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その歌姫の歌う歌は。  作者: 奔埜しおり
死を歌う歌姫。
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体調不良につき。

 陽が昇っているうちは移動しつつ、三人で、村人の高熱を下げるために歌い、月が昇ればトレイさんとアーニストの元へ行き、一人で、彼らの命を奪うために歌う。

 そんな毎日を、私はあの日からずっと繰り返している。

 できるだけ考えないようにしているけれど、それでもやっぱりふとした瞬間に苦しげな表情や呻き声、崩れ落ちて動かなくなる身体を思い出してしまって。

 辛い、なんて思っちゃいけない。

 そう、必死に言い聞かせている。

 これは、初めて人を殺めたあのときとは違うから。間違いなく自分の意思で、私は彼らの命を奪っているのだから。

 最近、歌をうまくコントロールできるようになってきた。

 確かにいい事なのに、素直に喜べないのは、それが人を殺す道具になってしまっているからだと思う。


 あの日から、私は夢を見る。

 真っ暗な場所で、私が殺めた人たちが、私を取り囲んで、襲い掛かってくる夢。

 沢山の大人にしがみつかれ、髪を、腕を、足を、耳を、引きちぎられるんじゃないかというくらい引っ張られる。

 重なり合う身体や腕の隙間から見えるのは、幼い頃、まだ歌が好きで、いろんな人に可愛がってもらっていた頃の私がいて。

 幼い私はすごく悲しげに微笑んでいて。

 さようなら。

 そう、口が動くと同時に目が覚めて、窓を見ると朝になっている。

 寝覚めは最悪で。

 いつも、リターナさんやエラ、シスが心配そうに私の顔を覗き込んでいる。

「大丈夫?」

 今朝は、幼い私がなにか言う前にエラに揺り起こされた。

「うん、大丈夫……」

 言いつつも、頭が痛い。身体も、軋むように痛む。気のせいか、少し熱い気がする。

 それを無視しつつ、ぼんやりとした頭でなんとか髪の毛だけ手櫛で整える。

「本当に? 顔色悪いけど」

 真っ白で綺麗な手が伸びてくる。

 いつも、幼い頃からなにかあれば真っ先にすがり付いていた手。

 安心できる手。そのはずなのに。

 一瞬、それが夢の中の手と重なって――。

「……っ!」

 私は、気づけば振り払っていた。

「あ……ご、ごめん! 本当に大丈夫だから!」

「あ、ホロ――」

 逃げるように私はベッドから飛び起きて。ふらつく身体に鞭を打って走って部屋から出る。と、たまたま隣から出てきたヴィルさんと鉢合わせしてしまう。

「すみませ――」

 逃げようとしたら、腕を掴まれる。

 反動で転びかけたところを、グイッと引っ張られて、ヴィルさんの方へ。

「お前、絶対熱出してるだろ」

「出してなんか――」

「出てる。身体熱いし、目も潤んでる。だいぶ高いんじゃないか?」

「そんなこと――」

「今日は、俺がおぶってく。絶対に無理はするなよ」

「でも――」

「病人は黙ってろ。文句言う資格はない」

 三白眼に睨まれる。

 日頃の罪悪感もあって、反抗できなくて。

「……わかりました」

 結局、頷いてしまった。

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