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その歌姫の歌う歌は。  作者: 奔埜しおり
死を歌う歌姫。
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私は、俺は。

「さーてと。一通りじゃれ合ったところで自己紹介しますか」

「じゃれてないですわよ、気持ち悪いこと言わないでくださいますか」

 クリーム色の髪の毛の少女がぴしゃりと跳ねのける。トレイさんは苦笑を浮かべている。

「酷いなあ、もう……。じゃあ、俺から。ファルンの国出身のトレイ・ブラウズ。年は二十歳。彼女は募集中。守られたい人、癒されたい人、キュンキュンしたい人、誰でもどう――」

「引きますわ……」

「トレイ。歌姫様相手になに出会いを求めているんだ?」

「出会いって大切でしょ?」

 吐き捨てるクリーム色の髪の毛の少女。

 青みがかった黒髪の女性は、トレイさんの返答を聞くと、さっきまでより大きなため息を吐く。

「ヴィル。お前の相方、だいぶ酷いぞ、なんとかしてくれないか」

「先天性軽男病なので、できません」

「トレイ。相方にまで匙を投げられているぞ」

「やーん、ヴィルぅ、俺のこと見捨てないでぇ」

 トレイさんは唇を尖らせて、手首を合わせた拳二つの上に顎を載せて、じりじりとトレイさんににじり寄る。

「寄るな、キモイ」

「じゃあ次はぁ、ヴィルねぇ」

「なんで俺が――」

「やらなきゃぁ、ぶっちゅーしちゃうー」

「……ヴィル・リーブ。十八歳。以上。おい、言ったからその気持ち悪いポーズやめろ」

 しょうがないなあ、なんて言いながらトレイさんは元通りになる。するとピョンピョンと猫目の少女が片手を上げて飛び跳ねる。

「リターニャもやる!!」

「ほい、どうぞ」

 ビシッとトレイさんが指差すと、猫目の少女は背筋を伸ばして私たちを見る。

「リターニャは、リターナ・ルックって言いまーすっ! 十四歳、よろしくお願いします!」

 テヘッと笑うリターナさん。年齢を聞いて思わず目を丸くしてしまった私に、トレイさんが口を開く。

「リターナは八歳から十四歳の誕生日までの記憶をすっぽりなくしてるんだ。だから、だいぶ言動が幼いけど、気にしないで」

「そーそーっ! 記憶があってもなくてもリターニャはリターニャだから! じゃ、次はヌドキュッ!」

 どうして記憶をなくしているのか。

 訊くタイミングは与えてもらえず、すぐに猫目の少年が口を開く。

「ヌドク・ルックと申します。リターナの双子の兄で、年は十四歳。ご迷惑をおかけするかもしれませんが、よろしくお願い申し上げます」

 ヌドクさんは深々と頭を下げる。

 あまりにも丁寧な仕草と言葉遣いに、私たちも思わず一緒に頭を下げてしまう。

「次はどちらですか?」

「私がやりますわ」

 そう言って一歩前に出たのはクリーム色の髪の毛の少女。

 隣で青みがかった髪の女性が目を丸くする。

「意外だな」

「どういったものの順番でも、最後、はわたくしに似合いませんもの」

 クスリと笑うと、少女は私たちをじっと見る。

「わたくしはアイラ・ソーム・アルフォと申しますわ。年は十七歳。アルフォの国の元第二王女ですの」

「えっ!?」

 予想外の単語に、私たちは慌てて跪こうとして、アイラ様に止められた。

「第二王女と言っても、アルフォは一つの村ほどの小さな国。国民だって数十人しかいない。確かに王女として大切にされましたが、あまり国民と変わりない環境で育ちましたの。それに、今は歌姫様の騎士としてここにおりますもの、ご主人様方に頭を下げられるなんて、ごめん、ですわ。普通に、アイラ、や、アイラさん、で構いませんのよ?」

「そうそう。それにアイラはか弱そうに見えて、メイスとか普通に振り回すから。お姫様、として見ていたら驚くことになるよ?」

「あら、トレイ。あの重みをもう一度味わいたいのかしら?」

「……次はクレハさんで最後だね」

 アイラさんにはなにも答えずに、トレイさんは青みがかった黒髪の女性を指名する。

 女性は小さく頷くと、一歩前に出る。

「クレハ・クルーム。アルフォの国出身で、もともとはアイラの遊び相手だった。年は二十五歳だから、最年長になるな。よろしく頼む」

 静かに、だけどとても綺麗な姿勢で、クレハさんは頭を下げる。

「……じゃあ、次は歌姫様方にお願いしようかな」

 パチン、とウィンクをするトレイさん。それにげんなりとした表情をしつつも、エラが一歩前に出る。

「エラ・スタンです。二十歳です。愛の歌姫、なんてすごく恐れ多い名前で呼ばれています。ご迷惑をおかけすると思いますが、よろしくお願いします」

 それに続いて、シスも一歩前に出る。

「シス・クォルテです。十五歳で、命の歌姫、と呼ばれています。よろしくお願いします」

 二人が終わった。

 次は、私の番だ。

 ごくり、たまった唾を飲む。

「ホロ・サニーユです。十三歳です。死の、歌姫です。今回は、その、本当に、申し訳ございません。これからたくさんお世話になることがあると思いますが、どうか、よろしくお願いいたします」

 頭を下げる。

 深く、深く。

 このまま埋まってしまえばいいのに。

 そうすれば、これ以上私の歌のせいでなにかが起こることはないのに。


「俺さ。ずっと疑問だったんだけど」


 静かで、冷たさを感じる声。

 私はゆっくりと顔を上げる。

 鋭い瞳をしたヴィルさんが、私を見つめている。

「お前本当に歌姫なわけ?」

「え……?」

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