50/61
もう二度と。
隙間からこぼれる明るい光。
私はこの時間だけ、柵のすぐ近くに立つ。
左足は、もう完治している。
ゆっくりと息を吐く。
体内のいろんなものを吐き出すように。
好きだとか、嫌いだとか。
信じてるとか、疑うとか。
信頼されるとか、裏切られるとか。
そういうものを、すべて、すべて。
女神に必要なのはきっと、少なくとも、そういったものではないから。
必要なのはきっと、全人類全世界への愛情。ただ、それだけ。
他は必要ないから。
誰か一人にだけ向ける慕う気持ちも、なにも、かも。
スゥッと息を吸う。
温かな空気を、体内に入れるイメージで。
薄くて、橙色の布。
精一杯その布を広げる。そして。
歌う。
布で、みんなを包み込むように。
あなたたちを、絶対に見放したりしないと。
それが、今できる私の、歌姫としての歌だから。
もう二度と、こんな思いを誰もしなくて済むように。
世界を、一つにしたい。
そのために私は、女神になろう。




