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40話 VSメイ・ウィザーロック2

 今の一撃で仕留められれば一番だったが、流石にそうはいかなかったか。

 不可視の防御結界。それも呪文も無しでこの強度と精製速度だと?

 ……いや、メイがいくら化け物といっても武闘派じゃない。如何に防御結界が強固でも、刹那の攻防で確実に貼る反射神経や動体視力は持ち合わせていないはず。となると転移真珠で現れる前か現れた直後に既に貼っていたと考えるのが普通か。

 加えてコイツのこの余裕。常に貼り続けている事が出来るか自動(オート)防御(ガード)出来るタイプのものか、相当な汎用性があると見える。


 ……ミスリーがリリティアの方へ向かった。アイツもかなりの腕利きだ。すぐにでもそっちに行かなければならない。

 ならば短期決戦! パワーで押し切りすぐに加勢に向かう!!


「オオオオオオオオオォッ!!」


 斬撃が効かないのであれば拳ならどうだ! 俺の腕力はかなり前から巨大ゴーレムをも粉砕する! この結界さえ破っちまえばあとは目前のその細い身体へし折ってやるだけだ!


「驚いたなアッシュ、キミ本当に強くなったんだな……」


 結界の中でメイが呟いた。

 俺の一撃一撃が結界にダメージを与えている事がしっかりと拳にも伝わる。防戦に徹する事は出来ないはず。

 反撃してくるというのであればこの結界が邪魔になる、一瞬でも解除をするはずだ。本来ならばそのタイミングを見極めて回避をするべきだが、チンタラしてたらリリティアがミスリーに殺される。ならばそのタイミングで、逆に一気に刈り取る!


「でもアッシュ、それでもボクの強さ忘れたわけじゃないだろう? 無駄なんだよそんなことは」


 メイがそう呟いた瞬間、不可視の防御結界が爆ぜた。

 俺の攻撃で崩壊したのではない。メイの魔力が込められた事により、自ら砕け散ったのだ。

 この結界はただの防壁じゃなかった。そのまま相手を迎撃する爆弾でもあったのだ。


 轟音。俺はその衝撃に耐えきれず吹っ飛び、地面に転がった。


「アッシュさん!!」


 リリティアの声が聞こえる。そっちは無事か。

 ……意識はまだあるようだ。しかし至近距離であの魔力馬鹿の魔法直撃だ、すぐに動けそうにない。勝負を焦り過ぎたか? いや、どの道時間をかけるわけにはいかなかった……不味いな、リリティアを助けに行くどころか……


「あ、コレも耐えるのか。肉体防御力も跳ね上がってるね、ひょっとしてアッシュ、今のキミはオリア位の防御力あるの?」


 土煙の向こうから息一つ乱れていないメイの声が聞こえる。

 二重防壁で自分は防御してやがったか? クソったれ、やっぱり強すぎる……本来は後衛のポジションの癖に、そんな役割の違い、強引に力押しで解決させやがったか。【暴食】に目覚めて調子に乗っていた俺が、正面からここまで叩きのめされるハメになるなんてな……現実を思い知らされる……所詮俺はお前らにとっちゃ裏方雑用係に過ぎなかったというわけか……


 ────というわけで、俺も裏方である本来の狡いやり方で行かせてもらうか。


「ミッシュ!!」


 俺の合図と共にメイの頭上に飛来する小さな影。

 シザリックファミリーへの能力紹介の為に精製した俺の分身ミッシュ。こんな事になるならナイフの一つでも握らせておけば良かったな。


「きゃああああぁッ! な、なんだコイツ!!」


 ミッシュがメイのうなじあたりに噛みついたようだ。やれミッシュ! お前が切り札だ、そのまま噛み千切れ!!


「舐めやがってーーーッ!!」


 メイの掛け声と共にその全身から爆熱が噴き出た。

 あー、アレは無理だ。ミッシュは黒焦げ、いや消し飛んだな。……分身であるミッシュが殺られても本体の俺にはダメージは無いようだ。今考える事じゃねーけど。


「アッシュ……アッシュ! ……やってくれるじゃん?」


 おーおー、ついさっきまでと違い明らかな怒気を向けてくれるじゃん?。

 ミッシュがやってくれたダメージに加え、自身も少し黒焦げてやがる。あの咄嗟の爆熱発散は自爆技のようなものだったようだな。

 ミッシュ程度ならあんなスゲー爆熱じゃなくても倒せただろうに、頭に血が登って出量間違えてくれたか? 更に見下してた俺に一杯食わされた怒りもあるだろうな。

 さて、俺もいつまでもおねんねしているわけには行かない。ここで立ち上がる事が出来れば、冷静さを失っているコイツに対してまだ何か出来る可能性は0じゃないかもしれん。

 堪えてくれよリリティア……なんとかコイツを倒して、すぐにそっちに────


「【トルネード】おぉぉぉぉぉッ!!!!」


 離れた所からリリティアの魔法の叫びが聞こえた。と、同時に極めて強烈な竜巻が発生。

 洞窟内で突如荒れ狂う猛嵐。俺の視界が滅茶苦茶になり、背中に激痛が走る。


「がはッ!!」


 どうやら俺の身体は紙屑のように飛ばされ壁に叩きつけられたようだ。

 尚も荒れ狂う猛風の中、何とか上半身は起こす。ふと隣に目を向けると、長い赤髪が目に入った。

 ……ミスリー。コイツもこの竜巻に吹き飛ばされたか。俺と違い至近距離で喰らい、打ち所も悪いみたいだな、赤い髪から赤い血をたらして気絶してやがる。


 しかし、なんだコレは? いやリリティアの魔法だ。洞窟内でこれをやるか? いや、言いたいことはそれでもない。 


「……なんだよ、エルフのそのコ、こんな大魔導士だったのかい? スミに置けないねえアッシュ」


 メイの声が聞こえる。

 そう、この威力が異常がなんだ。明らかに今までリリティアの魔法の威力じゃない。一瞬メイが二人いるのかと思ったぞ。


 突如嵐が納まった。リリティアが解除したのか? それともメイがかき消したのか?

 何にしても中から見えるのは二つの人影。一つは先ほどまで俺が相対していたメイ。アイツ、さっきの場所から全く動いていねえ。この猛嵐に対しても完璧な防御結界を貼っていたか。

 そして、もう一つの人影は……当然だが、リリティア。

 その見た目もさっきまでとさほど変わらん、が、


「……もう絶対に許しません! アッシュさん、待ってて下さい! 今助けます!」


 今まで見たことない鋭い眼つきでメイを睨みつけ、何やらオーラのようなモノを迸らせている気がする。

 ……なんかわからんが、何とか助けようとするつもりが、俺が助けられる側に回っちまったようだ。

 しかしリリティア、俺のダメージの半分はお前の起こした竜巻のせいだ。

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