二つのアーニスト。
騎士六人と歌姫三人。合計九人で訪れたルーサン村。
そこにはルアディス・ウィションが割れた影響と思われる高熱で、倒れている人々がいた。
正直、いい気味だと思った。
だけど、お節介なエラが歌を歌うと言ったから。
彼女は、私やホロ、ルアディスの民に害がないことは、やると言えばやるのだ。有言実行。
私やホロが歌わないと言っても歌うのだろう。それなら、私も歌う。エラ一人に任せれば、きっとこの人数相手だと、死んでしまう。
今はまだダメだ。死なれたら困る。……いや、死んで欲しくない、のかも知れない。
そして、ひと騒動あってから。
私たちは三人で歌った。
そう、三人で。
何年ぶりなんだろう。
三人揃って歌ったのは。
微かにだけど、ホロの歌声が聴けてよかった。
だけど、安心してる暇はない。
だって、アーニストが私たちに襲いかかってきたのだから。
「アレは、なんなの?」
「純アーニストだよ」
トレイさんの言葉に、眉を寄せる。
「純? アーニストに純かそうじゃないかなんてあるの?」
「リターナたちが勝手に決めたんです。あなたを信じる、アンディスから来た私たちアーニストと、女神近辺を憎む、ルアディスにいる純アーニスト、って感じに。……まあ、アーニストの中にもトレイみたいにルアディスにいるけど私たちの味方についてくれる人もいますけど」
「なるほど」
それは、少しわかりやすい。
でも今はそういう話をしたい訳では無い。
「つまり、あのアーニストは純アーニストで、私たちのことを憎んでいるということ?」
「そういうことになりますね」
「トレイさん、アーニストとつながりを持ってるんじゃなかったの?」
私の問いかけに、トレイさんは肩をすくめる。
「アーニストって一括りで呼んではいるけれど、実際はいくつもの隠れ家があって、その一つ一つにそれぞれのグループが住んでいる形なんだ。だから、アンディス出身の女神がいるから協力してくれと言っても、喜んで頷いてくれるところもあれば、何度お願いしても頷いてくれないところ、一度目ですぐに追い出そうとしてくるところもある」
「僕らで言う、アンディスの家族のような形だと思えば、たぶんわかりやすいと思います」
「なるほど。ざっくりとわかったわ」
つまり、いくらつながりを持っていたとしても、無理なところは無理だった、ということだ。
「それなら、純アーニストも潰せたら潰したほうがいいわね」
「それなんですけど……巧くそそのかして死の歌姫にやらせたらよくないですか?」
「そうすれば、死の歌姫の評判は今よりも更に下がりますし、彼女の寿命も――」
「駄目よ!」
私の声に、三人の肩が震える。
「あ、ごめ――」
「なんで、駄目なのかな? 俺にはいい案に思えるんだけど」
しまった。
確かに、そうだ。
私が、女神になるのなら。
だけど違う。
彼女が、女神になるのだから。
「……今後どんなことが起こるかわからない。もしもホロの寿命が来たあとになにかが起きてエラまで命を落としたら。それに、もしかしたら私だって命を落とすかもしれない。そうなったら、一番そそのかしやすいホロを残しておいたほうが色々使い勝手がいいと思う」
我ながら、かなりひどい。
でも、そう言うしかない。
このまま頷けば、きっと本当にこの子たちはホロに人殺しをさせるだろう。
それだけは極力避けたかった。
「……そう、ですか」
なんとか納得はしてくれたようだ。
心の中で胸を撫で下ろした。




