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1話 勇者パーティの裏切り

 産まれた時に、一人一つ固有のスキルが神から授けられる世界。

 その世界でこの俺、アッシュ・テンバーは人間に相対する邪悪な存在『魔王』を倒すべく勇者パーティの一員として日夜活動していた。


 最初の内は良かった。俺自身身体能力は低くはなく、一般家事なんかはそこそこ多芸な方である。

 パーティの中心となって他の四人を引っ張って活躍していた。

 が、旅を続けている内に他のメンバー達が次々と才能を開花させていくと状況が変わった。


 勇者が持つ能力は皆の期待が集まれば集まる程身体能力が上がるスキルらしい。

 既に多くの人々から支持を受けているこの勇者の強さは常人の域を軽く超えている。

 たった一人で難攻不落と呼ばれた魔物の拠点を軽々と制圧してしまう。ハッキリ言ってコイツ一人で全てが事足りてしまう最強(チート)勇者だ。

 

 勇者だけではない。俺を含めてパーティには5人いるが、他の三人もそれぞれ強力なスキルに目覚め日々活躍している。

 戦士は力だけなら勇者に迫る怪力の持ち主で、大橋を境とした防衛戦で橋そのものを持ち上げ相手の陣営に投げ飛ばし崩壊させたのは今でも語り草だ。

 魔法使いはひとたび魔法を使えば数十体規模の魔物が爆発四散する。その上パーティメンバーへの強化(バフ)魔法や移動魔法なんかも使いこなす万能だ。

 パーティが強すぎて普段あまり出番はないが、粉々に無くなった四肢をも再生復活させる僧侶の回復魔法があってこそメンバー達は躊躇なく力を奮える部分もあるだろう。


 こんなとんでもないメンバーが集まったパーティは、いつの間にか冒険者ギルドで『Sランク』という称号を得ていた。

 なんでも世界中探しても、俺達を含めてもう一人の登録者しか取得していないとんでもない称号らしい。


 で、今の俺はというと、基本的に荷物持ちや料理などの雑用をこなしていた。

 先ほど言ったように、俺の身体能力も決して低いわけではない。並みの冒険者パーティの中ならばまだ上位に活躍できる、と思う。

 だが他の四人が強すぎる。ハッキリ言って俺の力など必要ないだろう。


 そしてその気持ちは、メンバー達からもヒシヒシと伝わってくるようになった。

 先に断っていくと、勇者だけは別だ。

 この勇者ユナイト・ブレイブは実力だけではなく、きっと性格面でも真に選ばれし者なのだろう。

 役立たずになりつつある俺を邪険に扱う事なく、他のメンバーと同じように接してくれる。

 他のメンバーが表立って俺を批判するようならば必ず俺を庇ってくれる。

 しかし、他の三人からの扱いは日に日に厳しくなっていった。

 言い忘れたが、俺とユナイト以外のメンバーは全員女性だ。皆美女と言って過言ではないだろう。

 そして彼女等は全員ユナイトに惚れている。それならばむしろ女同士での衝突の一つでも起きそうなものだが、そこは皆パーティに貢献している者同士、なにか暗黙の了解でもあるのだろうか、少なくとも俺の目ではギスギスした関係は見受けられない。


 いや、むしろその抑えている何かが俺に向けられているのだろうか。

 女戦士オリアからは雑用の作業一つに難癖を付けられ、料理はマズイと皆の前で捨てられた。

 女魔法使いメイには広範囲攻撃魔法を俺をギリギリ巻き込む範囲に入れられた事がある。一度ならば偶然かもしれないが、大した謝罪もなく、もう何度も、だ。しかもユナイトが見ていないタイミングで。

 そして負傷した俺を女僧侶プリエスはシカトと決め込んでいる。そしてユナイトが指摘した時にようやく初めて気が付いたように魔法を掛けてくるのだ。


 そんなある日、俺たちは自然の岩壁や深い川が天然の要塞となっている、魔物が拠点とする古城を攻め落とそうとしていた。

 状況は酷い豪雨。いつも通り圧倒的戦闘力を誇るユナイトが単独で古城の核となる部分を単身で突撃し、残りの俺達は混乱した相手部隊を他方向から確実に攻め入っていく。


 そして堀の近くで乱戦を行っているとき、オリアが魔物を文字通り千切っては投げ千切っては投げと奮闘していた。そんなオリアが、やや後ろの俺の方をチラリと見た。そして、相対しているゴーレムの魔物を、突如俺の方へ投げ飛ばしてきたのだ!


「うわあっ!?」


 俺はその一撃をギリギリで回避したが、バランスを崩して堀に落ちそうになる。

 何とか姿勢を立て直そうとする、が、その時、足元の石床が爆発した。

 足場を失い落下する俺。

 落ちる瞬間に、俺は確かに見た。メイが魔法の杖を俺の足元にかざしているのを。

 そして落ちていく俺は、上から見下ろすプリエスと目が合った。

 彼女の能力であれば落ちていく俺を防止する魔法はいくらでも掛けれたはず。

 しかし、プリエスは無感情な目でただ俺を見下ろすだけだった。


 堀の下は流れの強い川。俺は、そのまま遥か下流に流される事となった。

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