憧れの魔法を開発します!
「またか……」
シェリエールとの顔合わせから1年が経った。
クリスティーナ・エデュ・ヴァレンティン
12歳。最近の悩みは隣国の王子から頻繁に手紙が来ること。
あれから何故か私はシェリエールに気に入られたようで、お礼の手紙から始まり何故か文通仲間になっている。
『愛しいティーナ
久しぶりだね。体調は崩したりしてない?
君のいない毎日は味気なくて仕方がないよ。
僕の国で生産している石を送るよ。
これを見て僕を思い出して。
アルベインには何か甘いものを送るね。
愛を込めて
シェリエール』
このように、読んでいるこちらが胸焼けするような手紙を送ってくるのだ。
お兄様とも何故か仲良くなっている。
ゲーム中ではそんなことなかったのに。
流石チャラ王子。
こんな甘言を本気にしていたらキリがないので適当に受け流しているが
「石……?」
これは受け流せなかった。
同封されていた石を手に取ってみる。
表面はツルツルとしていて、色は透明。
これは石というよりもはや宝石……!
思いがけず高価な物を受け取ってしまい、戸惑いが大きい。
知らないうちに力がこもっていたみたいだ。
石を見ていると、何だか少し色が変わっているような……?
ふと思いつく。
「姫様、どこへ?」
私の護衛騎士となったガナルが聞く。
「リヒトの所よ!」
私が急いで向かったのはリヒトの元。
息を切らせて駆け込んだ私をリヒトは呆れながらも迎えてくれた。
リヒトは15歳になり、もうすぐ成人を迎える。(この国の成人は16歳)
黒髪を恐れる人もいるが、それよりも神秘的なほどに整った顔立ちが目立ってきて、中々に女性から人気である。
リヒトも隅におけない。
本来なら王女(というかこの国の女性)は成人した男性と二人きりでいるのはあまり好ましくないことだが私は気にしない。
だってリヒトってお兄ちゃんみたいな感じだし。(お兄様ではなく、お兄ちゃん)
でも一度そう言ったら思いっきりリヒトの顔が引きつっていたけどね。
失礼な奴!
ガナルだって部屋のすぐ外で待機してるし、大丈夫!
「リヒト、リヒト!」
聞き馴染みのある声がしてオレはピタリと作業を中断する。
声の主はオレにとっての恩人、クリスティーナ姫。
「あのね、良いことを思いついたの!」
……そして難題を持ちかけてくるのもこの姫様だ。
「石に魔力を貯蔵しておく?」
またとんでもないことを言い出したぞ、このお騒がせ姫は。
「そう!
この石、どうやら魔力伝導性が強いみたいなの。自分の魔力をここに溜めておいて、魔力切れを残した時とか、魔力を補う時に使うの」
そんなことは今までにない発想だ。
もしそれが可能になれば魔術の行使に革命が起こる。
「….…属性の問題はどうする?
一つの属性しかない場合はいいだろうが、火と水とか相反する属性を溜めておくと弱まったりするんじゃないか?
それに魔力を取り出すとき、使いたい属性が必ず使えるという保証は?」
すると思いもよらない返事が返って来た。
「魔法を属性で捉えようとするとダメなのよ。魔法をエネルギーと考えてみればいいの」
目から鱗だった。
そんなことを考えるのはこの世界できっと他にいない。
魔法をエネルギーとして考える?
この姫は本当に色々規格外だ。
「それでね、魔力が貯蔵出来るならね、もっと大掛かりなことが出来ると思うの!
例えば転移魔法とか、空間魔法、他にも…」
「待て待て待て、落ち着け」
暴走する前に遮って止める。
王族の話を中断するなんてとんでもない不敬だがこの姫様は頰を膨らませるだけだ。
本当に王女らしくない王女。
しかしそんな王女に心地よさを感じているオレ自身も昔のオレからしたららしくないと思うだろう。
「まずは魔力を貯蔵するところからだ」
すると姫様はにへら〜っと締まりのない顔で笑う。
何だかくすぐったくなってぶっきらぼうな態度をとる。
「……何だよ」
「んーん?
稀代の魔術師さんはどんどん凄くなるね〜」
まさか、これが成功したらオレの手柄にするつもりか。
「….…オレは人の手柄を横取りするつもりはない。オレがあんたを利用してるみたいじゃないか」
そういうと、ポンポンと頭を撫でられた。
「私はただの思いつき。
一番大変なとこ押し付けてるだけよ。
それに、利用できるものはとことん利用しなさいな」
子ども扱いするな、とか
あんたを利用したいわけがない、とか
言いたいことは色々あった。
「あなたが不器用で真っ直ぐなのは私が一番知ってるわ」
そんなこと言われたら黙るしかない。
きっと顔を伏せたオレの耳は真っ赤だろう。
オレはいつか、自分の力で姫様に認めてもらうんだ。
改めて、そう決意した。
『シェリエール様
お久しぶりでございます。
私はすこぶる健康に充実した日々を過ごしております。
先日はとても素晴らしい物を頂き、本当にありがとうございました。
あの石のおかげで魔法の幅が大きく広がりそうです。
まだ研究段階ではございますが、一つサンプルをお送り致します。
感謝を込めて
クリスティーナ』