チャラ王子に懐かれました!
「「アミュール王国?」」
重なる私と兄様の声。
父であるヴァレンティン現国王から告げられたのは隣国のアミュール王国から第一王子がここヴァレンティン王国へと遊びにいらっしゃるという話。
隣国のアミュール王国は大国で、様々な産業が盛んだ。
「二人とも、仲良くするのよ?」
お母様がそう言って微笑む。
相変わらずお若い!
とても二人の子持ちだとは思えない!
普段は優しいけど怒ると怖いよ!
私が6歳の時抜け出したら般若を見たよ!
お父様からは涙やら鼻水やらでぐちゃぐちゃの顔面を押し付けられたよ!
私がホームシック(前世シック?)にならないで済んだのは今世の両親のおかげ。
あ、ついでにお兄様も。
そのお兄様は面倒臭そうな顔をしている。
私も面倒臭いけどね……。
さて、今話に上っているのはアミュール王国の第一王子、
シェリエール・フランク・アミュール。
どっかの時計店みたいな名前。
この人もゲーム攻略対象だ。
実はこの人、クリスティーナの未来の婚約者だったりする。
現在私は11歳。花も恥じらう乙女。
シェリエールはお兄様と同い年で13歳。
まだ私たちに婚約者はいないが、今回の顔合わせは絶対そこら辺の話も意識したものだろう。大人の思惑怖い。
ここでシェリエールについて整理しておこう。シェリエールはどんなキャラか。
端的に言おう、チャラい。(確信)
見た目はクリーム色のふわふわした猫っ毛に黄色の瞳でとても煌びやかだ。
今は亡き前王妃の子。
前王妃が亡くなってからアミュール王は仕方なくまた新たに王妃を迎えた。
しかし王は前王妃を深く愛していたため、現王妃は全く相手にされずにお飾りの王妃だった。現王妃は心を病み、王の面影があるシェリエールを襲おうとした。
おいおい子どもになにやってんだ…。
てゆーかゲーム製作者ちょっとは自重しよう!?
深夜テンションで考えちゃったのかな!?
現王妃はすぐに捕らえられ、今は病気療養中という名の監禁状態である。
(ちなみにこれはゲーム知識。勿論公表はされておらず、知ってる人も限られている)
それからシェリエールは女性不信になり、心の中で女性を見下すことになる。
……重い。重いぞチャラ王子。
状況を鑑みると多少の同情も湧く、、
しかし!私は忘れていない。
「甘い顔で微笑み、美辞麗句を並び立てれば女は皆同じ顔をする」
こんなセリフを心の中で吐いていたことを!
いくら外には出さなくてもゲームの心情で丸聞こえだからな!
女の敵!
絶対婚約者になんてなりたくない!
「初めまして。
シェリエール・フランク・アミュールです。
この度は訪問させて頂き誠にありがとうございます」
人好きする笑顔は可愛らしいが、きっと心の中では可愛くないことを考えているのだろう。
「こちらこそ。
アルベイン・ヤン・ヴァレンティンです。
大国のアミュールからしたら我が国は魔法ぐらいしか取り柄がありませんが、どうか楽しんでいって下さい」
お兄様がマトモなことを言っている。
どうしようもない我儘小僧だったのが最近は落ち着いてきて、冷静な判断力も評価されつつある。何とかマトモに育ってくれて一安心。お兄様が挨拶をした後は私の番だ。
「クリスティーナ・エデュ・ヴァレンティンです。どうぞ宜しくお願い致します」
……簡潔すぎると思うことなかれ!!
お兄様が大体いい感じのこと言ってたから何も思い浮かばなかったんだよ!!
シェリエールは黙ってこっちを見ている。
….…なんか言えよ!!何なんだよ!!
「よろしくお願いします」
にっこりと微笑まれた。
大人たちの思惑か何なのか、お兄様に外せない用事が入り、私はシェリエールと二人きりにされた。
去り際、「何かあったら俺を呼べ」と囁いたお兄様に不覚にもときめいてしまった。
お兄様!私頑張るよ!
………。
沈黙が痛い。
なんか言えよ!(2回目)
向こうが何も言ってこないから私も黙って微笑み続ける。
耐えるんだ、クリスティーナ。
目を逸らしたら負けだ。
….…なんだこの図。
「君は、僕に見惚れないの?」
はい、ナルシスト発言頂きましたー!
……何だこれは。なんて返せばいいんだ!?
お前の容姿について実況して褒め称えればいいのか!?
クリーム色の髪は触ったら柔らかそうで蜂蜜色の瞳は見ているこちらが蕩けそうになりますとでも言っておけばいいのか!?
自分でも何言ってるか分かんなくなってきた。私が固まっているとシェリエールが続ける。
「女の子は大体皆僕を見ると目をうっとりさせて擦り寄ってくるんだ。
それで運命の人、とか言っちゃって。
僕のこと、なーんにも知らないくせにね」
………めんっっっっどくせえええ!!!
何だこいつ!拗らせすぎだろ!
「君は違うよね。
ねえ、どうして?」
推しがいるからだよ!!
「……少し、意外ですね。
シェリエール様はそのような事、わざわざ他人に仰ったりはしないかと思っておりました」
そう話をズラすと、シェリエールはゆっくりと瞬きを3回繰り返す。
「……本当だ。
……でも、そうか、うん」
何か一人で納得しちゃったよ!
シェリエールは何故か満足気に頷いている。
「これからよろしくね、ティーナ」
あっれえ!?
呼び方が何故か親密になってるよ!?
色々言いたいことはあったが、先程までの取り繕った笑顔とはまるで別物の、少しはにかんだような、年相応の不器用な笑顔が不意打ちに可愛くて、私は何も言えなかった。