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Burn with me!!  作者: キノコ飼育委員
俺の見ている第一章
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プロローグその3

はいはいどーも、『ロンリー・ラビット』でーす。


今日も一日頑張りましょうっと。


昨日は“ムコノタミ”一匹と頼れる兄貴分の守備隊長アーンド守備隊詰め所一個を火だるまにしましたまる


さて今日の獲物はー?


帝都林業区『エンディミオン大植林地』でーす。いえい。


この国の木材供給の五割を占める巨大植林地、ここを焼き払えば大量の人生落伍者が帝都に溢れるでしょう。


……ぱぱっと燃やして帰るか。



「そこのお前!ここで何をしている!」


んぉ?


後ろからの誰何の声に振り向けば、鉄の胸当てと両手剣で武装した軽装の男がひとり。


警備兵か。


「あぁワリィワリィ。道に迷ってな。これ、冒険者カードだ。確認してくれ」


「ん? 冒険者? こんなところでなんの依頼だ?」


「クレイジー・ボアボアが暴れてるって聞いてな」


「あぁ……なら反対側じゃないか!」


「おぉう……マジかよ。あんがとよ、にいちゃん」


右手を出しながら自己紹介。


「シロ。俺の名前はシロだ」


「見たまんまだな……俺はピエールだ」


すると警備兵のにいちゃんも手を出し、握手する。


「ところでにいちゃん」


点火。


「この世には“燃える水”ってのがあるって知ってる()い?」


瞬間、警備兵改めピエールくんが繋いだ手先から燃え上がった。


「ガッ!? ギ」


口を開けて絶叫される前に、その口の中へ袖に仕込んだ火焔放射器でディープにキスしてやる。


火焔を喉へ流し込む。


「ッッッッ…………」



肺の中まで焼かれたのか、ピエールくんは痙攣しながら倒れ、即死した。


っし、オレ流サイレントキリングは今日も冴え渡ってるぜ。


しっかしいつも不思議なんだが、どうしてこの“ギリシアノヒ”は燃えるんだろうな?


無味無臭でサラッサラ、でも火を着けると途端にドロドロゲルゲルベッタベタになる。


やっぱ開発したアイツは天才だったんだよな。


……あの戦争も、アイツが生きてたら勝ってただろうな。


っと、感傷に浸る前に移動しますか。


その前に顔を覆っておこう。

「『Rest in peace!!』」


白い光が頭全体に集まり、幾何学な模様を描く。


その光が一際輝きパンと弾けりゃ、みんながデザインした、白いウサギを模した“ヘルメット”が頭を覆っていた。


これは俺の頼れる兄貴が、俺に“最期に”残したもの。


……さて、あとは獣道に沿って“プール”を作っていくだけだな。


それだけで着火準備は完了。


あとはあの小高い山から俺の能力をふんだんに使って燃え広がらせるだけだ。


大成功のためには手間を惜しんじゃいけねえ。


アイツも言ってた。


“戦争は始まる前から終わってる”。


未だによくわからねえが、ようは“準備万端で戦え”ってことだろ?……たぶん。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




はい、でやって来ました『エンディミオン大植林地』中心部の小高い山からお送りするぜ。


まずは材料集めから。


「『Laining Dogs』」


俺の背中に翼のような形で幾何学的な紋章が現れ青く発光すると、晴れ渡った空に雨が降ってきた。


まあ正確には空から水をかき集めてるんだがな。


なんでも空気の中には見えないだけで水が含まれているらしい。


それを能力で集める。


つってもマジモンの『水流操作能力者』と比べりゃ格下だから、微かな水分を文字通り集めることしかできねえ。


だからある程度集まると支えきれずに落ちる。つまり雨になる。


だがその程度で全然構わねえ。




この能力の真骨頂はそこじゃねえ。


ざんざんと降ってきてびちゃびちゃと足下流れるこの水を


「『and Cats』」


全部可燃液に“変える”。


一瞬、とはいかないまでも急速に“ただの水”が“ギリシアノヒ”に早変わり。


そう、これぞ“彼女”の力の真骨頂、『液質変換』。


ただの水を聖水に変えることすらできるスゲエ能力だ!


……優しい、女だったのに。


どんな相手にも優しい、女神みたいな女だったのに。


死体はよくわかんなかったな。


ボソボソで、まっくろで、吐きそうな臭いがしたな。


…………。




「『Barn with me』」



小指の先に小さな火が着く。



炎が、一瞬で広がる。


水分を奪われた空気は酷く乾燥している。


青々とした葉や幹は燃えにくい。


だが乾燥した樹皮は、たっぷりと可燃液の染み付いた枯れ葉はその限りではない。


「『God breath you!!』」


両手足の先に幾何学的な紋章が緑色に発光し暴風が撒き散らされる。


これは姉御の能力。


嵐みたいに激しく生きていた姉御の能力。


その姉御は、氷柱で針ネズミになって死んだ。



吹き荒ぶ暴風が炎を焔に昇華する。


焔が地を這い木を舐め走り出す。


四方へ走った火焔はゴールに、さっき歩き回って溜めといた別の可燃液溜まり(プール)に辿り着く。


引火。


爆発。


あそこの“プール”には同じようにして創ったお馴染みのガソリンが撒いてある。


あそこら一帯の木が次々に吹き飛んでら。


()()()()ッ!! さぁ、もう止まらんぜ!」



よぅし、俺もさっさとズラかるか!


今夜はいい酒が飲めそうだ!



火火火火火火(カカカカカカ)ッ!!!!








「ようやく……見つけたぞ」


あん?



後ろからの声に振り向けば、そこには一人の騎士が居た。


美しい銀に輝くしなやかなイメージを持たせる全身甲冑、そんな奴が肩で息をしていた。


しかしソイツの冑は少々おかしなことになっていた。


頭頂部から顔前面にかけて、両断するように、細い、ヒレ(・・)のようなトサカがついているし、目の辺りはキバがズラリと並んだような、異様なデザインだ。


さらに、だ。


肩に担いだ武器はかなりおかしい。


騎士っつったら装備はだいたい魔法の触媒にもなる宝石を柄に仕込んだクレイモアかレイピア、または槍だ。


間違っても、そう間違ってもノコギリ(・・・・)なんざ装備しねえ。


それも、竜だって解体できそうなくらいデカいノコギリをだ。


しかし悲しいかな、俺はコイツを知っている。


いや、帝都から全世界、コイツを知らねえ奴なんざ居ねえ。


ソイツは大きく息を吸い呼吸を整えると、


「帝都守護騎士団『ラウンド・ナイツ』団長にして帝国護神剣が一柱、『皮剥ぎ』ドライだ。神妙に死ね」



一足で斬り込んできた。

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