(3)~雷落ちましたね。~
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俺は未だに晴花のことが気になっている。
なぜか、ここ数日晴れの日が続いている。前述した”気持ちの強さ”理論はこの件ではっきりと崩されてしまったのか。いいや、例外というものが存在するはずだ。例えば、”雨男”ならぬ”晴男”が俺の周りで暗躍しているとか。とすれば、近くにいる晴花が一番怪しい。じゃあ、晴れ女か?
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「……なぜに女に”?”を付けるかっ」
俺の頭に晴花の平手が当たる。
「痛っ、また見やがったな」
「ふむ、”覗き”や”盗み見”とは言わなくなったな。これからも精進したまえ」
「何様口調だ」
何を精進せよと? ……というか、一行目のことには触れないのか? 気づいていないのか?
「本当に見ないでくれよ。見られたくないことも書くことだってあるし」
「その辺は安心しなさい。どっちみち心で読んでるから」
「なっ……」
何だと。俺の心を読んだうえでその言動? 一体どういう意味だ? 駄目だ、言葉が一切浮かばない。
「…どうしたのよ、急に」
「俺の心読んだんだろ…」
そうだけど、と言う晴花の表情は不思議そうな顔をしている。
「だったら、ここ数日の俺がおかしいのも……」
「うん、分かってるよ」
だったら……。それは声には出なかった。その時だった。
「どおりゃあぁぁぁ!!!」
突然大声が聞こえた。直後に轟音が響く。廊下の方からか。
廊下に出ると、そこには何かが擦った跡があり、壁にうずくまる生徒と、その対称に位置する生徒がいた。
「はぁ……」
理解できたのは、一人が一人を向こう側に飛ばしたことだ。……えっ? 飛ばした!?
「ふざけんなよ!」
飛ばした、と思われる生徒が叫んだ。
「オレはともかく、このイズマを馬鹿にするのは許せねぇ!」
はっ? いずま? 何のことを言っているのかよく分からない。
「こいつは、毎日大事に育ててきた、オレの家族なんだ!!」
……お、おうぅ。よくもまあ、そんな気恥ずかしい台詞を言えたもんだ。大事に育ててきた家族って……誰?
「それを……メダカだと……!? こいつはメダカじゃなくグッピーなんだよ!!」
違いがよく分かりませんが。すみません。
俺が考えていることは、その生徒には伝わっていないと思う。……よく見たら、うちのクラスのやつじゃないか?
「謝れ! オレの大事なイズマに謝れ!」
おそらく壁にぶつけられた生徒には聞こえていないのに、そのクラスメイトは叫び続ける。
いや、壁の方まで近づいて、相手の襟を掴んで……ってまたやるつもりか!?
「さすがに、まずいよな……」
横で見ていた2、3人が呟いた。うん、まずいよな。
俺はそんな思いから……
「いい加減にしようか」
「ああ? 関係ねぇのは黙って見てろ!!」
「……黙って見てられないから止めに来たんだよ」
と、そこで俺の拳が唸る。彼は同じ壁に違う傷をつける。
……ということを思いついた。思いついただけだった。実際漫画みたいなことをしようとすると、後のことが大変そうだとか、まず俺のパンチは効くのか!? とか考えて、動けはしないんだな……。他に誰かやってくれないかな、と思っていると、
「何してるんだ!!」
よし来た!! ……と思ったら先生だった、という結末になります。
彼は教師にしっかり説教され、壁の修理代を払って、停学処分にでもなるのかな。教師にしっかり説教されるところまでは合っていた。しかし、その後の展開は、予想もつかないことになってしまった。
「君も関係者かい?」
突然こっちに声が向いた。本気で誰のことを言っているのか分からなかった。
「君のことだよ、おーい」
妙に胸騒ぎがした。……え? 俺? 何で? 気が付けば、俺は壁のすぐそばにいるではないか。なるほど、俺か。
「え、えぇぇぇぇぇ!?」
初めてこんな声出したなあ。
そういうわけで、彼らと共に、俺は校長室に行くことになったのであった。