いつもと違うものが落ちてきました。

何よりも黒く、臭く、近寄りたくないもの。

溶けない、縮まない、燃えない。

近づいてみる。

その汚いものから手が伸び、彼女につかみかかった。

炎。

何よりも黒く汚いものが、炎に包まれる。

「きれいだ。きれいになれる」

それは声を出す。

でも彼女から手を離すと、また黒く。

「ああ」

いつもと違う、ああ、という声。

彼女は更に近づき、それに触れ、撫でました。

「私に触ってくれるの?」

炎がそれに広がります。

黒いそれは、紅く燃え広がります。

「きれいになる! お願いもっと触って。私をきれいにして。ずっとずっと」

抱きついてみました。

「ずっとずっと、このままでいて。ずっとずっと」

 炎がやさしく包み上げました。



 彼女と黒かったものはそのまま抱きしめあっています。


「ありがとう」

ありがとう。


狭い中で。


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― 新着の感想 ―
[一言] 炎と焼却炉のお話なんですね。 ちょっと不思議テイスト 興味深かったです。
2023/04/29 14:38 退会済み
管理
[一言] やはり焼却炉の中のお話だったのですね。 今までは「燃えないゴミ」として埋め立てるしかなかったものも、高性能な焼却炉の登場によって「燃えるゴミ」として処理できるようになりましたね。 そのた…
[一言] 場面や色んなものの立場がよくわからないのですけど、焼却炉の中のお話のように感じました。 彼女はなんだろう。 焼却炉自体なのか、炎なのか。 燃えて彼女と同じ姿にって文章があるから、炎なのかもし…
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