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雨男ときどき晴れ  作者: いちみんればにら
五月のこと
8/22

(6)~雲が近づいて~

~~ 

 今日は、五月三十一日。衝撃的な初登場から、1週はさんで(まあ、その辺の理由は前頁をみてほしい)ライタとそれなりに話すようになった。

 言っちゃ悪いが、ライタが生徒を投げ飛ばしてくれたせいで、クラスでの俺の立ち位置が変化した。いろいろ途中の経過を省いたけど。……結構格上?になってしまった。せっかく孤立しないように、話し相手をクラスで着実に増やしていたというのに。要するに人間関係がリセットされてしまったわけだ。俺はもう、ライタ以外に話し相手がいないというのか……

~~


 ここで俺の頭は叩かれる。これは晴花のだな。流れで分かる。

「私は話し相手には入ってないのか!」

「うう……そうだけど」

 叩かれたところがじんじんと痛む。素早い手首のスナップから繰り出される平手打ち。

 そういえば、晴花って卓球やってたっけ。関係ないか。まず、こんな冷静に分析している場合じゃない。なぜなら、

「……そういうことは、はっきり言うのね……」

 晴花が悲しそうな表情に変わったからだ。そういうつもりで言ったんじゃなくて。

「俺は、お前を、ただ」

 話し相手だと思っていないだけだ。もっと、とくべつな。

「ただクラスに入ってくる、邪魔者ってこと?」

 もう泣き出している彼女に、うまく言葉は伝わってないようだ。てか、こういう時にこそ、心を読むべきじゃないのか、晴花!?


「お前、涙もろくなったな」

 こう言ってから、少し間が空いた。そして、

「……え? 私、泣いてた!? な、何で!?」

 すぐに涙を拭う晴花。俺も正直よく分かりません。

「私、ちょっと前の記憶が無いんだけど。時雨、私を泣かすようなこと言った!?」

 記憶が飛んでる? また厄介なことを言い出したな。

「見当がつかない。俺も戸惑ってたんだよ」

 本当は若干見当ついてます。謝る機会を見失いました。すみません。こういう時は、心を読まれたくないんだが、

「何なの!? 一体私に何したの!?」

 ……これは、読まれましたな。仕方ない。

「どこまで、覚えてる?」

「う~、時雨の頭を叩いたら、私が泣いてた??」

 つまり、その間の記憶が無いと。そういうわけか。どうも都合のいい頭をしているようだな。俺の頭を叩いたことが泣いたことで正当化されている。

 ということは、こちらがものすごく一方的に恥ずかしい思いをしたってことか!

「説明するのも難しいんだが」

「いいから、言って!」

 いつにも増して必死だ。自分の知らないことがあるのが許せないのか。

「俺の、話し仲間の中に、お前がいないってこと……だろうか」

「そ、それはかなり刺さるわね……」

「でも、話し相手じゃないってのは、違う意味で言ったのであって!」

 俺も必死だ。何でこんなにむきになってるんだ? 俺は。

「うん、分かってる」

 まただ。また、彼女は”分かってる”と言った。前に聞いたのは、俺が悩んでた時だったか。そのときも、そして今も、何かを知ってるような顔をしていた。

 晴花が、時々分からない。いつもは、もっと単純なのに。

「ま、私はとてもすっきりしたから、安心して」

 まるで俺が慰められたみたいだ。何で。

「さっきと立場が逆なんですけど……」

「気にしない、気にしない!」

 急に機嫌がよくなったな。しかも、今回はチャイムが鳴る前に教室を去っていた。

 一体何があったんだ? 俺、良いことでも言ったのか? 疑問が残ったまま、今日の日が暮れる。


 明日から、六月が始まる。梅雨は明けるが、俺にとって油断はできない。六月には、俺の誕生日が待っている。俺の2番目に嫌いな時だ。ちなみに1番嫌いな時期は梅雨であることは言うまでもない、なのに言ってしまった。

 何て残念な俺。

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