六人の騎士。
歌姫の命一つで、一つの願い事が叶えられる。
そんな言い伝えなのか、迷信なのかよくわからないことが、昔から伝わっていて。
誰一人それを試そうとしないのは、そんなことをすれば願いが叶う前に自分が罰せられてしまうし、下手をすれば死んでしまうから。
「本当、だったんだね……」
ポツリ。
女神様も、そのお姉様も騎士様もいなくなった神殿。
私の言葉は、響く。
「……やめてよ、自分がいけにえになろうだなんて考えるの」
エラがギュッと私を抱きしめてくれる。
温かいぬくもりに、私は頷けなくて。
「そうだよ。女神様も言ってた、原因はホロだけじゃないって」
シスがコツン、と私の肩に頭を載せてくる。
確かな重みに、でも私は首を横に振る。
「でも、ルアディス・ウィションを元通りにするためには、歌姫の命が必要なんだよ。それ以外の方法はないって、女神様も、お姉様も言ってた」
「だからって、ホロがその役目にならなくてもいいと思う」
「でも私のせいで――」
「はいストップ!」
突然割り込んできた声に、私たちは振り向く。
そこには六人の男女がいた。
私たちの、騎士、らしい。さっき、女神様の騎士から紹介された。
その中にはトレイさんとヴィルさんもいる。
私たちが言い争いかけたところをとめたトレイさんは、ニッコリと微笑んだ。
「誰がいけにえになるかを決めるよりも先に、欠片を見つけないと意味がないと思うよ。今できることやらないと。ね?」
そしてパチン、とウィンク。
エラとシスの顔が途端に険しくなる。見てみれば、騎士の人たちもみんな二人と同じ表情で。
それに気付いているのか、それとも相当鈍いのか。
トレイさんはまだニコニコしている。
「とりあえず、自己紹介しない?」
「さっき、現女神様の騎士より紹介していただいたと思いますが。時間の無駄じゃないですか?」
サラサラとした黒髪を肩で揺らしながら、猫目の少年が問いかける。……というより、投げつける、のほうが的確かもしれない。
すごく、声が冷たい。
「嫌だなあ、ヌドク。他人からの紹介よりも、自分の言葉で紹介したほうが、相手には印象に残りやすいんだよ?」
それに対するトレイさんの声は、変わらず明るい。
「リターニャ、それ、知ってるよ! し・た・ご・こ・ろってゆーんでしょっ?」
猫目の少年の隣で、そっくりな猫目の少女が、肩までの黒髪をサラサラと揺らして飛び跳ねる。
「リターナ。どこでそんな言葉覚えてきたんだい?」
やれやれといった様子で肩をすくめるトレイさんに、猫目の少女はにんまりと笑う。
「アイリャとクレヒャが、トレーは下心満載だって言ってたっ!」
するとふわっふわのクリーム色の髪の毛が特徴的な少女がその小さな肩をガシッと掴んだ。その横では、青みがかった黒髪の女性がため息を吐く。
「ちょっと、リターナ!! 余計なことは言わないでくれませんか?!」
「アイラ。私たちがそれを言っていたことも、トレイが下心満載のただの女好きのろくでなしなことも事実だ」
「ちょっとクレハさん、なんか増えてません?」
「トレイが下心満載のただの女好きのろくでなしで空気を読もうともしない奴だってことか? 増えてないだろ」
「いや今、しれっと更に増やしましたよね!?」
「細かいことを気にするなっ! お前本当に男か?」
「……助けてヴィル。クレハさんが俺を女にしようとする……」
「お前が女になったところで需要なんてないだろ」
「ひどいっ!」
ヴィルさんにまで冷たく返されて、大げさに嘆くトレイさん。
私たちはそっと顔を見合わせる。
二人は苦い笑みを浮かべている。きっと、私も同じ表情だ。
「緊張感皆無って感じだね……」
「そうね……」
「私たちの命を預ける人たち、なのよね……」
私たちはもう一度六人の騎士たちに目を向ける。彼らはまだ、トレイさんをいじっている。
三人で視線を合わせると、小さくため息を吐いた。




