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42話  VSメイ・ウィザーロック4

 シザリックファミリー幹部の一人、ありきたりなヤクザ野郎、ジャヴィッツ。

 ボベリウの町で出会った時は、喧嘩の実力は大した事はなく多少口は悪いが気のいいあんちゃん、と言う程度のイメージだった。

 それがどうだ、この圧力(プレッシャー)はメイや【憤怒】にも負けていない。

 何やらキレていやがるな。……なにやらじゃねーか、こんだけボコボコにされたらそりゃキレるわな。都合よく力に目覚めたのは俺でもリリティアでもなく、アイツだったって事か。

 さて怒りと共に目覚める能力、怒りっていうとオルディエの【憤怒】を思い浮かぶが……


「貴方は……」


「なんだよオマエ……ただの雑魚じゃなかったのかよ……」


 メイとリリティアも互いから目を離しジャヴィッツのほうへ視線を移した。


「エルフのねーちゃんと、もう一人? ……そういうテメェこそ何モンだガキ! いつの間にそこにいやがる?」


 あ、そうか、ジャヴィッツはミスリーに転がされて気絶してたからメイがいつやってきたのか知らねえのか。ミスリーの裏にいたのはメイだし、いいぞ、お前ら潰し合え! 俺は今のうちリリティアを連れてここから逃げる!


「テメェか? 俺を……俺達を、吹っ飛ばした後ゴミのように壁まで叩きつけやがったヤツは?」


 すまん、それはリリティアが放った【トルネード】の余波だ。

 傷つき口からも血を垂らしているリリティアの額に冷や汗が流れる。


「ボクがガキだって? へええ言ってくれるじゃん……そうだったらどうすんの、おっさん」


 メイ! そういやお前は身長の割にはプライドはいっちょ前の挑発に乗りやすいバカだった!

 ……俺も動けそうだな、よし、今だ! つぶし合え!


「俺の舎弟にナメたマネしてんじゃねえぞぉッ! ぶ・っ・潰・す・ッ!!!!」


 俺の心の声に聞こえるかのようにジャヴィッツが叫んだ。

 メイがジャヴィッツを、ジャヴィッツがメイに意識を集中させている間に俺はリリティアの方へ駆けようとする。

 が────


「オオオオオオオオオォッ!!」


 俺がリリティアの方へ向かおうとするように、俺がメイに攻撃する際に全力で踏み込んだように、ジャヴィッツもまた地面を蹴りメイの方へ駆けた。

 それによりジャヴィッツは、【暴食】の俺を遥か上回る速度で一瞬のうちにメイの目前までたどり着き────そしてたったそれだけの動作で突風の様な余波が撒き散らされる。


「うおおおおおぉッ!?」

「きゃあああああああっ!!」


 【トルネード】でジャヴィッツ達シザリックファミリーが転がされたお返しと言わんばかりに、俺とリリティアはその余波に吹き飛ばされた。オイいいのか、お前の大事な舎弟もまた余計に転がるぞ。

 それはともかく、俺の【暴食】が共鳴を起こすジャヴィッツの圧力(プレッシャー)、世界を滅ぼす程の力を持つと言われる【大罪スキル】。……まず間違いない! これも同質の力だ!


 コケながらなので良く見えんが、ジャヴィッツの拳がメイの魔法防壁にぶつかったようだ。俺の攻撃はそれに止められたが……


「な、なんなんだよ! お前は本当にッ!」


 メイの焦りよう、どうやら押しているらしい。


「アッシュさん……」


 リリティアがふらりと立ち上がりながら俺に近寄ってくる。俺も起き上がり今度こそそちらに駆け寄った。


「リリティア、無事か」


「はい……でも、ごめんなさい、私、メイさんに全然勝てなくて……」


 傍に来た途端顔を覆い涙を流すリリティア。

 最強の勇者パーティの一角にまさか勝てると思っていないし、今はもうそれどころじゃない。早く脱出しないとあの化け物二人がぶつかり合っている余波だけでここは崩れるかも知れん。ダメージ受けすぎて足にあんまり力が入らんくらいに余力もないし時間も無い。やれやれ。


「ありがとなリリティア、お前のおかげで俺はまだ生きているみたいだ」


 俺はリリティアの頭に手をポンと置き、言葉を投げかけた。


「ああ……わああああああああああぁぁんっ!」


 一刻も早く次の行動に移るためにリリティアを落ち着かせるための言葉と行動だったつもりだが、リリティアはその場でへたり込み、更に大きく泣きだしてしまった。完全に裏目に出たようだ。


「泣くのは後だ、今は逃げるぞ」


 そう言ってもリリティアは泣き止まない。普段ならへたり込んだリリティアを担いで逃げるくらいは余裕だが、体力的にも状況的にも厳しそうだ、うーむどうする?


 と、そんな事をやっている内にメイの魔法防壁が破られたようだ。ジャヴィッツの追撃の直前にメイは空中浮遊の魔法で上へ逃げる。しかし所詮は洞窟の中、高さはあると言え天井までしか逃げられない。

 ……ジャヴィッツの奴、出力(パワー)は圧倒的だが技量(コントロール)が追いついてないな。前衛でないメイにも避けられるとは。あの身体能力があるなら天井のメイにも追撃する事くらい出来るだろうに思いついてもいないか?


「ああクソ! その力はまるで……オマエ! オマエのスキルはなんだ!」


 空中からジャヴィッツに言葉を投げかける。


「スキルだあ? んなもんカンケーねえよ、生まれてこの方持ち前のスキルが役に立ったことがねえ……欲しいモンが出来ると気分がクソ悪くなるだけの外れスキル、【強欲】だ」


 いやそれだよそれ。絶対そのスキルの効果だよ!

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