22.ガン三度み
トイレから帰ってきたまあくんと僕はテーブルを囲むようにして座った。楓をいれて計三人になった。
きみが幽霊だったなんてね。十年前の夏の真相。断片的だけど、少しずつわかってきた。
「あの気味の悪い出来事はまあくんの仕業だったのかい」
「全部じゃないぜ。楓もあの時いたんだからな。ボクはねえちゃんの居る近辺にしか生息しないのさ。生息というか、まあ、ボクが勝手についていっているだけなんだけどな」
ストーカーという名の常習犯だった。
あまり聞きたくない情報だった。正直今すぐ成仏してほしい。そして阿鼻地獄にいってほしい。
全部じゃない?でも、赤いユリを置いたのは…。
「インターホンを押す時、足音が聞こえなかった。ということは、ユリを玄関前に置いたのはまあくん?」
「そうだぜ。よくわかったなー」
「グルだったんですね。僕はからかわれていたんだ。恐怖でゆがむ顔を見たいがための、いわゆるドッキリだったんでしょう?」
すると楓は首をふった。
「んーん。違うよ。私は頑固くんをイジメたかっただけだよ」
確信犯だった。ひどい人だ。
「でもね」
でも何だ?どうせイジメたかったんだろ?
「でも、頑固くんが百合を好きなことを知っていたから、渡したかったってのが本音かな。頑固くんが私にしてくれたことのお返し。うんーん。あれだけじゃ足りないくらいだよ。それくらい、あの「行為」は嬉しかったの」
?
嬉しかった?
よく思い出せない。僕の学生時代の過去が判然としない。霧にうもれて隠れてしまっているみたいに、断片しかたどれない。いったい何をしたというのだ。
「そんなに嬉しいことだったんですか?」
彼女はこくり、と頷くだけだった。
••••••
「あの…疑問があるのですが…。まあくんが幽霊だとなぜわかるんですか?消えることができるから幽霊なら、瞬間移動できる超能力者も幽霊ってことになりませんか?」
済崩…じゃなくて、楓は口をひらいてこう言った。
「頑固くんは自分のことを容易く幽霊だと信じたのに、なんでまあくんのことは疑うんだよ。頭おかしいんじゃない」
頭…がおかしいか…。
たしかに僕は標準的な人間の思考と比べてズレている部分があるから、そういう人から見れば頭がおかしく見えるかもしれない。
ちなみに、僕は自分が幽霊だろうが人間だろうがどっちでもよくて、ただ幽霊の可能性もあるだろうなあと思うだけだ。幽霊だと信じているわけではない。
どうやら質問に対する答えは返ってこないようだ。有耶無耶にされてしまった。済崩葵って偽名を使ったんだから、済し崩しにことを進めてほしい。幽霊とはなんなんだ?
「幽霊はてめーの心の中に住む、幻覚であり、現実なんだぜ」
二人の会話に割って入ってきたまあくん。ちょっとカッコいいセリフを言った。カッコいいだけであって、内容の意味が理解できなかったのでシカトした。
幽霊で年下なんだから敬語つかえや。僕のことを、てめーとかいうな。