アダルベルトの約束
〜♪♪♪
「まあっ!綺麗ね。
アレン王子と踊っていらっしゃるのは、
どこのご令嬢?」
「あら、あの子 さっきも王子と一緒にいた子じゃない?」
「ほお、まだ10歳だというのに、
殿下も、あの少女も実に洗練されている。」
「あらあら、本当に絵になるお2人ねっ!」
「お母様!あちらはどこの家の方?
私も殿下と踊って頂きたいわ!」
――――――――
――――
私に合わせてか、簡単なステップを踏んではいるはずなのに、何故か自分が上級者のように錯覚させられる。
これが王子マジック⁉︎
ハイスペック!
「ソフィア嬢、」
「はい、殿下。」
「茶とお菓子は好きか。」
「好きですわ。」
「そうか…では来月期待しておくといい。」
何を⁉︎
「来月ですか…?」
「フッ、ああ。」
そんな優しい顔されても不安が勝ってときめけない。
「……はぁ。」
気の無い返事しか返せなかった。
あ、曲が終わる。
「そう嬉しそうにするな。
人がせっかく楽しく踊っているというのに。」
何故バレた。
「まぁ、気のせいですわ!」
心外だ!という顔してみる。
「ほぉ〜、ならもう1曲踊るか?」
ちっ、ダメか。
「嫌です。」
「おい。」
「どうされましたの?殿下。」
ほら、本当に曲終わるから離れて!
「………」
―――グイッ
えっ、ちょっと
「殿下⁉︎」
「このまま踊るぞ。」
馬鹿なの!それじゃまるでっ…
「こ、困ります、殿下!
私この後、約束がございますのっ。
…それに続けてだなんて、周りが何と思うか!」
「どうせ、リオンだろう?
待たせておけば良い。
それにリオンは選び放題だから安心しろ。」
ワザとやっているの?
もしくは気付いてない?本物のお馬鹿さんなの?
〜♪♪♪
「この分からず屋っ」
「ククッ、周りはどう思うんだろうな?
きっとなかなか帰れないだろうな。」
コイツっ、分かってやったのね。
最悪だわ。
「どういうおつもりですの?
責任、取って下さるのよね。」
キッと睨みつけて言うと驚いた顔をした。
驚いてるのはコッチよ!
「へぇ、――責任くらい取ってもかまわん。
このまま父上の元へ行くか?」
くそぅ。王子の方が上手だった!
「……結構ですわ。
それより、人に気付かれないように帰りたいのですけど。
お父様とお母様も一緒に。」
というか、ママどこにいるの?
「そうだな、いいだろう。
このまま移動するぞ。辺境伯ならずっとこちらを睨みつけているから付いて来るだろう。」
パパァっ!
そんなバレバレな態度出しちゃダメよ。
「分かったわ、お母様は?」
「それも問題ない。辺境伯がなんとかする。」
そうね。なんか納得。
―――――
―――
「この奥を下がって右に行けば、中庭に出られる。
マクロレンス家の者に話は通しておくから、
迎えも然程待たずに来るだろう。」
あら、気が利く。
全部貴方の所為ではあるけれど。
「ありがとう存じます。
では、殿下ご機嫌よう。」
挨拶もテキトーに略してやったわ!
「ああ、またな。」
次はない、
馬鹿王子!
――――――――
――――――
「ソフィア!無事かっ!」
「パパっ!私……」
あれ、何て言い訳するのが正解?
「大丈夫だよ、ソフィア。
今日は災難だったね、さあ帰ろう。
ママは馬車に先に乗っているよ。」
ぎゅっと抱きしめるパパの体温に、少しホッとした。
思った以上に不安なのかもしれない。
だって原作はまだスタートしていないから、
知識がない。
まさか婚約者のジルより先に王子と接触するなんて。
「あら、ソフィー。ご苦労様!
早くお乗りなさい?」
え、何でウチのママは普通なの?
「あの、ママ?私パーティーで。」
「ええ、見ていたわ。
ごめんなさいね、
久々にクローリー夫人に会ったから話し込んじゃって。」
誰。
「そういえば、マックレガー将軍に会ったよ。
アンネ嬢も今日出席されていたらしい。」
「まあ、そうでしたの。」
や、話が全く読めんのだが。
見てたら助けてよ。
「ママ、クローリー夫人と将軍様がどう関係あるの?」
「娘よ。今はクローリー伯爵に嫁いだから違うけど、ミルバ・マックレガーが彼女の名前。
そしてアンネさんはクローリー夫人の子よ。」
なる。
「そうでしたか、お会いできれば良かったのですが…」
すっかりアンネちゃんの事忘れてた。
「また今度会えるわ。
さっ、帰りましょ?」
「ああ、出してくれ。」
「かしこまりました。」
やっと帰れるぅ〜‼︎
――――――――
―――――
「お帰りなさいませ。
旦那様、奥様、お嬢様。」
「すまないバートン。少しイレギュラーがあって、
予定より早くなってしまった。」
「左様でございましたか。
ではお食事も?」
「まあ、それは大変!
すぐに料理長に用意させますわ!」
「ごめんなさいね、マリー。
簡単なもので大丈夫よ。」
「かしこまりました!」
ササッとマリーが厨房へ駆けていく。
「準備が整うまで、少しお待ち下さいませ。
先にお召替えになりますか?」
「そうだな、そうしよう。」
「かしこまりました。」
「ソフィー、行きましょう?」
こんな立派なドレス、汚しちゃまずいもんね。
あ、でも、せっかくだからアルに見せたいかも。
「ねぇ、バートン。
まだアルいる?」
「ええ、まだおりますよ。
呼んで参りますね。」
「うん、お願い。」
「あらあらあら〜、
じゃあ後はアルにお願いしようかしら?
パパとママは先に着替えてくるわ、ね?パパ。」
ママの微笑ましそうな目が恥ずかしい。
パパとママと交代ですぐにアディがやって来た。
「お嬢様っ!」
そんなに慌てなくても良かったのに。
飼い主の帰りを喜ぶワンちゃんみたいだわ、
鼻血出そう。
「アル!ただいまっ。」
「お帰りなさいませ、お嬢様。」
「ねぇ、どう?
初めてこんなにおめかししたから、アルに見せたかったの。」
クルッと回ってドレスを見せる。
「アル?」
やだ、固まっちゃった。
こんな理由で呼び付けたから、呆れたのかしら。
「その、ごめんね?」
「――へっ?あ、いえ何がでしょう。」
正気に戻ったアルが慌てる。
「お仕事の邪魔しちゃって……」
「とんでもございません!
それに今日の仕事は終わっています。
その、お嬢様の大事な日でしたので、残っていようかと……」
ギャー‼︎
かわいい‼︎
萌え死ぬっ、天使が天使すぎてツライっ
「そうだったの、ありがとう!」
「いえ、勝手にした事ですので。
――すごくお似合いです、お嬢様。」
あれ?
何故かしら、いつもの優しい笑顔なのに
そわそわする。
なんかこそばゆいわ。
「……あ、ふふ。嬉しいわ。」
「あの、お嬢様。
先月のお誕生日の約束、覚えていらっしゃいますか?」
「約束……」
何だっけ。
私としたことが!
天使との約束を忘れるだなんてっ!
「っ、アル、ごめんなさい。」
「構いませんよ、僕の我儘ですから。」
ああっ、そんな顔しないで!
「本当にごめんなさい!
私どんな約束をしたのかしら。」
ごめんよーマイエンジェル!
泣きたい。
「……パーティーで、
たくさんの方と踊ったのでしょう?」
いいえ、1人だけよ。
「だから、帰ってきたら、
僕とも踊ってほしいとお願いしたんです。」
言われてみれば、そうだったような?
「も、勿論よ!アル!踊りましょうっ?」
何でこんな大事な約束忘れちゃったのかしら。
私ったら、馬鹿ね。
「宜しいのですか?」
「ええ!」
むしろご褒美だわ!
「ありがとうございますっ‼︎」
きゃわいいっ
「まだ、そんなに寒くないから
中庭に行きましょうっ!良いでしょ?」
「はい!」
エントランスを抜けて、中庭に出る。
少し暗いが、部屋から漏れる光で問題はない。
「―――では、お嬢様。」
「まぁっ!ふふっ。」
片膝をついて、手を差し出すアル。
意外と形から入るタイプなのね。
さっきまでのパーティーみたいに、
生演奏もなければ、煌びやかなライトもない。
でも、まだ少し明るい空に光る月と、
頬を撫でる風がとても心地良かった。
「アル、私より上手だわ。」
「そんな事は…。
でもお嬢様と踊る為に夜な夜な練習しました。」
「そうなの?
アルは何でもすぐ出来ちゃうから。」
「いいえ、早くお嬢様の専属になりたいだけです。」
とくん。
こんな至近距離でそんな風に微笑まれたら…
しかも、いつもの笑顔よりなんだか
男らしい?
……男らしいって何っ?
アルは天使のようにかわいいのよ?
「お嬢様?疲れましたか?」
「へっ?ううん、大丈夫よ。」
パッと顔を上げて笑ってみせる。
――そういえば、
いつからこんなに身長高くなったっけ。
私の腰に添えられた手は、
いつからこんなに大きかったっけ。
まんまるだった瞳も、
いつからキリッとしてたっけ。
アルって、こんなに逞しかったっけ。
あら?
あらら?
「クスっ、お嬢様。楽しいですね。」
「ええ、そうね…」
「また、僕と踊ってくれますか?」
どうしてっ
なんか色気がっ。
急に色気が!
マイエンジェル戻って来てー‼︎
「ええ、勿論よ。」
ん?
ますます距離が近く、、
「約束ですよ?」
ぼそっと耳元で低く囁いた。
「ひゃ、ひゃいっ。」
ひぃっ!
吐息が〜!
私の顔み見て、満足そうに笑う。
「フフ、可愛い。」
「ぅう〜‼︎」
誰かっ!
私のアルを返してーーーーっ‼︎‼︎‼︎
あと2〜3話書いたら、学園編スタートします。
追記
サブタイ含め、名前を変更致しました。
アドルフ→アダルベルト(アル)
理由はアル登場シーンの後書きにも書きましたが、
アドルフの名前でよろしくない人名(旧ドイツの)を連想させてしまうからです。
申し訳ありません。




