産道って狭いんですね…
お久しぶりです
連載は初めてですがお楽しみ頂けたら幸いです
「お前を、俺の女にしてやるよ」
乙女ゲーム、「あなたと夢見る愛に願いを」メインヒーローの俺様王子、アルベイン・ヤン・ヴァレンティンのエンディングでの台詞だ。
俺様キャラはそんなに好きじゃない、むしろ苦手な部類だったが、友人に執拗に勧められ、またメインヒーローということで作り込みも他のキャラより凝っていたため期待していた。
しかし、やはり私には俺様王子アルベインは性に合わなかったようだ。
アルベインがドヤ顔で得意げに言い放ったラストシーンにはときめきどころか失笑しか出て来なかった。
翌日も学校があるのに徹夜して攻略したって俺様はやっぱり俺様だった。
無駄に凝ったアルベインルートを全て攻略したところで、別に萌えはなかった。
「アルベイン様の椅子になりたい….…!」
と恍惚の表情を浮かべていた友人に問う。
お前、脳味噌でも沸いてんのか?
翌日の学校は正直言ってサボりたかったが、友人に感想を伝えるべく疲れた体を鞭打ってフラフラで学校へと出かけたが、思った以上に疲労が溜まっていて目眩がした。
その際、運悪く階段を上がっていて、私は後頭部を強かに打ち付けて死んでしまったのである。
私が死ぬ間際にやっていたあのゲーム。
メインヒーローの分岐には凝るくせに、その他の設定は割とユルユルだった。
舞台は王城。
王子の妃を決めるために国中の魔力を持った娘たちが呼ばれる。
魔力は血筋に影響されやすく、貴族に宿ることが多い。
そのため、王城に呼ばれた王子の妃候補たちは一人の例外を除いて皆貴族だった。
例外とは、ゲームのヒロインであるアンジェリカ。アンジェリカは平民の出身でありながら莫大な魔力を有するため、特例として招待されたのだ。ヒロインなだけあって、ピンク色のふわふわとした長い髪に赤い虹彩。
可愛らしい顔立ち。美少女という定義をそのまま表したかのような容貌だ。
攻略者は5人。
メインヒーローの俺様王子、中性的で儚げな王女の護衛騎士、ツンデレ魔術師に、チャラい隣国の王子、ワイルド系騎士団長。
っておい、騎士被ってんじゃねーか!
と思った私だったが、2人のキャラは全然被っていなかった。
騎士団長はガナル・マクダガル。まるでどこかのファーストフード店の様な名前だ。
見るからに暑苦しい筋肉を纏っていらっしゃって、私のタイプではない。
対する護衛騎士の方はグレース。
銀色の髪に青い瞳。
天使のような顔立ちはきっと女装させたってそこらの女より可愛いに違いない。
平民出身とのことで、ミドルネームとファミリーネームはなかった。
平民出身の彼が何故王女の護衛騎士なんてやっていられるのかというと、王女のお気に入りだったからだ。
王女から気に入られ、幼い頃からずっとつき従わされているのだ。
王女、クリスティーナ・エデュ・ヴァレンティンは悪役として立ちはだかる。
我儘放題の美女、王子の妹姫で王子を攻略するときもグレースを攻略する時もライバルとして立ちはだかる。
王女はありとあらゆる手段でヒロインを阻む。他にも様々な悪事に手を染めていて、王子ルートではどんなエンドでも最後には処刑された。
友人曰く、グレースルートにヒロインが入ると、これまたどんなルートでもグレースから殺されるらしい!
嫌がらせしただけで処刑とか酷くないか!?
とは思ったのだが、王女の嫌がらせは呪術で呪い殺そうとしたりと非常に悪質だったから当然の報いだろうとは思う。
と、ここまでが回想シーン。
今私が何処にいるのかというと、恐らく新たなママ上の羊水の中。
前世を懐かしみながら次に生まれ出る世について想いを馳せる。
どんな所かなー、いい所だったらいいなー。
私のここ最近の住処だった子宮が思いっきり収縮し始めた。
私は思いっきり押し出される。
狭い産道を抜ける。
ぐぐぐぐぬ。
せっっっっま!!
私は今ほど新生児(まだ胎児か)の柔らかな頭の骨を感謝したことがない。
しばらく経つと、光が見えてきた。
私はその光に向かって
ラストスパートをかけたーー。
「おぎゃーっ!おぎゃーーっ!!」
いきなり明るくなった視界に目が眩む。
まだ目は開いてないけど。
「第一王女、クリスティーナ・エデュ・ヴァレンティン様がお生まれになりました!」
その名を聞いた途端、
あ、これ私死んだわ。
人生を悟った。
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