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Burn with me!!  作者: キノコ飼育委員
俺の見ている第一章
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プロローグその4

踏み込みと同時に振り下ろされるノコギリを、後ろに跳ねてかわす。


『皮剥ぎ』はさらに距離を詰め、先程振り下ろした勢いのまま横に回転、丸ノコのように迫る。


それを、今度は前方斜め上、つまりヤツを飛び越えてかわす。


空中で身体を捻り、奴の方を向いて着地。


奴は丸ノコのまま燃え盛る木を数本斬り倒し、ぴたりと止まる。


「ひとつ聞こう」


そこで再びソイツが口をきいた。


「ここ最近帝都を騒がしている爆破や放火は、貴様がやっていたのか?」


「今聞くのかよ……」


違ってたらどうするつもりだったんだ?


「どうなんだ?」


「あー、まぁそんな()ンジ?」


「……セミツェル様を焼いたのも、貴様だな」


「セミツェル? セミツェルってあのセミル・セミ・セミツェル?」


確か、この間焼いた貴族のオッサンだったか?


「おう俺だ。ベリルの旦那に雇われたのさ」


筋書きではそうなったはずだ。


その方が俺の目的に合う。


「ククク……嘘をつくな」


しかしソイツはおかしそうに笑う。


「セミツェル様はな、あの会話を録音していたのだ」


マジかよ。


つまりアレか。


「お陰でベリル派は反論の間もなく潰せたよ。録音記録は好きな長さに調節できたからな」


まんまと利用されたわけだ。喰えないねえあのオッサン。


っと、そうこうしてるうちに騎士様がまた殺意をみなぎらしてらっしゃる。


奴はノコギリを大上段に構え、


「是非礼を受けとれ」


またも爆発するような踏み込み。


彼我の距離を一瞬で詰めてくる。


だが


「バカが。『Barn with me!!』」


バカ正直に突っ込んでくるなら火ダルマにするだけだよな!!


「バカは貴様だ!!」


なッ!?


俺の焔を、突っ切ってくる!?


クッ!!


「おぉおお!!?」


横に跳び、追撃されないようさらに距離を取るべく燃え盛る木を蹴って離れる。


「炎使いに何の対策もしないと思ったのかバカめが……この鎧には耐火の防御結界が付与されている。ドラゴンブレスだろうと効かんよ!」


そう言ってまたもや突進してくる。


あの全身鎧でこの速度……あぁ、身体強化魔法か。


しかし「『Rest in peace!!』」俺の能力のが早え!!


白い幾何学的な紋章が俺と奴の間に壁のように展開し、パンと弾けて“鋼鉄の壁”が出現する。


この間ほんの刹那ほど。


二度の交差で奴は小回りが効かないのはわかった。


鋼鉄の壁(コイツ)とキスしてな。


さて?復讐に狂った騎士様はほっといてさっさとズラか



「あ?」



鋼鉄の壁は、意味を成さなかった。


どころか正直、目の前で起こったことが信じられねえ。


奴はノコギリで壁を、斬らなかった(・・・・・・)




熱い。


袈裟がけに斬られたのだと理解した時に、最初に感じたのは熱さだった。


次いで痛み。


声を上げて絶叫するか、うめきながら絶命するか、迷うような痛み。


「魔剣『偏食主義(イーター)』。こいつは生物にしか当たらん」


奴が壁を飛び越えてきた。


奴がノコギリを愛しげに撫でてやがる。


クソ、見たとこザックリぶち斬られてる。


切れ味の無いノコギリと身体強化魔法使って強引に咬み斬りやがったな。


ドクドクと血が流れる、どう優しく見たって致命傷だ。



「フン、貴様のような下朗には楽な死に様だ。そのまま自分の作った炎に焼かれるがいい」


踵を返して奴が去ろうとする。


その背中は俺を完全に仕留めたと確信してやがった。





「ざけんじゃ、ねえ……ぞ」


俺は、傷口に火を着けた。


「ギャアアアアァァァァ!!!!!!」


がァあああああああああああああ!!!


わかっちゃいたがクソ熱い!!


流れ出た血液を可燃液にして火ィつけるなんざ、わかっちゃいたがクソ熱イィィイイ!!!


「ァァァァッッッッッ()()()()()ァ……!」


だがな、血は止まったぞ……!


「ハァッ、ハァッ……おい、ノコギリ野郎……逃げてんじゃねえぞ!」


「……フン、どうやったかは知らんが……大人しく死んでおけばいいものを」


ぐるりと奴がこっちを向く。


奴と俺の距離は、最初の時に比べてかなり近い。


たった5歩分の距離だ。


「ハァッ、ハァッ……ハァッ……ハァッ、ハァッ」


意識が微かな痛みと強烈な熱さでおもしろいほど焼ける焼ける。


「息も絶え絶え、という奴だな。フム、楽にしろ。地獄のように痛く、全身の皮をコイツで削いでから殺してやる」


やたら嬉しそうにノコギリを肩に担いでこっちを見てきやがる。


……舐めやがって。


「ハァッ……なぁ」


「ん?」


「俺は、お察しの通り魔人だ。能力は、近くの液体を可燃液に変えること」


「他にもあるのだろう? それにそれがどうした。先も言ったろう、この耐火の防御結界の張られた鎧の前では無意味だと」


「だからってよぉ、ハァッ、ハァッ、密閉された水、例えば体内の血液とかは変えられねえし、口の中の唾液も無理だ」


「……? それがどうしたと言っている」


「ハァッ、ハァッ……アンタは、ここまで走ってきたんだ。肩で息もしてた。ハァッ、その上、こんな焔の中で死闘だ」


「だから何をッ……フゥ、気が触れたか」


奴はつまらなそうにザクザクと近づいてくる。


「ハァッ、ハァッ……で、よう騎士様。アンタ、随分と、


















汗をかいてるな」


俺は、奴の“汗”を全て自然発火する液体に変えた。


「ぐぁああああああああああああああ!!!!??」


鎧の隙間全部から炎が酸素を求めて腕を伸ばす。


『皮剥ぎ』はその場で身体を焼かれバタバタと踊り出す。


だがこの程度じゃコイツは死なねえだろう。


だからさっさとズラかる。


「あばよノコギリ野郎、憎悪の焔で自分を焼きな」


俺は、ともすれば消えそうな意識を無理矢理燃やしながら走り、叫んだ。


「『|お前も燃えろ(Barn with me)!!!』」


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