29話 発展の訳
「へえ、アンタ達が。何かスゲーことでもやってんのかい?」
得意げな顔をしながら『シザリックファミリー』の名を出すジャヴィッツに俺が聞き返す。
「ああ、何年か前に俺達はこの町に商売しに来たんだがな、そこでこの土地にスゲー資源が眠っている事に気がついたんだよ」
「資源」
「そう、魔力が宿った地下ガスだ。今はまだ活用方法は開発中だが、近い将来きっと魔法は万人が平等……とまではいかねえだろうが、幅広い人間が道具を媒体に使えるようになると思うぜ?」
「魔法がどんな人でも……」
ジャヴィッツの言葉にリリティアも感心しながら聞く。
個人の固有能力である『スキル』とは違い、『魔法』は学ぶ事で多くの人間、あるいは異種族が使用できる。
しかしそこにも才能が必要であり、リリティアのように得意な者もいれば俺のように全く使用が出来ない者もいる。
使える者も体力や魔力を消費し、鍛錬にも時間がかかり制御も危険と隣り合わせである。
オルディエが見せた『転移真珠』のように元々魔力が宿った道具という物は存在するが、それらも元々魔法が使える者が補助的につかう物であり、魔力のない俺は勿論、使用経験のないリリティアもすぐに使えといっても不可能だろう。
俺達が持つ『太陽のリング』と『月のネックレス』も同様、受信側であるオルディエの聖女のしての魔力があるからこそ効果を発揮している物だ。
つまり、『道具を媒体にほぼ誰でも魔法が使える』というのは実現できれば本当に凄まじい世紀の大発見となるだろう。
「そいつは凄いな、どうやってそんなモノ見つけたんだ?」
「ああん? そりゃあ……ウチのボスの嗅覚と言うしかねえな。ああ、ガスが出る土地の当たりは大体俺達が買い占めているから勝手に近寄るんじゃねーぞ? 怪しいヤツは白黒関係なく捕まえちまうからな」
なるほどコイツらのボスとやらが関係しているのか。
しかしそれと町の発展と関係あるか?
無くはないか。小売りではなく資源を王都だの企業だのに売買して、金貸しなんかもしているみたいだからそれらの金を元に町の施設を整える……ん? なんだコイツら、なんかチンピラみてーな組織っぽいのに実はスゲー良いヤツらなんじゃね? 話してみると気さくだし。
「そうか、教えてくれてありがとうよ。俺達は冒険者やっている。しばらくはこの町に滞在する予定なんでな、もしも資源ガスが出る場所に外部の人手が必要になったら言ってくれ」
「おう、アンタ腕っぷしには自信がありそうだしな、そんときゃよろしく頼むわ」
俺達が椅子から立ち上がると、酒を奢った事で上機嫌になったジャヴィッツはもう顔を赤くしながら笑顔で手を振ってきた。
やれやれ酒一杯で籠絡するとは、悪そうな面している癖にコイツも中々チョロいヤツだ。まあリリティア程でもないがな。
さて、ギルドに来たからには依頼の方にも目を通しておくか。
と、そう思った時に隣のリリティアから声がかかる。
「ねえアッシュさん、さっきの魔法が誰でも使えるようになるガスのお話、凄いですよね」
「うん? ああ、実現できれば、な。そんなに気になるか?」
「ええ、魔法は私達エルフの得意分野ですけど、それでも得手不得手はあります。誰もが皆魔法が使える世界、見てみたいです」
リリティアが目を輝かせながら言ってくる。
そういえばコイツが何かにここまで関心を示す事は初めてな気もするな。
……元々リリティアがこの町に来たがっていたから来たんだ、もうちょい突っ込んだ話をしてみても良かったかもしれない。
そう思いながら、俺は壁に貼り付けてある依頼の紙を何気なく眺めた。
『周辺の森での地殻変動調査。及び地殻変動以降、頻繁に出没する魔物の討伐』
……資源は地下ガスって言ってたな。ちょいと遠回りになるかも知れんが、この辺りから調べてみたら、何か新しい発見もあるかも知れん。
俺は先程の『迷子の猫探し依頼』の紙は丸めてゴミ箱に投げ入れ、こちらの紙をギルドカウンターまで持っていった。




