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22話 竜肉調理

 ワイバーンを仕留め皆で歓喜したあと、そのデカい死体をみてイオスが立ち上がった。


「ふう、よっこらせっと」


 少しおぼついた足取りのイオスに、ミトロとドーマがすぐに駆け寄り肩を貸す。


「無理するなよイオス」


「アンタのスキルは消耗がハンパないんだから」


 やはりチームワークは抜群のようだな。

 勇者パーティとは大違いだ。もっともアイツらは俺以外のチームワークが悪いわけではない。ただ連携をとる必要が無かっただけだが。


「ありがとうよイオス、助かった」


「ははは、よく言うよアッシュ、完全にこっちのセリフじゃないか。ありがとう、俺達を助けてくれて」


 俺の礼に対してイオスが苦笑する。

 そんな様子を見てミトロとドーマは怪訝そうした。先ほどのワイバーンのブレス、あれが直撃すればパーティは全滅していたかも知れないというのに、謙遜とも違うイオスのその反応。

 なるほど、イオスだけは気がついていたか。


「ミトロ、ドーマ。アッシュに礼を言っときな。アッシュとリリティアちゃんだけならあのブレスは回避できた。そして俺がスキルで無様に消耗していなければあの突進も回避できた。全部俺達の為だ」


 その言葉に息をのむ二人。

 少し考え込み、それぞれが口を開く。


「全っっっ然気がつかなかった……! アッシュ、リリティアちゃん、ありがとうね」

「……オレもだ、礼を言う」


 まあ最初に雷撃放って不必要に相手を警戒させたのは俺なんですけどね。

 とは言ってもアレの有り無しで戦況が変わったかというと多分そんな事ないし、俺が無駄に謙遜してもコイツらは謙虚な俺を褒めたたえるだろう。

 というわけでここは、


「いやあそれほどでもー!」


 大げさに頭をかいてわざとらしい声を出してみた。

 数秒、間を置いて皆笑い出した。ウケ狙いには成功したみたいだ。


 ひとしきり笑ったあと、ミトロが何かを思い出したように口を開く。


「あー、後はコイツの身体の一部を持って帰ってギルドに報告するだけだけど、アンタらコイツの肉食いたいんだよな? この巨体どうやって持って帰る? やっぱり頑張って解体して五人で……ってリリティアちゃん、なにやってんの?」


 話している途中でリリティアの行動が気になったようだ。

 当の本人は何をしていたかというと、枯れ木を集めてワイバーンのそばに置いている。

 そしてキョトンとした表情をしながら口を開いた。


「え? ここで食べるんでしょう? アッシュさん」


 イオス達が目を丸くしている中、俺はパートナーが相方の思考を完璧に読み取りいち早く行動に移っていた事に感心した。



 さてこの翼竜、まずは一部を焼いて食ってみた結果、味は鳥肉に近いことがわかった。

 鳥肉独特のややサッパリとした味がメインとなるのだが、それでいて濃厚な力強さも兼ね備えている。

 そこで俺が取り出したのはまずは鍋。

 手持ちの短剣でワイバーン肉を食べやすい大きさにカットし、鍋に放りこむ。

 そこに様々な調味料を加え肉を浸す。

 数十分経ったら浸した調味料の汁は少し勿体ないが捨てる。

 そこからとりだすのは小麦粉だ。

 コイツを満遍なく肉に絡ませる事で肉の方の準備は完了。

 肉を一端外に移し、今度は鍋に以前デモンタウラスを解体した際の牛脂を放り込む。

 コイツの脂はヤバい。ちょいと火をつけるとみるみる内に溶けだし実に濃厚で食欲をそそる食用油と化す。

 更にデモンタウラスから頂いたモノはもう一つある。


「フッ!」


 俺は鍋の下の枯れ木に息を吹きかけた。

 それにより発生するのは炎。

 そう、俺はもはやリリティアの力を借りずとも食材に火を付ける事が出来る。別にリリティアも嫌な顔一つせずにやってくれるけども、自分で出来るとまた便利。

 油が十分熱されるとそこに先ほどのワイバーン肉を投入。

 ジュワワワワワワーーーッ! っと大きな音を立てて油が踊り出した。

 そう、唐揚げである。


「おおーーー……! 美味そうだなアッシュ」


「ふぅむ、香ばしい匂いがこちらにも来る」


 イオスとドーマが調理の様子をずっと見ている。

 女性二人は少し離れた所で別の鍋を見て貰っている。


 数分置いたら完成。

 当然5人分に分けていくのだが、イオス達と同盟を組んだ時から今までの間、特に『分けてやる』とは一言も言っていない。

 しかしもはや当たり前のように皿を持って並んでいる男二人をみると逆に好感が持ててきた。


「さーって完成だ! リリティア! ミトロ! 食事にしよう!」


 その言葉にリリティアとミトロも寄ってきた。

 さてワイバーンの唐揚げ、実食である。

 一口噛むと、サクッとした心地良い触感が口の中で鳴り響いた。

 そこから溢れるは熱々の肉汁。

 ……美味い! 唐揚げにして大正解!

 そもそも生き物の肉なんてもんは揚げれば大体何でも美味いのだがコイツは別格。

 唐揚げ独特の『外はサクサク中はジューシー』が口いっぱいに広がり、全身を鼓舞する。食えば食うほどもう一つ更に一つと欲しくなる。


「う、美味い! 今まで食ったどんな肉より美味いぞ! おかわり!」

「アッシュ! アンタ料理人としても一流だったのかい?! おかわり!」

「うぬう……まさかこのような味がこの世に存在していたとは……! おかわり!」

「流石はアッシュさんです! おかわり!」


 周囲にも極めて好評である。しかしてめーら自分で揚げろ。

 クックックッ……そしてこれで終わると思うなよ?

 俺は前回の失敗を活かしてある物を準備していた。


「リリティア、あっちの鍋を頼む」


「はいな」


 俺の言葉にリリティアとミトロが別の鍋を持ってきた。

 その蓋を開けると、湯気と共に中から姿を現すは真っ白の穀物。

 ────そう、米である。

 デモンタウラスを食っていた際、リリティアの一言から非常に米が食いたくなった。

 事実、持って帰ってから米と共に食った焼肉は絶大な美味さを発揮した。

 肉と米。この完璧な相性が約束されている組み合わせ。ならばそれが唐揚げに合わない訳があるまい。

 更に全く同じ唐揚げだと少し味気ないだろう。出来上がった唐揚げに塩などの調味料を少量加えることにより更に違った味も楽しめる。


 食が進めば皆気分も高まってくる。

 イオスやミトロが自分の武勇伝を語り出した。今まではリリティアと二人で食っていたから食事中も当然二人だけの雑談だったが、こういう大人数の食卓も良いものだ。

 鍋を囲んでの宴会はワイバーンの肉が無くなるまで続いた。

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