1.月日頑固は働いた。
青い光りがあまりにまぶしくて、僕のゆううつがかき消されたような感覚になった。
あれから十年がたった今でも覚えている。
彼女はいまどこにいるのだろう?
なにをしているのだろう?
きっと現実逃避ばかりを繰り返している僕なんかでは、とうていたどり着けない愛に溢れる彼女らしい人生を歩んでいるのだろう。
もし、またこの世の全てを悲観してしまうやるせない感情がよみがえってきたら、あの青い浄化されるエネルギーを僕に分け与えてほしい。そう思う。
••••••
仕事をはじめて三年が経過した僕の脳内は、グチャグチャになっていた。正しさとか、生きる意味とか、周囲の目とかそんな普通なら曖昧に流してしまえるものを、僕は悩み苦しみ忘れることで日々を生きてきた。もちろん、僕なんかがこの工場現場に就職して働けることは光栄で、感謝している。でも、生きるのが辛くなるくらい「うしろめたい」ことが社会にはあるのだということを、この三年間で知ってしまった僕はもう、「やる気」というものを損失してしまった。どうにでもなれ!とやるべきことを投げ出す、まるでダメな男になっていたのだ。
うう。生きるのが辛い、と重い足取りで坂を上がり、灰色の工場に入ろうとした時のことだ。ふと、青いものが視界に入ってきた。
「やっほー!おはようございます。お元気ですかー?今日も気張っていきましょうよ。ね⁉」
彼女はここの従業員ではない。しかし、なぜか作業服。青いつなぎの服装をしていた。ショートヘアーの彼女はその全身を覆う青に、とても馴染んでいて、かっこいい。僕は思わず見とれてしまった。
どうやら早朝から、色んな人に挨拶をかわしてまわっているようだ。
顔を合わすのが恥ずかしいので、できるかぎり彼女に会わないようにコースを選び、タイムカードを押した。ビビと音が鳴り出勤時間が打ち込まれた。
••••••(就業時間が終わる)
僕はそそくさとタイムカードを押し、帰宅した。そして、彼女のことを考察することにした。なにせ彼女はおかしい点があるからだ。それを考えぬほど、僕の繊細な心も落ちぶれてはいない。
おかしい点。それは朝の時点でわかる。彼女は勤務する人に挨拶を投げかけていたが、一度も「挨拶をかえされていない」ということだ。これは今日に限ったことではない。僕が入社した頃からそうだった。誰からも彼女は、「話しかけられていない」のである。
シャイボーイな僕は彼女と会話というものをしたことがないのだけど、ここにいる全員がそんな性格なわけがない。
だから、僕はある憶測をたてている。
それは。
彼女が 死んだ 幽霊 なんじゃないか。と。