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第一章 シアン色の空。

シアン色の空。始まります。

よろしくお願いします!

俺は風にあたりながら、魔法学校の屋上で仰向けになり寝転がっていた。

俺の頭上には、相変わらず蒼白とも言えないシアン色の空が広がっていた。

「おっ、こんな所で優等生が何をしてるのかな?」

俺に話しかけてきたコイツはモロー・ピリー。

「何でもない。ただ寝てるだけさ」

ピリーは俺の隣まで来て、同じように寝転がる。

「名残り惜しいよなぁー…もう卒業なんて」

そうだ。もう俺達は卒業するんだ。

「それにしても、卒業試験ってなんだろな?」

「そんなの、俺に聞かれたって困る」

「毎年違うみたいで、去年なんて饅頭早食い競争だってよ。マジで笑える」

俺達は今までの訓練を思い出したりして、どこにでもあるような学生が卒業する間際の会話を交わしていた。

ピンポンパンポーン

軽快な事が俺達の会話を遮る。学校のアナウンスだ。

<卒業式は明日に控えた。しかし、我々教職員は毎年輩出する先輩達のレベルの低さに失望してしまっている。

なので、今年の卒業試験は只今から行うことにし、内容は一層困難なものとする。その内容は、「仲間と戦う」ことだ。その戦いを勝ち抜き、残った30名を卒業する資格を持つ者とする。どんな手段を用いて仲間を嵌めても構わない。

ジェルネイル魔法学校、卒業試験を只今より開始する!>

俺達は即座に起き上がる。

「なんだよ、今の…」

俺達が目を見開いて向かい合っていると、

「きゃああああ!!」

下のグラウンドから叫び声が聞こえた。

「なんだ!?」

俺達は直ぐに屋上から下を覗き込むと、グラウンドではある女性と男性が戦っていた。

その隣では女性が一人、倒れている。

「おい!あいつやばいんじゃないのか!?」

ピリーの声が聞こえる前に、俺の足は動いていた。

俺は屋上から飛び降りる。

「フライング!」

魔法を使い、空を飛び、二刀の剣を抜き、二人の戦いをとめる。

ガギギッと金属音が耳に入る。

「ヤム!?」

女性の方が俺の名前を呼ぶ。

「カナだったのか」

俺は男性の方の刀を弾き飛ばし、カナの方へと寄る。

「やっぱり、さっきの放送は本当だったみたい…。皆目の色変えてるよ」

カナは息をきらしながら、その艶の良い短い髪を耳にかける。

「そうか」

「お前がヤムサール・ジョナサンか。名前は聞いた事があるが、この学校一の優等生何だってな?俺はお前のせいでいつもいつも…二位だった…今、お前に復讐してやる!!」

その男は俺に斬りかかってくる。

「バカかお前は。お前が何時も二位だったのは俺のせいなんかじゃない。お前の実力が足りないからだ!!」

振りかぶられた剣を避けて、俺の剣が相手の腹を斬りつける。

「がはぁッ!?」

やがて、男は倒れて、死んだ。

「…ねえ。本当にいいのかな?」

「何が」

俺達はさっきの男を倒し終わると、グラウンドから出よう足を進めていた。

「何って…こんなことしてだよ?」

「こんなことって言われても卒業するには仕方ないだろ?それにさっきは自分の身を守るためにやったことなんだぜ?」

「でも…今まで頑張ってきた仲間なんだよ!?」

ついにカナは泣き出してしまう。

「泣くなよ…」

「ううっ…ひっく……うぅぅ…」

女性が泣いてしまうと、俺はどうしたら良いのかわからなくなってしまう。

「職員室に行くぞ」

俺はカナの手を引っ張り、職員室へと向かった。

職員室の前では沢山の生徒がいた。きっと抗議でもしているのだろう。

教師が中から出てきてこう説明する。

「殺し合いだ。わからんか?生き残った奴だけが卒業できる」

キッパリと答えたその言葉に俺たち生徒の心に衝撃が走った。

その言葉が許せないのか、当然反抗する者が現れる。

「ありえねーだろ!ふざけんてんじゃ……」

その生徒は、魔法で頭を貫かれ力なく崩れ落ちた。

「良かったなお前ら、これでライバルが一人減った」

教師がそういうと、生徒達は慌ててお互いの距離を取り、叫びながら逃げていく。

最後に俺達、二人だけが残される。

「なんだ、お前達。何かあるのか?」

教師がそういうとカナが怯える。

「ヤム…行こ?ねぇ…」

カナが俺の袖を引っ張る。

許せない。教師がこんなことをするなんて。

「魔術警備隊にはなんて言ってるんですか?こんなことが知れたら即逮捕ですよ」

俺がその教師に脅しをかける。しかしその教師は笑い出す。

「ハハハハッ!残念だが、これはもう許可は取ってある。大丈夫だ、安心して殺し合いたまえ!」

その教師は笑いながら職員室へと入っていった。

「ヤムぅ…」

俺達は職員室から離れ、屋上へと向かっている。

「どうした?」

カナは震えながら両腕で俺の腕を組む。

「恐いよ……」

「……大丈夫だ、恐くなんかない」

また泣き出すカナを鎮めるために優しい言葉を見繕っては、吐き出す。

「恐いよっ!…皆、一緒にここまでやってきた仲間なんだよっ!?」

「……」

俺は何も言えなかった。何も返す言葉がなかった。

「もういいよっ!」

カナは俺の腕から離れ、走り出す。

「カナ!!どこいくんだ!!」

走り出したカナを追いかける。カナは何かにぶつかり、廊下に倒れる。

「ははっ!今度は女だぜ!?」

「マジか。じゃあヤってから殺すか」

「イイね!俺、この子マジ好みなんだけど」

カナの前には三人組の男達が笑っている。

「ヤメテっ!」

カナは逃げようとする。

「この女、逃げようしてるぜ?」

「当たり前だろ?」

「じゃあ、足でも刺しとくか」

男達は剣を抜き出し、カナに向かって振り下ろす。

「やめろぉぉお!」

俺はカナを庇うようにして、三本の剣が背中に刺さる。

「ヤムッ!!」

カナは叫ぶ。

「くそっ…たれがぁあ!」

渾身の破の魔法を使い三人共にお見舞いする。

三人は簡単に吹き飛び、コンクリートの壁にめりこみ、絶命した。

「ヤム…!ごめんなさい…ごめんなさい…私が、勝手に…ごめんなさい…ごめんなさい…」

カナは泣きながら必死に謝る。

「いいん…だよ…。それよりも…カナだけは…生き残れ!…ピリーは優しいから、守ってくれる」

だんだんと目が霞んできて、意識が薄れていく。床が血で真っ赤に染まる。

もう俺が助かる術は何もない。

「ヤム…?私ね?ヤムのことが、す…」

カナの言葉を最後まで聞くことなく。俺は死んでいった。

「いやぁあああああ…!!」

その叫びは、ヤムには届かない。

廊下の窓からは、シアン色の空が広がっていた。

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