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37話 答え合わせ

「話……話ねえ……」


 ジャヴィッツが耳に小指を突っ込みながら高圧的に呟く。サングラスの奥からでも睨みつけている事がよくわかる態度だ。


「まあ、いいだろう……キチンと納得いくお話を聞かせて頂けるんだろぉー、な?」


 敵意と嫌味タラタラ。俺も訳わかってねーつってんだろ。

 しかしンな事愚痴っても仕方ないか。

 町でのコイツラの戦闘力を見る限り、取っ組み合いになっても俺達の敵じゃあないだろう、と言うかそこのミスリー一人に数人がかりでボコボコにされていたからな。

 とは言え相手をナメた対応も得策ではない。相手はボベリウの町を仕切っている勢力であり、知らずとは言えその敷地に俺達が不法侵入してきたのは間違いないんだ。出来る事なら穏便に終わらせたいところだな。


「ああ感謝する……リリティア、ミスリーお前達はソコにいろ」


 俺は二人に一声かけると両手を上げながらジャヴィッツ率いるシザリックファミリーのほうへゆっくりと歩いて行った。


「へぇ、そういう所もあるんだ」


 後ろでミスリーが呟く。

 

 俺が行っているのは、相手に敵意がない事を示す動作。それでいて女二人は相手に近づけさせない事で自分のみが矢面に立つ行動。

 一見やや恰好はつかないが、相手を尊重し、仲間を守りながら自分が矢面に立つその行為にミスリーのみならずシザリックファミリーの面々もそれに対しては一目を置いたかのように口を閉ざした。


「……そこでいい、そこで止まれ。一から聞こうか、何でここに来やがった?」


 それでも警戒を解き切っていないジャヴィッツから声が上がる。

 その声に合わせ俺は足を止め、口を開いた。


「さっきも言った通り、辿り着いたのはたまたまだ。冒険者ギルドの依頼でここ最近の地殻変動の調査をしていてね、森で洞窟を見つけたらここにつながっていた」


「俺の記憶ではお前らが来た方向は行き止まりだったはずだが?」


「最初はそうだったな。だが隠し通路があったんだ」


「俺達シザリックファミリーも結構念入りに調べたつもりだ、そんなものは無かった」


「ソイツは、言っちゃなんだが探索不足だろうな、俺達が隠し通路を見つけた方法は……」


 言いながら俺は手に力を込める。

 すると再び現れるのは子供で小人な俺の分身。


「な、なんだそりゃあ……」

「スキルか? そんなモン見たことないぞ……」

「魔物かお前は……?」


 シザリックファミリーから次々の声が上がった。

 ああ魔物が元のスキルだよ。俺も最初は受け付けなかったよ。もう慣れたよ便利だよ。


「とまあコイツに探索させた所、常人では見つけにくい所にあってな」


 リリティアの聴力の事もあれば、俺のスキルはミッシュのみに限らないが、それでも『常人が見た事のない俺のスキルを明かす行為』と『常人では見つけにくい事を強調する』事に意味がある。


 コイツはシザリックファミリーは、悪ぶってはいるが根は単純……いい奴らの集まりな印象だからな、これでおれの株もまた少しは上がるだろう。


「テメェ! そんな気持ち悪ィスキル見せて俺達が無能だとでも言いてえのか!?」


 取り巻きの一人は声を荒げる。訂正。単純すぎた。


「いや、そういう事ではなく、この小人ことミッシュはだな……」


「そうです! ミッシュちゃんは気持ち悪くなんてありません! こんなにとっても可愛い良い子です!」


 リリティア、お前少し黙れ。


 小太りの取り巻きとリリティアがなにやらミッシュの印象をめぐって言い争いを始め出した。

 しかし、肝心のジャヴィッツは冷静なようだ。再び耳を指でほじくると、取り巻きに対して一言静止の声を上げると、すぐに場は静かになった。


「アッシュ、お前の言う事が確かなら、こんな洞窟に自然に隠し通路が出来る事なんざ考えにくい。一部知能が高い魔物が住む場所ならそれも考えられるが、ここに住む魔物にそんな厄介な奴はいない……仮にいたとしてもそんなところに隠し通路を創る意味も無い……この意味がわかるか?」


 部下を制止したジャヴィッツはそのまま俺を睨みつけながら問いかける。

 なるほど、言われてみればそうだな。そしてそうなると……


「……隠し通路は人為的な者である可能性が高い。そしてそれならば通路作成者の容疑に真っ先に当たるのは……」


「そう、そこからやってきたお前だよアッシュ」


 俺とジャヴィッツの会話しながらの答え合わせ。濡れ衣も良い所だがそれを晴らすすべもないな。


「そんな! 私とアッシュさんはボベリウの町についてそんなに経っていませんし、今日この森に来たのも初めてです!」


 リリティアが声を張り上げる。

 その通りなんだが、相手にそれを信じさせることが出来るかどうかが問題なんだよ。ううむどうしたモノか。


「……ああ、そうらしいな。お前らの事、少し調べさせてもらった。エルフのねーちゃんが言ってる事以上の情報は出てこねえ」


 ほう? この短時間で俺達の事を調べていたか。

 だったらなんだよこの問答は。意味ねえじゃねえか、無駄に警戒なんかしやがって。ハナからもっと自分の推理に自信を持て。

 ……ん? ジャヴィッツの推理が正しいなら、本当にさっきの隠し通路が人為的な物なら、誰がこんな辺境の、シザリックファミリーの敷地に続く隠し通路を?


「リリティアッ!!」


 『その可能性』にギリギリで気がついた俺は、すぐさま後ろを振り向き、真っ先にリリティアの安否を確認した。

 リリティアは驚愕する暇もなく、訳が分からないと言った顔をこちらに向けている。

 脅威、は近くのリリティアを襲うような真似はしなかったようだ。ああ良かった、気づくのが少し遅かったが不幸中の幸いだ。


 ────赤髪長髪の冒険者ミスリーが振るう一振りの刃が、俺の腹を貫いた。


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