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第1週第5回

SmileyAzazel&九条 蓮十朗 の二人がお送りする、テーマとジャンルを決めて一週間で完結を目指すリレー小説。

【ジャンル】ファンタジー 【テーマ】妖精

今回は【SmileyAzazel】がお送りします。


「さあ、ここから森に入りましょう」

ディルが木々の生い茂った森を指さす。

「ええ!?こんなところから入るの!?」

リドが露骨に嫌な顔を浮かべる。

「仕方ないじゃない、さあ行きましょう」

ガサガサと木々をかき分け森に踏み入れる。


「お二人とも、気をつけて。この森にはモリガミと呼ばれる古の獣の伝承が残っています」

「モリガミは森とともにあり、森を侵すものにはみな等しく裁きが下ると、この文献にはあります」

そう行ってディルは本のページをめくる、本の表紙には(世界妖精民話大全)とある。


「そ、そんなの子供だましのお伽話だろ…?」

リドが戦々恐々としてつぶやく。

「お伽話には子供を危険なものから遠ざける役割もあります。それだけのものがこの森にはあるのでしょう」

「脅さないでくれよぉ…」


三人が話をしながら歩き進んでいるとき


ヴォォォオオオオオオオオオオ!!!---


何かの獣の咆哮のような声が遥か背後から聞こえる。


「ひ!?」

ビクッとリドが体を硬直させる。


「急ぎましょう、日も傾きつつあります」

空を見上げると森を入るころには真上にあった太陽が西の方向に傾き、あたりが薄暗くなりつつある。




黙々と無我夢中に小走りで森をすすむ。




ふと気がつくとあたりは真っ暗になってしまっていた。

辺りからはガサガサと何かがうごめく音が聞こえる。


「ねぇ、ディル。チキルの村にはまだ着かないないのかしら?」

「地図によるとこのあたりなのですが…」

ディルが地図をひらげ辺りを見回す。

「オイラもう限界だよぉ」

ゼェゼェと息を上がらせているリド。


そのとき


ヴオオオオオオオオオオオオオ!!!

再び獣の咆哮が聞こえる。

夕方聞こえたときよりも距離が近づきつつあるようだ。


「急ぎましょう。方向はこちらで合っているはずです!」

「ひえええ!オイラ食べられたくないよ!」


森を駆け抜ける三人。


「見えました!チキルの村です!」

前方にパチパチと音を立てて燃える松明が見える。

その前にはどうやらチキルの村の者らしき守衛が立っている。

こちらに気づく守衛。

「こんな夜更けに何用だ」

こちらに対して構える守衛。

その顔は見知らぬ者に対する警戒心で満ちている。


守衛の男性に話しかけるディル。


「すいません、私達は旅の者なのですが今晩泊めていただける宿はありませんか?」

「お願いだよ!オイラ達さっきから何かに追われてるんだ!!」


「少し待て」

そういって男性は門をくぐりどこかへ入ってしまった。


「ひぃぃ!早く早く!」

リドは落ち着きのない様子でバタバタと走り回っている。


門がギギィと音を立てて開く。

開いた門の中に先ほどの男性が立っている。

「許可が下りた。旅人たちよ、今晩は村の宿で休んでいくといい」


「ありがとう、助かります」

「やったー!ありがとう!」

「ありがとうございます、助かりました」

各々男性に挨拶をかわす。


「この村の宿はあそこだ、そこで休ませてもらうといい」

木で作られた建物を指さす男性。

「ご親切にありがとうございます」

一礼するディル。

男性はスタスタと歩みをすすめる。持ち場に戻ったようだ。

再びギギィと音を立て門が閉じる。


「今日はもう夜も深いです、私達も宿で休ませてもらいましょう」

「助かったぁ、一時はどうなることかと思ったよ」

ホッと胸をなでおろすリド。

「あんたが用意してきた優秀アイテムとやらを使えばよかったんじゃないの?」

リドに対して悪態をついてやる。

「あ、忘れてた、えへへ…」

照れ笑いを浮かべるリド。

「まったく…」


宿屋にはいる。カウンターには体格の良いおばさんが立っている。

こちらにふと気づいたようで、笑顔で話しかけてくる。

「あら、こんな夜更けに可愛いお客さんたちだね!」

その笑顔を見ただけで、あたし自身にさっきまで満ちていた緊張感がほぐれていくのがわかる。


「すいません、3人で泊まらせていただきたいのですが」

「ああ!いいよ!その格好じゃあきっと大変な目にあったんだろう!ゆっくりして行きな!」


「ありがとうございます」

わたしは一礼をする。

「おばちゃん、ありがとう!」

満面の笑みでお礼を言うリド、そのとき


ぐぅぅぅぅぅぅ…

二人同時にお腹の音がなる。


「うう…、腹減った…」

「あたしも…」

二人してうなだれる。


「あっはっはっは!豪勢ものは作れないけどそれでもよければご馳走してあげるよ!」


「やったー!」

「やったー!」

リドと手をつなぎピョンピョンと小躍りしてしまう。


「あんたも食べるだろ?」

「お言葉に甘えさせて頂きます、ありがとうございます」

深々とお辞儀するディル。


一度部屋に荷物をおき、暖炉のついた暖かい広間で食事をさせてもらう。

クルミのパンに、豆のスープ。

おばさんに食べさせてもらったご飯はどれも美味しかった。

その料理たちはあたしの疲れを癒してくれるには十分だった。


食べ終わったあと、椅子に座ったままコクリコクリと居眠りをはじめてしまうリド。

きっとリドはリドなりに気を張っていたのだろう。


「リド、部屋に行って寝なさい」

「うぅん…、あと5分…グゥ…」

リドは一度寝てしまうと朝までずっと起きない。昔からそうだ。


「それじゃあ、今日は部屋でやすみましょう」

「翌朝は早い出発になります、十分に体を休めてください、ティッチ」

「うん、ありがとう」

「リドはわたしが部屋に連れていっておきます、おやすみなさい」

「よろしくね、おやすみなさい」


ギイギィと軋む階段を登って部屋に戻る。

「今日は疲れた…もう寝ましょう…」

ベッドに倒れこむ、フカフカのベッドが心地よい。

「スゥ…」

深い眠りに落ちていく。









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