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避けられてます!

……最近、グレースの態度が少しおかしい。

ここがおかしいとはっきり指摘は出来ないのだが、なんとなく、ほんの少しだけなんだか違和感がある。

今までは常に私にべったりだったのが、なんだか少しよそよそしくなったというから壁を感じるのだ。

私何かしたかな……?

押しから地味に避けられて私のメンタルはもう複雑骨折だ。

グレースから嫌われてはないと思ってたのに、やっぱり私何かしたかな。

「ねえ、どう思う?リヒト」

「何故オレに聞く」

ここは魔術塔、リヒトの一室。

リヒトは筆頭王宮魔術師の一番弟子としてめきめきと実力を伸ばし、頭角を現している。

今も私が提案した転移魔法の魔法陣を考えていてくれていた途中だったらしい。

今までは魔法の話をしに行くときもグレースは傍に付いててくれたのに今は部屋の外で待機している。(リヒトとしては、グレースと折り合いが悪いのでこっちの方が気が楽そうだけど)

勿論グレースに話を聞かれないように今もバッチリ防音の魔法を施している。

グレースの様子が変化したのは私がアミュール王国へと訪問した時からだ。

「私、何かしちゃったのかなー…」

うー……。

やっぱり私は嫌われる定めなのかな。

ここまで頑張って来たけど所詮悪役なのかな。

「私、もう嫌われちゃったのかなあ…」

机に突っ伏していると、

「あんたのこと、嫌う奴なんてそうそういないだろ」

思わぬ言葉に顔をあげる。

リヒトは照れたのか、少し赤くなった顔を横に向けて目をそらす。

「オレはあんたほど馬鹿正直で、真っ直ぐで、お人好しな人を他に見たことがない」

うーん?……うん。

これはリヒトなりの励ましなんだろう多分。

「……もし世界中があんたの敵になったとしても。オレはあんたを嫌いになったりはしない」

今度は真っ直ぐ目を逸らさずに言い切った。

「……から、安心しろ!」

照れ隠しからか、私の頭をグシャグシャにしてまた顔を背けてしまう。

「……ありがとう、リヒト」

いつだってこの人はぶっきらぼうで、不器用で、あったかい。

私は今世で初めて涙を流した。



……アミュール王国に行ってからというもの、俺は自分の気持ちに誤魔化しがきかなくなってしまった。

アミュール王国の王太子と並んで歩く姫様の姿を見て感じたのは痛烈な嫉妬、どす黒い独占欲だった。

俺は知らずのうちに手を強く握りこみすぎ、ふいに手を見ると爪が肌を破って血が出ていた。

……そうか。

俺のこの姫様に対する気持ちは敬愛とか、そんな純粋で綺麗な気持ちじゃない。

醜悪で、どろどろとした愛執に満ちている。

姫様の未来に自分ではない誰かがいたらきっと俺は気が狂ってしまうだろう。

「グレース……?」

姫様が傷ついているのは勿論分かっている。

それでもこんな醜い気持ちを持っていることを知られてはいけない。


「おい」

俺を呼び止めたのは王宮魔術師のリヒト。

平民ながらもその実力を買われ、高い評価を得ている。

元は孤児だったのを姫様が助け出し、姫様と近しい人物だ。

「……お前がそんな態度で姫様を傷つけるんなら、オレは許さないからな」

許さない、その一言に色々な思いが凝縮されているのを俺は感じ取った。

こんな状態のまま傍にいては姫様を不幸にするだけだ。

それでも……。

「……分かっています」

そう返すのが精一杯だった。


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