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雨男ときどき晴れ  作者: いちみんればにら
五月のこと
5/22

(3)~雷落ちましたね。~

~~ 

 俺は未だに晴花のことが気になっている。

 なぜか、ここ数日晴れの日が続いている。前述した”気持ちの強さ”理論はこの件ではっきりと崩されてしまったのか。いいや、例外というものが存在するはずだ。例えば、”雨男”ならぬ”晴男”が俺の周りで暗躍しているとか。とすれば、近くにいる晴花が一番怪しい。じゃあ、晴れ女か?

~~


「……なぜに女に”?”を付けるかっ」

 俺の頭に晴花の平手が当たる。

「痛っ、また見やがったな」

「ふむ、”覗き”や”盗み見”とは言わなくなったな。これからも精進したまえ」

「何様口調だ」

 何を精進せよと? ……というか、一行目のことには触れないのか? 気づいていないのか?

「本当に見ないでくれよ。見られたくないことも書くことだってあるし」

「その辺は安心しなさい。どっちみち心で読んでるから」

「なっ……」

 何だと。俺の心を読んだうえでその言動? 一体どういう意味だ? 駄目だ、言葉が一切浮かばない。

「…どうしたのよ、急に」

「俺の心読んだんだろ…」

 そうだけど、と言う晴花の表情は不思議そうな顔をしている。

「だったら、ここ数日の俺がおかしいのも……」

「うん、分かってるよ」

 だったら……。それは声には出なかった。その時だった。

「どおりゃあぁぁぁ!!!」

 突然大声が聞こえた。直後に轟音が響く。廊下の方からか。


 廊下に出ると、そこには何かが擦った跡があり、壁にうずくまる生徒と、その対称に位置する生徒がいた。

「はぁ……」

 理解できたのは、一人が一人を向こう側に飛ばしたことだ。……えっ? 飛ばした!?

「ふざけんなよ!」

 飛ばした、と思われる生徒が叫んだ。

「オレはともかく、このイズマを馬鹿にするのは許せねぇ!」

 はっ? いずま? 何のことを言っているのかよく分からない。

「こいつは、毎日大事に育ててきた、オレの家族なんだ!!」

 ……お、おうぅ。よくもまあ、そんな気恥ずかしい台詞を言えたもんだ。大事に育ててきた家族って……誰?

「それを……メダカだと……!? こいつはメダカじゃなくグッピーなんだよ!!」

 違いがよく分かりませんが。すみません。


 俺が考えていることは、その生徒には伝わっていないと思う。……よく見たら、うちのクラスのやつじゃないか?


「謝れ! オレの大事なイズマに謝れ!」

 おそらく壁にぶつけられた生徒には聞こえていないのに、そのクラスメイトは叫び続ける。

 いや、壁の方まで近づいて、相手の襟を掴んで……ってまたやるつもりか!?

「さすがに、まずいよな……」

 横で見ていた2、3人が呟いた。うん、まずいよな。

 俺はそんな思いから……


「いい加減にしようか」

「ああ? 関係ねぇのは黙って見てろ!!」

「……黙って見てられないから止めに来たんだよ」

 と、そこで俺の拳が唸る。彼は同じ壁に違う傷をつける。


 ……ということを思いついた。思いついただけだった。実際漫画みたいなことをしようとすると、後のことが大変そうだとか、まず俺のパンチは効くのか!? とか考えて、動けはしないんだな……。他に誰かやってくれないかな、と思っていると、

「何してるんだ!!」

 よし来た!! ……と思ったら先生だった、という結末になります。


 彼は教師にしっかり説教され、壁の修理代を払って、停学処分にでもなるのかな。教師にしっかり説教されるところまでは合っていた。しかし、その後の展開は、予想もつかないことになってしまった。

「君も関係者かい?」

 突然こっちに声が向いた。本気で誰のことを言っているのか分からなかった。

「君のことだよ、おーい」

 妙に胸騒ぎがした。……え? 俺? 何で? 気が付けば、俺は壁のすぐそばにいるではないか。なるほど、俺か。

「え、えぇぇぇぇぇ!?」

 初めてこんな声出したなあ。


 そういうわけで、彼らと共に、俺は校長室に行くことになったのであった。

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