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令嬢は愛人系婚約者  作者: 武田士郎
2/3

1話 ここは誰?私はどこ?


それは、唐突でした

長い時間水中に潜っていて、漸く上がってこれたときのような感覚


「っはぁっ!」

「おお、起きたか勇者よ。死んでしまうとは情けない」

「ゆう…しゃ…?」


声をかけてきたのは、白いローブを着た白髪のお爺さん

なんだか、魔法学校で校長先生でもしていそうです


「その、校長」

「いや、儂校長先生じゃないんじゃけど、むしろもっと偉いんじゃけど」

「…組長?」

「どうしてじゃよ!と言うかつっこみなさいよ君」

「つっこむ?…セクハ

「ちがわい!」


なんでしょう、楽しくなってきました


「ゴホン、取り敢えず現状の説明からいくぞい」

「わかりました大王」

「グルメレースは関係ないのじゃよ!?取り敢えずお主の現状じゃがの…」

「…あの、こちらは所謂転生の間とか言われる場所で、不幸にも若くしてこの世を去った私は、お情けで何か強力な力を貰って、魔王を倒すためにハーレム作ったり農民の婚約者寝取ったりして最期は断罪されて死ぬとかそう言った展開に巻き込まれているのでしょうか?」

「儂どっからつっこむべきかのう…」


そう言った小説を読んだ事ならあります!何、問題はありません。なんせ、農民の婚約者を寝取ったりしなければいいのですから


「こう、乙女ゲー的なのは無いのかの…?」

「乙女ゲーですか?」


そう言った物ですと…


~~~~


私「おーっほっほっほ!愚民共、跪きなさい!」


~~~~


「私には合わないと思います」

「なんでそうなったのじゃ?!イケメンとイチャイチャとかあるじゃろ!」

「神様の口からイケメンとイチャイチャとか破壊力凄いですわ」

「神様って知っておったんじゃないか!それと、儂のハートにクリティカルヒットしとるからそゆこと言ったらだめじゃよ!」

「すみません、お付き合いは出来ません」

「お主実は強かじゃろ!死因がアレなのに元気すぎる!取り敢えずチートやるから転生してこい!」

「はぁ…」


チートですか…私、ゲームはしっかり実力で攻略したいのですが

あと、痴情の縺れで死んだ私にイケメンとの恋愛薦めてくると言うのはどうでしょうか。これだからデリカシーの無い男性は」

「漏れとる漏れとる」

「はっ…!と言うか、先程から妙に口が荒くなっているような…」


なんでしょう、普段はこんな風に酷いことは言ったりはしないはずなのですが


「…そこはもう、儂にはどうにも治せん。自分で、落とし所を見付けなさい」


神様が小声で、そう言います。はて?


「あーもう取り敢えず基本セットでいいじゃろ。ほーれ、いってこーい!」


神様がそう言うと、足元にポッカリと大きな穴が空きました


「あっ、これは細かすぎてつたわ…」


~~~~



「やっと行ったか…」

まったく、最近の若いもんはこれだから

…これだからいかん


「お主は我慢しすぎておったのじゃよ」


人から仕事を押し付けられても我慢して、悪評流されても笑って、


最後の最後に、愛する人間に騙されて


根が善良で大人しい彼女にとっては、運の無いことだったろう

真面目に過ごしているだけで、裏目に出てしまうのだから


せめて、来世では幸せに生きて欲しいものだ


「さてと…次の転生者じゃったな」



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