忍者と侍のはじめまして
その日私は出会った
「侍に!」
その日私は出会った
「忍者に!」
この話は私、ひなが中学に入学し少したった頃のものだ。その頃の私は忍者が大好きだったが誰にもその事を言っていなかった。なぜかと言えば絶対笑われそうな気がしたからだ。でもまぁ、全然そんなことはなかったのだが。とにかくこの頃はそうだった。なのでよく公園で手裏剣を投げたり自作したまきびしなども使って忍者ごっこみたいのをしていた。今でもするけど……。と、とにかくこの日も放課後人があまりいなくなってから公園に向かったんだ。
この話は私、さなが中学に入学して少したった頃だと思うでござる。私は侍が大好きで木刀も自分で作ったりするほどでござった。でも私はその事を周りのみんなには内緒にしていたでござる。まぁその恥ずかしかったでござるよ。ちなみに今ではこの話かたも友達に言ってみたらと言われたものでござるし仲良くできてるのでござるがな。して恥ずかしかった私はよく放課後の人がいなくなった頃公園で木刀の素振りをしていたのでござる。そうあの日も私は公園にむかったんだよ……。じゃなかった、むかったでござる。
私は公園につくとさっそく新しい手裏剣の試し投げを、はじめた。本物みたいに静かに素早く動いては木にむかってシュシュシュシュ!すかすかすかすか!
「今日はあんまりよくないみたいだな、手裏剣が」
私は手裏剣を置くと懐に隠し持っていたまきびし(めっちゃ痛い)を取り出すと周囲にまいた。
「んふふ、これで誰も近寄れないな」
機嫌が良くなった私はさらに広範囲にむかってまき散らした。すると向こうから
「危な!!な、何これ」
という多分女の子の声が聞こえてきた。そしてその声が聞こえた方からやはり同い年くらいの女の子が歩ってきた。ただ普通の女の子ではなく手には長くて2つほどトゲがはえている物をもっている。よく見るとそれは木刀だ。トゲに見えたのは、あっ!まきびし……。
「あなた?こっちにむかってこのトゲトゲしたの投げてきたのは!?」
「あっあの、はい!すいません」
「危ないでしょ、もし私が木刀…もってなかっ…た、ら……?」
どうしたのだろうか?急に声が小さくなってなんか顔を隠しだしたぞ?
「あ、あのどうかしたんですか?」
「い、いえなんでもない…デスよ」
いや明らかになんかあるでしょ!なんか最後カタコトだったし!そこで私はあることに気づいた。この人どこかで見た気がする。それもかなり最近、私はじっと見つめる。
「ど、どうかしたんデスか?」
「あっ!あーーーーーーー!同じクラスのさなちゃんでしょ!?」
「いいえ、そんな人知らないです」
「いや、絶対そうだよ!ほとんど話したことないけどわかるよ」
「うっ……」
さなちゃんは少し考えるような表情をしてから観念したようだった。
「そうだよ。あなたはひなちゃんだよね?」
「うん。さなちゃんこんなところで何してたの?」
「うっ……」
さなちゃんはまた少し困った顔をした。でも私は続けてこんなことを言った。
「木刀なんか持って」
その瞬間さなちゃんは困った顔から一気に赤くなって頬を膨らませた。
「なんかってなんですか!分からないんですかこんなにかっこいいのに!私は木刀が、いえ侍が大好きなんですよ!」
顔がくっつくくらいの距離まで接近した。やべぇーさなちゃんそんな感じだったのかー。全然話したことなかったから知らなかったけど……。私が少しひくような顔をしていたのに気づいたのか一気にしゅるしゅるしゅるとさなちゃんは小っちゃくなってしまった。
「あ、あの今のは忘れて下さい」
「え?」
「だ、だってみんなに知られたら恥ずかしいじゃないですか、今時侍って……」
あぁこの子も同じなんだ。忍者が好きって言えない私と。私はここであることを決めた。
「忘れてあげない」
「えっ?」
「だからさなちゃんが侍好きって事忘れてあげない。その代わり私の秘密教えてあげる」
「ひなちゃんの秘密?」
さなちゃんになら言っても平気だな。侍好きってのも聞いちゃったし。
「私、忍者が大好きなんだ!もうほんとにまきびしだって自作しちゃうくらいにね。今日ここにいたのも試し投げだったりするためなんだよ」
「えっええ?」
さなちゃんの目がまん丸に見開かれている。
「あーなんかスッキリした。初めてだよ誰かに話したの」
「うっうん。私も初めてだよ」
私たちはそれからいっぱい笑った。相手の顔をみるたびに笑い合った。
「でもすごいね、木刀でまきびしを防ぐなんて」
「そんなことないよ、まきびしを自分で作っちゃうほうがすごいって」
「ぼ、木刀作ってる人に言われても説得力ないんですけど……」
「あはは~……」
私はそこで真剣な顔にもどし、さなちゃんに言った。
「これからよろしくね」
「こちらこそよろしく!」
そんな笑顔がかえってくるのだった。
「とまぁ私たちが出会ったときはこんな感じだったよね」
「そうでござるな、この後忍者と侍どっちが強いかって話もあったでござるがな」
「あ~あったね。結局忍者ってなった気がしたけど」
「なにを言うでごさるか、侍になったに決まってるでござろう?」
「え?」
「は?」
バチバチバチ私たちの間に火花が散った。だがこれはまた別の機会にはなすとしよう。