お茶会とヘアオイル
「お待たせしました、お嬢様。」
ワゴンに紅茶セットとクッキーを載せて戻ってきた。
「ありがとう、アル。
さっそくいただきましょ。
マリー、アルはすごく紅茶を淹れるのが上手いの!」
「そんなっ、お嬢様っ。」
アルったら照れちゃってかわいい。
「クスクス、それは楽しみですわ!
アダルベルトはいつもバートンさんに扱かれてますから。」
知らなかった。
バートンの指導は厳しそう。
「マリーさん!」
あら、顔が真っ赤よ?
「そう、だから美味しいのね。
ほら、アルも座って!
3人で楽しむわよ!」
なかなか座らない天使を無理矢理
隣に座らせて、カップに口を付けた。
うん、美味しい。
「……?
美味しい、でもバートンさんとは違うような。」
首を傾げながら、味を確かめるマリー。
そうなの?
「旦那様や奥様は薫り高くフレッシュな後味がお好きですが、お嬢様はお菓子と召し上がる時は決まって、渋めで重みがあるものを好まれます。」
そうなのっ?
「なるほど、だから練習と違ったのね。」
うふふ、と笑うマリー。
ずるいわ、私も練習のお茶飲みたい。
「ええ、父に教えて貰っているのは、
旦那様の好みに合わせた来客用の練習です。」
「そう、じゃあ
このお茶は私の為だけの味なのね?」
嬉しい!
やっぱりあなたは天使だったのね!
一生天界に帰らないでちょうだいっ。
「はい、喜んで頂きたかったので。」
喜んでますとも。
それはもう、大いに!
「良かったですね、お嬢様。」
「ええ!」
「それと、オイルが用意出来ました。
店主も、メモの特徴に当てはまっているが、
珍しいオイルだから、合っているか不安がってたみたいですよ?」
待ってました!
どれどれ
紙袋から、2つのボトルを取り出す。
栓を抜いて、香りを確かめた。
大丈夫、ちゃんと椿油とアルガン油だわ。
これで全て揃った。
あとは混ぜるだけね。
「合ってるわ。
この2つが欲しかったの。
お使いに行ってくれた人にもお礼を言っておいて。」
それじゃあ、早速仕上げにかかりましょう。
うーん、とりあえず大きめの瓶に全部合わせて、
小分けにしようかな。
椿油100cc
アルガン油70cc
ローズウォーター30cc
ゼラニウムオイル薬さじ6杯くらい
これをよく振って攪拌させて、と。
ヘアオイル完成!
残りのローズウォーターと
使わなかったゼラニウムウォーターで
化粧水も作ろっかな。
早速、髪に塗ってみる。
良い香りだし、指通りサラサラ!
日持ち悪くなるけど、ローズウォーター混ぜた分、
ベタつきも少なくて悪くないわ。
出来ればもう少し軽いオイルを作りたいけど。
「お嬢様っ、出来たのですか?」
キラキラした瞳で私を見るマリー。
「ええ。どうかしら?」
サラッと自分の髪を払って見せる。
「綺麗ですわ!いつもの髪が、さらに輝いてます!
なのに、全然ベタついてませんのね。」
まあ、オリーブ油単体に比べたらね。
ベタつくことはベタつくけど。
「ふふっ、マリーにもつけてあげる。
髪、解いてもらって良い?」
「勿論です、すぐに!」
彼女の髪は、ふわふわの癖っ毛で
絡まりやすいから、良いモニターになれそう。
毛先からつけて、とりあえず手ぐしでいっか。
「どう?」
鏡の前に連れて行って、確認させる。
「すっ、すごいです‼︎
あんなに纏まらなかった髪が、こんなにっ!
しかもサラサラです!」
興奮気味に鼻息を荒くする、マリー。
良かったわ。
「じゃあ約束通りあげる。
今小瓶に移すから、待ってて。」
「本当に宜しいのですか?
こんなに素敵なものを!」
「最初にいったでしょ?
それに王妃様にお渡しするんだから、
問題ないか実験しなきゃ。
だから、今日明日の髪の調子、しっかりレポートしてね。」
ママと、あと侍女何人かに渡してレポートしてもらおう。
明日の朝には出なきゃいけないけど。
「ありがとうございますっ‼︎」
「良いのよ、それより
これとは別にもうちょっと小さい小瓶
探してきてくれない?」
侍女達の分が足りないわ。
「ただいまっ!」
「ねぇ、アルはどう?私の髪。」
わくわく。
「すごく綺麗です。
お嬢様から良い香りがしますし、
それに頭に天使の輪が。」
ん?天使の輪?
そりゃオイル塗ったからね。
「コレはオイル塗ればなるのよ。」
てっぺんを指差して言う。
「ですが、マリーさんには……」
「私は元々、あまり傷んでないから。」
10歳だしね。
「そういうものなんですか。」
何でちょっと残念そうな顔をしているんだい、
アダルベルト君よ。
その後、大興奮のマリーが持ってきてくれた
小瓶に移し替え、みんなに試して貰った結果、
大好評だった。
みんな口を揃えて翌朝の髪の纏まりと艶を絶賛していた。
余談だが、
もらえなかった女性陣からの視線が恐かった。
今度いっぱい作るから!ごめんねっ。
―――――――――
――――――
「ソフィー、準備出来た?」
「はい、ママ。」
憂鬱だわ。
ママのアドバイスで、
お土産のヘアオイルは、綺麗な布で包み
薔薇を1輪添えた。
ママはオイルを相当気に入ったらしく、
パパに頼んで、屋敷に薔薇栽培スペースを作ろうとしている。
領民にも協力してもらい、生産に力を入れるつもりらしい。
でも、不思議よね。
うちの屋敷を含め、半径1kmはいつでも薔薇が咲いている。
1km超えたら、収穫時期は限られるのに。
「アル、ソフィーをお願いね。
この子はちょっと顔に出やすいから。」
え、そうなの?
「お任せ下さい、奥様。僕がフォローします。」
ねぇ、私って顔に出るの?
「じゃあ、ソフィー。
くれぐれも失礼のないようにね。
ほら、変な顔しないのっ。」
私って出るんだ………。
王都までは、寝ずに馬車を走らせ1日半。
勿論、寝ないのは御者であって私達じゃないけど。
というか寝ずに1日半ってヤバくない?
事故るよね、普通。
だってこれ結構なスピードよ。
景色楽しめないもん。
この間のパーティーは途中で泊まりながら、
行きに3日かかったわ。
帰りは王子が馬車を用意してくれたから1日だったけど。
ん?待って、王宮の馬ってどうなってるの。
こわっ。
そんなこんなで、着きました。
「お嬢様、王都に着きました。
とりあえず宿で身なりを整えて、王宮に向かいましょう。
あと1時間程しかありません。お早く。」
「分かったわ!」
「では、準備が出来たらお呼び下さい。」
えっ〜と、お風呂!
良かった、お風呂がある宿で。
烏の行水並みにサッと入って出る。
ヘアオイルは付けとこ。
いったん、タオルで髪巻いて……
次はドレスね!
うん、お茶会だしコルセットつけなくて良いよね?
本当はつけるんだろうけど……1人じゃ無理!
その辺誰も考えてなかったよね、うちの家族。
後ろでリボンを、
んー、難しい。後でやってもらおう。
次は顔。
メイクは楽勝よ、元大学生だもん。
造りが良いから、チークとリップだけでOK。
10歳にメイクって必要?
よし、あと40分ある。
「アルーーっ!」
―――コンコン
「お呼びになりましたか。」
「うん、髪の毛乾かしてちょうだい。」
「かしこまりました、失礼します。」
お、おぉ〜!
目にも留まらぬ速さで、タオルとブラシを動かしていく。
アル、あなた一体何を目指しているの?
「終わりました。仕上げにオイル少しつけますか?」
何で乾くの、本当に。
「お願い。」
「今日もお綺麗ですよ、お嬢様。」
髪にオイルをつけながら言う天使。
そういうあなたは、めちゃめちゃキマってますね。
どうしたの、アル。
前髪を後ろに撫で付けちゃって。
ギャップなの?
ギャップ萌え狙いなのっ?
「アル、、は、違うわね。その髪……」
「ああ、父をマネてみました。
似合いますか?」
「え、ええ。とても。」
破壊力抜群ですとも!
輝いてますとも!
「ありがとうございます。
後ろ、僕が結んで良いですか?」
後ろ?
ああ、リボン。
「頼むわ。」
シュルシュル。
リボンを結ぶ音がやけに大きく聞こえる。
「お嬢様、少し髪を上げていて頂けますか?」
「は、はい!」
「………?
終わりましたよ。」
うん、
どこからどう見ても、貴族の令嬢だわ。
問題なさそうね。
「ありがとう、アル。
さあ、行くわよ。」
「お嬢様、オイル忘れてます。」
「あら、やだ。」
―――――――
――――
「いらっしゃい。
今日は楽しんでらして。」
ゴクリ。
「王妃様、本日はお招き頂きありがとう存じます。
ソフィア・マクロレンスでございます。」
フレイヤ・グランディア。
ドラ学ではヒロインを快く思っていなかった、
ある意味ラスボス的存在!
頑張るのよ、ソフィア。
今度こそ失敗は絶対に許されないわ!




