最後の欠片。
朝みんな起きてから、私たちはトナイ村へ向かっていた。
その途中の森だった。
ふ、と気付いて足を止める。
温かな音が聞こえる。清らかな音。
見れば、エラとシスも立ち止まっている。
私たちが立ち止まったのを見て、リターナさんとヌドクさん、そしてトレイさんを担いだヴィルさんも足を止める。
「聞こえるのか?」
ヴィルさんの問いかけに、私は頷く。
目を閉じて耳を澄ませる。フッと瞼の裏に、光が見えた気がした。
「……こっち」
目を開いて、少し先にある木の根元へ向かう。
見れば、淡い橙色の光が見える。
しゃがみこむ。くぼんだ部分に手を入れれば、硬い感触。
それを握りしめて目の前まで持ってきて、手を開く。
手の中には、橙色の見慣れた欠片。
前のように涙が流れることはなかったけれど、安心した。
ああ、戻れたって。
「これで、最後、なのか……?」
「たぶん……」
「トナイに着いたら僕が組み立ててみます。……恐らくは、これで最後ですけど」
「意外とあっけなかったな」
ポツリと呟くヴィルさんの言葉に、確かに、と私は頷く。
「でも、早めに見つかってよかった。ルアディスが無くなっちゃうことはないんだよね」
「うん……!」
そうだ。
これで、あとはルアディス・ウィションが元通りになれば、私たちの旅は終わって、高熱に侵されて死ぬ人はいなくなるんだ。
「そんなに浮かれてられないわよ」
と、横からエラが口をはさんでくる。
「……だよね」
シスが俯く。思わず、私も俯いてしまう。
「……私――」
「私が代償になる」
シスの言葉に、ハッと顔を上げる。目を丸くしたエラと、真剣な表情をしたシス。
「……ふふっ!」
と、勢いよくシスが吹き出す。私たちはどうして笑っているのか理解できずに、茫然としてしまう。
「冗談だよ。たぶん、エラもホロも、代償には自分がなるって考えてるんだろうなって思ったの。私も、だけど……。それを決めるのは、ウォルテに行ってからにしよう? 私、誰が代償になるにしても、もう一度神殿に行って、女神様と女神様のお姉様に会いたいな」
シスがどこか寂し気に笑う。私は、その言葉に頷く。
「私も、会いたい」
私たちがエラを見ると、エラは小さくため息を吐く。
「私だって会いたいわよ。……もうこの話はやめましょう。ほら、早くトナイ村に行くわよ」




