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月日頑固の幽霊なショートショート  作者: 内気でロバ顔
幽霊編
17/31

17.頑固帰る!

「じゃあ、そろそろ帰ります」


会計を済まそうと思って、席を立ち、レジに向かった。すると、呼び止められた。


「待ってよ頑固くん。楓のことをおいていく気⁉」


「だから、今の僕はやる気が無いんですって」


おいていく気も、おいていかない気も無いんです。そもそもやる気が無いんですから。


やる気が無いから、楓という言葉に無関心だった。まさか、済崩(なしくずし)さんが楓だったなんて、まだわかっていなかった。とんでもないやる気の無さだ。


「あの居間で見た、幽霊のことを知りたくないの?」


僕はピタッと歩む足を止めた。


いや、知りたいけど…。


「頑固くんは、幽霊じゃないし!楓も幽霊じゃないんだよ!頑固くんは勘違いしかしていないんだよ!頭を使えよ!頑固くんは何も考えてないんだね!」


何も考えてないことはないんだけど…。


そもそも何も考えてなかったら、人間ではないような気がする…。「考えてる状態」の判断基準が曖昧だし、あなたは僕の脳内情報がわかるのですか?と問いたくなってくる。


誤解を生みそうな発言はつつしんでほしいのだが…。


「じゃあ、ぜひ聞かせてくださいよ。あの居間で見た幽霊が何者なのかを」


「わかった。だから、椅子に座れ。でないと、話し辛いだろうが」


なかなか強気な済崩さんだった。


••••••


「はい、座りましたけど⁉」


僕は少し不機嫌になっていた。


頭を使えよ!頑固くんは何も考えてないんだね!という言葉が脳裏をよぎる。


先ほどの人を馬鹿にした言い方はよろしくないと思う。


って僕は人ではなく幽霊だったなと、やる気の無い頭で思い出した。まあ、どっちでもいいや。


「ふん。じゃあまず始めにきみの性別を教えてくれ」


「嫌です」


やる気の無い僕でも、黙秘権はあるだろう。僕は男だ。たぶん。


「プ。まあ、いいけど」と彼女はいった。そして、おもむろに左手を差し出してきた。


なんの仕草だ。と思ったが時すでに遅し、僕の左手はガッチリ(かたく)なに固定されたていた。(ふたた)び左手が握力計にされてしまったようである。


要するに、半強制的に握手している状態になった。


つなぎ服の瑠璃色が発光していた。まるでパワーストーンのようになにか力が湧いてくるような、異様さだ。まぶしくて、見ていられなくなる。


嘘だ。


まぶしいのは彼女の笑顔である。


その屈託のない表情をみて、記憶が一致した。


「かえで…な、の?」


彼女が「楓」であることに、やっと僕は気づいた。


「え。気づいてなかったんだ。さすがは頑固くんだね」


僕は褒められた。

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