表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/42

4話 【暴食】の能力

 リリティアと行動を共にする事にした俺は、しばらくは森の中で生活していた。

 今相手しているのは大蛇の魔物、『サンダースネーク』。

 この魔物は蛇らしく強力な神経毒も持っているが、それ以上に厄介なのが名前の通り牙を鳴らして電撃を発生させるところ。

 予備動作があるのでヤツの口内が光った時は直線状に立ってはならない。


「リリティア! そっちに行ったぞ!」


「任せて下さい! 【ハイウインド】ッ!」


 俺が剣撃で相手の動きを制限し、リリティアが魔法でトドメ。もしくはその援護を元に俺がトドメ。

 その連携は上手くいっており、今もリリティアが生み出した風の刃がサンダースネークに炸裂。

 大蛇の身体は真っ二つに割れ動かなくなった。


「やったー! 仕留めましたよアッシュさーん!」


 ピョンピョンと飛び跳ねるリリティアを尻目に、俺はサンダースネークの死体に歩み寄る。

 ……やはり俺の中から声が聞こえる。『コイツを喰らえ』と。


「……その蛇も食べるんですかあ?」 


「ああ、とても旨そうだ。リリティア、俺が捌いたらまた焼いてくれ」


 俺はそういってナイフを取り出した。

 蛇は種類によっては体内に毒袋がある。このサンダースネークもそうだ。一噛みで大の大人が立てなくなるほどマヒさせる強力な毒。この部分はいくら何でも食えない。

 だが、逆に言えば蛇という生き物はこの毒袋さえ取り除けば全て食える。……魔物はどうか知らんが多分食えるだろう。


 俺は手慣れた手つきで毒袋を取り外し、サンダースネークの胴を縦に割いてそれぞれ木の枝に刺す。

 滴る血が地面に落ちていく様子をみながら、周囲から枯れ葉や枯れ木を少し集めた。


「じゃあリリティア、頼む」


「はいな! では頼まれまして……【ファイアー】!」


 リリティアの手の平から火球が出現。それが集めた枯れ木に当たり、メラメラと燃え出した。

 すぐに香ばしい香りが辺りに立ち込め、反射的に俺の空腹が加速される。


 適当に時間を置いたソレを、俺は手に取り口に運ぶ。

 美味い……! 鶏肉のような味に噛み応え十分の弾力性。物の熱さが俺の身体を十分に温める。電気を扱うからか? 毒とは違う痺れるような快感が体の中を駆け巡るようだ。俺は長年冒険してきてこの旨さを知らなかったのか!


「いい食べっぷりですねー、アッシュさん、なんか魔物食べる程動きも良くなっていっていません?」


「美味いモノを食うとそれだけ元気になるな。我ながら現金な身体だ。それを差し引いてもこの蛇は美味い。今ならコイツの電撃も出せそう」


 俺はそう言って明後日の方向に手をかざす動作をし、「フンッ」とわざとらしい掛け声を発しながら力を込めてみた。


 ────すると手が光ったかと思うと線が真っすぐ走り、近くの木に命中。その表面が黒く焦げる。

 出た。本当に電撃が。


「は?」


 間の抜けた声を漏らす俺。その横でリリティアも声を上げる。


「ええっとアッシュさん……魔法も使えたんですか……?」


「いや、生まれてこの方ずっと身体能力だけで冒険者をやってきた……んだが……」


 俺達はしばらく固まった。



 まさかの出来事にしばらく呆然とし、二人で色々検証をしてみた。

 俺の身体は、いつの間にかサンダースネークに劣らない電撃、そして神経毒を出せるようになっていたみたいだ。

 更に気になった事を検証してみた。先ほどリリティアが言った『なんか魔物食べる程動きも良くなっていっていません?』の部分だ。


 俺は元々身体能力には多少の自信はある。

 が、そちらもこの短期間では考えられない程明らかに強くなっていた。

 例えば腕力。

 俺はいままでは細身の木を倒すのも斧や鈍器などの道具を使っていた。そうでないととてもではないが倒す事など出来ないからだ。

 が、


「フンッ!」


 今俺は、一本の木に正拳突きを放った。

 すると幹に拳型の穴が開き、そこを軸にメキメキと倒れ始めたではないか。


 お次は跳躍力。

 元々身軽な方を自負していたが、それでも一般人より多少優れている程度だ。

 それが今は、


「とおッ!」


 一度の跳躍で高さ4メートルほどある木々の上の方まで跳べた。

 更に握力で枝を掴み、力任せに身体を引っ張り上げる。

 大した労力を使っているつもりはない。しかし、それだけの動作で木の上に立つことが出来てしまったのだ。

 こんな猿や暗殺者を彷彿させるような動きなど、当然今まで一度も出来た事はない。


「うわー! アッシュさんすごーい!」


 地面の上でリリティアがピョンピョンと跳ねている。

 そんなリリティアを見下ろしながら俺自身が一番驚いていた。


「よっ!」


 上にいても仕方がないのでリリティアの隣までひとっ跳びで降りる。


「おかえりなさいアッシュさん!」


 木の上から帰ってきただけなのだが、手を上げて満身の笑みを浮かべるリリティアに、俺は上機嫌で返事を返した。


「ああ、ただいま」


 上げている手に何となくハイタッチをすると、リリティアは更に口を開く。


「アッシュさんのその力! ひょっとしてスキルの効果じゃないですか?? 確かお腹すく効果なんですよね! それでお腹満たしたから強くなった、みたいな!」


「それなら俺はとっくにこのスキルで滅茶苦茶強くなっているはずじゃあないか?」


 そこまで言って、俺はふと気が付く。

 よく腹が減るのは物心がついた時からずっとだが、心の中から声が聞こえたのも魔物を食った事も、リリティアと出会ってからが初めてだ。

 そして、もしそうでありこの強くなる効果が無限に続くのならばそれはとんでもない事である。


「……いや、案外そうかも知れん、な」


「やっぱり! アッシュさん凄いです! 外れスキルの効果見つけちゃいました!」


 あ、ソコ? 効果が凄い事じゃなくて効果を見つけた事が凄いの?

 俺の疑問を余所に、リリティアは満身の笑みのまま更に言葉を続けた。


「アッシュさんを見て私も希望が持てました! 私の【色欲】もひょっとしたらなんか凄い効果あるかも知れません! アッシュさん一緒に探してください!」




────────────

アッシュ・テンバー

『スキル一覧』

・【暴食】

・雷撃

・神経毒

────────────

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ