41話 VSメイ・ウィザーロック3
「勇者パーティのメイさん、ですね? 私、どうしても貴女に聞きたいことがありました。どうしてアッシュさんに酷い事したのですか?」
「それ、さっきアッシュ本人も聞いてたよね? ボク答えたよね? 『答える必要はない』って」
リリティアとメイが睨み合いながら会話をしている。
やけに強気なリリティアにダメージを負いながら怒気を放ってるメイ、か。どっちも付き合いは短くないのにこんな顔見るのはどっちも初めてだな。
「でもそうだね、これだけの威力の他人の魔法見たの久しぶりだ。そんなキミに敬意を評して教えてあげるよ」
メイは一息おいて、言葉を続けた。
「仲間にプリエスって僧侶がいるんだけどさ、カノジョが言ったんだ。『アッシュには災いの力が宿っていてその片鱗が日々大きくなっている。放っておけばいつかこのパーティに害を為すでしょう、ユナイトは優しいからこの事実を言っても何とか庇おうとする。それなら私達だけで災いの発生を未然に防いでしまいましょう』ってさ」
プリエス、アイツが主犯か!
……そう言えば僧侶の魔法ってのはシンプルな回復魔法の他に補助的なモノも多かったな。スキル鑑定士と似たような能力が使えても不思議じゃない。
と、言う事はアイツは俺の中に【暴食】が眠っている事をあの時既に感じ取っていたのか。
「とまあそれがきっかけだけど、正直ボクはそんな不確かな災いなんてどうでも良かったんだけどね。……プリエスが言った通り、アッシュのスキルが開花しててちょっと驚いたけど、やっぱりボク一人に勝てない程度、ユナイトに害になんてなるわけがないんだよ」
相変わらず言い回しがいちいちムカつくやつだ。
……だが事実だな。現に俺はメイを相手にして、無様に地面に転がっている。
「……それなら、尚更どうして暗殺なんてしようとしたのですか。貴方が勇者さんにその事を伝えれば、アッシュさんが殺されかけるなんてこと、避けられたでしょうに」
リリティアのその言葉に対し、メイはニヤリと口を歪ませた。
「いい機会だとおもったんだよおー。元々気に入らなかったのさ、弱くてダサくてユナイトの何のにも立ってないくせにいっちょ前にカレの隣で張り切っちゃっててさあ! プリエスの言う通りカレ、とっても優しいからアッシュが足を引っ張る度にカレに迷惑かかってたんだよお! 僕の魔法があれば雑用なんていらないのにさ! ねえ! そうだろうアッシュ!」
あーはいはいはいはい、お前の言う通りだよお荷物でしたよ俺は! ユナイトは勿論、お前らも覚醒してから強すぎんだよ仕方ねーだろ。
つーかプリエスはともかくお前は完全にゴミを捨てる感覚で俺を暗殺かよ。信頼がとっくになかった事は知ってたが、まさかここまでとはな。
「……メイさん、私、貴女達が行った事、ちょっとだけ感謝してたんです。だって、それがきっかけで私、アッシュさんと出会えましたから」
いつの間にかやや俯いているリリティア。しかし、口調は先ほど以上に怒気が籠っている。
「だから! なにか本当に大きな理由があれば! 仕方がないのかなとも思いました!」
リリティアが再び顔を上げた。その目には涙を浮かべながら先ほど以上の眼力でメイを睨みつける。
「でも! そんな自分勝手な理由は許せません! 今日アッシュさんにした事も許しません!」
その叫びと共にリリティアの周りから風が吹き荒れた。
元々リリティアが得意とする風の魔法。解放しているのか? 暴走しているのか?
「さっきから許さない許さないてさ! キミそんなに偉いの? キミそんなに強いの? このボクを裁けるの? 見せてみてよエルフちゃん!」
「【ハイウインド】ッ!!」
メイの挑発の一瞬後にリリティアが風の刃を発射する。
デカい! 普段のサイズの倍以上ある! さっきの【トルネード】はやっぱりまぐれじゃない!
……そして、なんだ? リリティアの気持ちが昂る度に俺の中の【暴食】も高鳴っている気がする。
「ははは! 君も強いねえ! でも────【ハイウインド】!」
メイもリリティアと同じ風の魔法を発射した。刃の大きさは互角!
────だが、二つの【ハイウインド】がぶつかり合うとリリティアが放った魔法はメイの風の刃に吞まれながら暴走する。
そこから発生する真空の余波は、リリティアの方へだけ拡散された。
「きゃあっ!」
魔法の直撃ではないが、それでも馬鹿威力魔法のぶつかり合いからの余波。
その一つ一つがリリティアの身体を傷つけ、リリティアは倒れながら傷口から赤い血を流す。
「それでも魔法でボクに敵うはずがない」
倒れたリリティアを見下すメイ。
リリティアはすぐに飛び起きると両手をメイの方へ向け、再び叫ぶ。
「なら……【フレアバアァァーン】ッ!!」
リリティアの手から今度は爆炎が巻き起こる。
おいおい洞窟内でそんなもんつかうなよ崩れたらどうすんだ。……比較的範囲を萎めているな、その辺は一応考えているのか。
「ははっ! 【フレアバーン】!」
メイがまたしてもリリティアと同じ魔法を発射する。
今度も【ハイウインド】同様大きさは同程度。────しかし、やはり威力自体はメイの方が上のようだ。
先ほどと同じようにリリティアの爆発を呑み込みその余波でリリティアを吹き飛ばす。
「うぅ……負けません……! 貴女なんかには、絶対……!」
再び起き上がろうと力を込めるリリティア。
あーやれやれ、俺もいつまでも寝てはいられないな、これさっきも思った所だけど。
震える足を無理やり起こし、何とか立ち上がる俺。
しかし、やはり何かが少し妙だな。【暴食】が、俺に力をくれているようだ。なんも食ってねーのに。
「おやアッシュ、キミもお目覚めかい? ……じゃあ、そろそろ二人まとめて消し飛ばしてくれるよ」
そう、起き上がったところで何かが出来るわけじゃない。遊ばれているとはいえ善戦しているリリティアの弾避けになるか、なにか隙をついて一撃必殺を狙うか……しかしさっきのミッシュで何をするにしても警戒されているだろうからな……
【暴食】! なんかお前に起こっているならもっと力を貸せ! 都合よく力に目覚めろ俺!
────そこまで考えた時、場に極めて大きな重圧がかかった。
なんだ? 本当に【暴食】が俺に答えたか?
……いや違う、これは、【憤怒】のオルディエに出会った時と同じ……まさかメイ、お前も、お前のその強さは……!
「な、なんだよアッシュ……! この重圧は! キミが出しているのか!?」
明らかに狼狽えるメイ。……お前じゃないのか? 何やらやけに調子がいいリリティア……も同じように驚いているな。
そこでハッ俺は思い出した。ボベリウの町に来た時に、リリティアの【色欲】がなにか反応したらしい事を。
ひょっとしてミスリーがその力の持ち主じゃないかとミスリーと再会した時思ったが……うん、コイツはまだそのまま伸びてやがる。
って事は、残りの選択肢、は……
「ああー……さっきから俺の、俺達のシマでやりたい放題暴れてくれやがって……! しかもここのガスを横取りするつもりだった、だとおぉ……? テメェら……一体このシザリックファミリーをどれだけ舐めてくれれば気が済むん、だ?」
……全く、今日はなんて日だ。
ミスリーは敵で、その後ろからまさかのメイがやってきて、更にもう一つ大イベントがあるなんてな。
俺達から少し離れた場所で、ミスリーに投げ飛ばされリリティアの竜巻で更に奥に押しやられていた銀髪オールバックが、ゆらりと立ち上がった。




