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俺様王子を調教します!

生まれた当初は絶望したものだが、私は健やかに成長して3歳になった。

まだ美少女とは言えない年頃だが、見事なキューティクルを放つ金髪は順調に伸ばしている。大きな緑の瞳はくりっとしていて長い睫毛に縁取られている。陶器のように滑らかな肌は雪の様に白い。口唇はさくらんぼのように赤く、小さい。

既に3歳児とは思えない行動は端々に現れているとは思うが、この世界には魔法がある。

生まれながらに魔力が強い者は成長が早いらしいからそのせいだと思われているようだからセーフだ。

魔力持ちは全体の人口からすると少なく、王族をはじめとする貴族に特に多い。

まだ幼いため魔術の訓練はさせてもらえないが実はこっそり練習している。

前世の記憶からイメージも比較的しやすいため、秘密の特訓は中々順調である。

この調子でバッドエンドを逃れるのだ。

そう決意を固めていると、

「おい、ティーナ!

この俺が来てやったぞ!喜べ!」

……また来た。

思わず引きつりそうになる顔面を何とか押し留める。

「まあ、お兄様!来て下さったのですか?」

目の前でドヤ顔しているのは今世での私の兄、アルベイン・ヤン・ヴァレンティン。

御年5歳。輝く金髪に緑の瞳は私と同じで、やはり兄妹なのだと実感する。

見た目は天使のように愛らしく、うっとりするような美少年だ。

しかし我儘である。

もう一度言う、我儘である。

皆さんはアルベインという名前に聞き覚えはないだろうか。そう、私が死ぬ間際に一晩かけて攻略したあの俺様何様クソ王子だ。

「お前を、俺の女にしてやるよ」

顎クイしながらドヤ顔で宣ったあの顔には今でも殺意を覚える。

下からそのお上品なご尊顔の鼻に指フックでもきめてやろうか!?

……。

一部心の音声が乱れましたことをお詫び致します。

その我儘俺様王子の片鱗が齢5にして見え始めている。

ここ最近の私の目標は、我儘俺様王子をまともな王子にすることだ。

味方を作るにはまず身内から!

「流石ですわ、お兄様!

私の元に来て下さるなんて、もう今日のお勉強は終わってしまわれたのね!」

子供らしい無邪気さを装って目をキラキラさせて見ると、我儘王子はたじろぐ。

座学を抜け出して来たことなんて私にはお見通しなのよ……!

「う……えーと、いや、その……」

分かりやすく狼狽えた王子に畳み掛ける。

「お兄様?」

首をコテンと傾げる。

「よ……用事を思い出したっ!」

脱兎のごとく去って行った。


あれから兄はどうやらサボらずに勉強はしているようだ。

よし、第二段階。

「えー、それでは今日からはクリスティーナ様もご一緒に勉強されるということで……」

はい。そういうことになりました。

授業に出てはいても態度も変わらないのでは意味がないからね。

中身のないアホ王子になってもらっては私も困るので。(切実)

逃がしませんよ?お兄様。

とは言っても私とお兄様の年の差は2歳。

私まだ3歳ですからね。

まずは読み書きの練習から。

転生チートが働いているのか日本語ではないんですけど自然と読める。

私が今読んでいるのは3歳児が読むには難しい歴史書。

お兄様の本はこれよりも難しいものだが内容は同じ。この国の歴史について。

……寝ている。

始まって数分。

いやね、確かに子どもにとっては少し退屈かもしれないけども!

教師たちだって子守唄歌うために来てるんじゃないからね!?


私とお兄様の共同学習が始まって一週間。

「おい」

振り返ると顔をしかめたお兄様。

「お兄様!どうなさったのですか?」

そう聞くと

「……お前は、何であんなに真面目に

おっさんの話を聞くんだ?」

おっさんてあんた……。

「お兄様は勉強がお嫌いですか?」

お兄様は苦虫を噛み潰したような顔で唸る。

「嫌いだ。

何であんなつまんねえ話聞かなきゃいけないんだよ」

あーあーこの顔…。

典型的な勉強嫌いの悪ガキの顔だ。

私も前世では別に天才ってわけではなかったけれども今世では頑張る。

こっちは命がかかってるんだ。

人間死にものぐるいでやれば出来る。

しかしこのままアホ王子になってもらっては困る。

ここで私が矯正しておかねば。

「お兄様は偉いんですよね?」

お兄様はそれはそれは見事なドヤ顔で言う。

「そうだ!俺は王子だからな!」

見事なふんぞり。

まあ、そうなるよねー。

まだ5歳だし、周りの大人もちやほやしてしまうし。

「どうして王子だったら偉いんですか?」

お兄様は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。この世界に鳩はいないけど。

「え…それは、その……あれだよ、あれ」

目が泳いでますよ、お兄様。

「っ、お前はどうなんだよ!?」

逆ギレですか、お兄様。

私は5歳児でも分かるように頑張って言葉を選ぶ。

「私は……たくさん仕事をする人が偉い人だと思います。」

「たくさん仕事をする……人?」

頑張れ私、ここをこいつの人生の転機にするんだ。ここが私の正念場だぞ。

「私は一人では生きていけません。

今来ているこの服も、誰かが糸を紡ぎ、布を作り出し、一生懸命縫い上げてくれたものです。お兄様がお嫌いなピーマだって、農家の人がまだ暗いうちから汗水垂らしてつくってくれたものです。」

お兄様の目が更に泳ぐ。

ピーマとは、前の世界でいうピーマンのようなものでこの世界でも子どもに大変不人気である。

「私たちの役目は、そういった私たちを支えてくれてる人たちが頑張れるようにすることだと思うのです」

確かに王族は特権階級だ。

しかし権利にはそれ相応の義務がある。

「そのためには私たちは一番頑張らなきゃいけないのです。

だから私は沢山学びたいのです」

熱弁した後、お兄様の目をじっと見つめる。

「……そうか」

お兄様は私の頭を思いっきりグシャグシャにしていった。

……レディの頭を崩すんじゃない!


それでも何とか私の熱意は伝わったようで、あれからお兄様は真面目に勉強しているようだ。何故か私の頭をグシャグシャにすることを日課にしているようだけど。

抗議をするとお兄様はクソムカつく顔で

「あんまり考えすぎるとハゲるからな!」

………やっぱりムカつく奴だ!!!


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