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月日頑固の幽霊なショートショート  作者: 内気でロバ顔
幽霊編
9/31

9.幽霊はさみしいので頑固に憑く②

うおさおって右往左往(うおうさおう)のことだったんだろうな。僕がどれだけ臆病でも、親戚が集まる場で右往左往はしないよ。慌てて、一人の個室に逃げこむような対人恐怖症っぽいことはしないよ。まったく済崩(なしくずし)さんはいったいなにを言っているのだろう。その言い方だとまるで僕が恐怖のあまりに、お漏らしをしてしまったみたいじゃないか。違うのだ。あれは「わけのわからない何か」の意向を推測し、僕が承認したにすぎないのだ。おかげで、半ズボンの面積の二分の一が濡れてしまったけども。まあ。あれは仕方のないことだった。


だって、「何か」が漏らせ!って圧力を掛けてくるんだもん!


お漏らしもするさ!


別に僕は幽霊なんだから、人間未満で合ってるし、なさけないのも、まあ、自覚しているからいいけど。


「お漏らし」は意図的(いとてき)にした行為なんだ。


そこは誤解しないでほしい。


まあ。反論する勇気はないから、言い返さないけどさ…。



どうやら相手は僕の話しを聞く準備ができたみたいだ。


さっきまでの侮蔑(ぶべつ)な笑みを崩して、またこちらに耳をかたむけていた。


「物語の続き…話しますね」


僕はいった。


•••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••


僕は漏らした。


すると、いままで布団から身動きがとれなかったのが嘘のように、全身不随(ぜんしんふずい)が消えた。


それでも、ギシギシは断続していた。どうやら、階段を歩く時に出る音のようだ。


二階のこの部屋の入り口まで音が近づき、ピタッとやんだ。


バン!っと引き戸が開けられ、中から母親がでてきた。


「どうしたの?さっきから、変なうめき声がこの二階から聞こえてきたけど…」


なんだ、かあさんか…、と僕は安堵(あんど)した。


「いいや、なんでもないよ。うめき声なんて僕がだすわけないじゃん。何をいってるの」


僕はしらをきった。



階段をおりるギシギシという音をききながら、考え事をする。


さっきのはいったい何の仕業(しわざ)だったのだろうか。招待不明の「なにか」はなぜ消えたのだろう?

お漏らし、という目的を達成できたから消えたのだろうと、思っていたが、今、冷静になって考えみると、その可能性は低いような気がする。というか、僕のお漏らしを見るために、全身を封じるなんて、可能性として考えたくもなかった。考えただけでも気持ちが悪い。


ならなぜ消えたのか?


すると一つのひらめきがでてきた。


そうか。やつは母親が近づいてきたから消えたのかもしれない。照明が消えていて、暗闇だったから僕は気配しかわかなかったけど、照明をつけてしまえば証明される。


1.母親が照明をつけること

2.母親が「なにか」の正体をみやぶること


この二つを、危惧(きぐ)し、逃げだしたのだろう。きっとそうだ。まだ判然としないところではあるけれど、この可能性をおおいに受け入れよう。お漏らしのことは忘れよう。


僕の思考はひとまず完結した。


••••••(一週間後)

9時45分


「ピンポーン」


誰だろう。玄関の引き戸を開ける。


赤いユリが一本、砂利(じゃり)の上に置かれていた。


さすがの僕も、今回はそれを触ろうとしなかった。


家の中に引き返して数時間後、


そのユリは、いつの間にか消えていた。


••••••(その一週間後)

9時45分


「ピンポーン」


誰だろう。玄関の引き戸を開ける。


赤いユリが一本、砂利の上におかれていた。


なんだ、なにがしたいんだ。意味が不明だ。


一週間後で時刻は同じ。犯行が規則的だった。


••••••(その一週間後)

9時45分


「ピンポーン」


「ゴメン。ちょっと、とうさん出てくれる?」


「ああ、わかった」


ガラガラと扉を開ける音がした。


「なにか落ちてなかったー?」


父親に呼びかけた。しかし、意外な反応だった。


「いや、落ちてないけど…」


嘘⁉


スリッパを履き外に出た。


あ、本当だ。


なぜ、僕の時だけ?

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