また逢う日まで
さようなら また逢えたらいいね 君と。
「はぁ?オーストラリア??お前が??」
「そんな、驚かなくても。。。」
ここは、南にある小さな小さな田舎町。
同じ日本にある東京や大阪などの都会も、遠くて夢のようなのに、まさかそこよりも遠く、言葉も違い、憧れは持っていても、行くことはない、現実にはありえない本当の夢のような話。
そのことを、まさか身近なまさかありえないと思っていた人の口から聞かされたときの感情は
今までに無いものだった。
「だって。。。私もっといろんな人にここのいい所を知ってもらいたいんだ。日本だけじゃな くて、海外の人たちにも。だから、英語を勉強していろんな人がここに訪れても快適に過ご せるようにしたいんだ。」
彼女は、小さなときからここをたくさんの人が訪れて欲しいと願っていたそうだ。
俺は、彼女の夢を聞いたときそんなきれいごと叶うわけないと思った。
だが、そんな言葉を気になっている相手に言えるわけも無く。
俺と彼女は、中学校たらの付き合いだ。付き合っているといっても恋人ではない。
彼女の気持ちなど聞いたことも無く、俺を好きであって欲しいと祈る、ただの俺の片思い。
この話を聞いた3年後。君はオーストラリアでやっていけるだけの英語力をつけ、もともと頭の良かった君は、オーストラリアでも有名な高校に受かった。
「本当に行くんだ。。。」
「そんな悲しそうな顔しなくても、正月には帰ってくるって。」
「悲しそうな顔なんかしてねぇよ。でも、正月には帰ってくるんだ!」
「めっちゃ、笑顔なんですけど。。」
俺は、照れ笑いを浮かべた。
彼女も笑顔を浮かべていた。俺は、彼女が行くまで笑顔でいようと思った。怒っていたりしたら、もったいない。
とうとう彼女が、オーストラリアに旅立つ日がやってきた。
俺は、笑顔だった。
「また、正月な。」
「うん。何だ、泣いてくれないんだ??」
「バカヤロウ。男がそう簡単に泣けるかよ。」
「かっこいい!!」
「・・・」「・・・」
しばしの沈黙。もう、そろそろオーストラリア行きの受付が始まるはずだ。
「もう、行くね。」
「おう」
次会うことができるのは、来年の正月。
それまで、こいつと会うことは無い。
「おい」
思わず、呼び止めていた。
「ん?どうしたの??」
「・・・。なんでもない」
俺は、言えなかった。
彼女が、空港の奥にどんどん入っていく。
「ねぇ、私手紙書くから。あんたも書いてね。」
「お、おう」
それだけを言って、彼女はゲートをくぐって行った。
俺と彼女の最後の会話。
俺は、彼女の手紙を待っていた。
「それでは、次のニュースです。日本時間の今日15時、オーストラリアで大きな電車脱線事故がありました。その中に日本からの留学生も混じっていたようです。。。」
俺は、耳を疑った。
「日本からの留学生・・・」
まさか。。そんなことは無い。あいつがそう簡単に死ぬわけが無い。
「・・・・すでに死亡が確認されている日本人が分かりました。」
あいつなわけない。あいつなわけ無い。アイツナワケナイ。
「・・・・橋本鈴さん。以上です。・・・次のニュースです・・・」
俺は耳を疑った。橋本鈴 はしもとすず ハシモトスズ。。。
アイツと同じ名前。確か、あいつが行った場所からそんなに離れていない。
「そんなはずない。」
俺は、信じていなかった。おばさんから電話があるまでは。
「佑くん、鈴が死んじゃった。。。」
それだけ言うと、おばさんは泣き崩れた。
俺は、「・・・・わかりました。ありがとうございます。」
と言い、電話を切った。
鈴が死んだ すずが死んだ スズが死んだ。
もう鈴と会えない。俺の頬に温かい感触があった。俺は、泣いていた。
声を上げ、男とは思えないほど大きな声を上げ。
「男がそう簡単には泣けるかよ。」
お前にそう言ったよな。俺無理だ。お前ともう会えなくなると思うと泣けてくるよ。
お前にまだ何も言ってないのに、もう会えないなんて。。。
鈴の骨は、日本に帰ってきた。とっても小さくなって。
通夜が終わり、俺はおばさんに呼び止められた。
「オーストラリアのステイ先から送られてきた中に、これがあったから。。。」
おばさんから渡されたのは、俺宛の手紙だった。
「ありがとうございます」
俺は、家に帰ってきた。風呂に入り、飯を食べ、ベットに横になった。
俺の手の中には、おばさんからもらった手紙を握っていた。
癖のある鈴の字。
草野佑様
こんにちわ。佑、元気??
私は、ちょー元気!!
こっちでも、私は友達いっぱいできたよ。
ただ、勉強が難しくて。。。。。
なんてことない、向こうでの日常が書かれていた。
思わず、笑ってしまった。
まだ、アイツがそばにいる気がして。
あの笑顔を向けられている気がして。
最後の一行に、こんな言葉が書いてあった。
本当は、帰ったとき言おうと思ったんだけど、佑、ずっと好きでした。
返事は、帰ったときにでも。
俺の頬にまた同じ感触が。。。
鈴。俺もずっと好きだったよ。本当はお前の目の前で言いたかった。
大好きです。あなたのことが。
鈴。また逢えたらいいね。また出逢えたときに、また、同じように好きになれるかな。
たぶん、好きになると思うよ。
そのときは、今度こそ、今度こそ、恋人同士になりたい。
また、逢うときまで。さようなら鈴。 さようなら、俺の大好きな人。
読んでいただきありがとうございます。久しぶりの、
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