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雨男ときどき晴れ  作者: いちみんればにら
六月(下旬)のこと
19/22

(1)~とある男のとある朝の出来事 その一~

お久しぶりです。

六月(下旬)のことからは、ちょっと展開が……の予定です。

 朝、俺は目が覚めた。枕元の目覚まし時計はまだ五時を指していて、アラームを設定した時間は六時だったはずなので、なぜこんな時間に起きたのだろう、と不思議に思った。

 ともあれ、妙にすっきり起きることができたので、俺はベットでもぞもぞと動き出した。

 

 立ち上がって自室の机を見つめる。特にこれといった理由もなく、ただ眺めているだけだった。

 左手で巻き上がった髪の毛を伸ばし、右手で眉間をよく揉む。この仕草は、以前家族に「父親以上におっさん臭い」と吐き捨てられたものだ。内心ちょっと傷ついた。いや、激しく痛めつけられた。泣きたいとも思った。

 そういえば、最近は父さんとあまり話していない気がする。向こうが忙しいのもあるのだろうが、こちらから積極的になることも少ないので、お互い様といったところだ。


 ――――今日は、早めに学校に行こうかな。唐突に思いついた。


 二階の自室から居間のほうに降りると、誰もいなかった。五時じゃあ、誰も起きていないだろう。そう考えていたから、当然と言えば当然だった。

 四足テーブルに並べられていた菓子パンを無造作に二つ手に取り、早めの朝食にした。お昼の弁当を思い浮かべて(いつもは大体母親が用意してくれていたのだが、今日は早々に家を出たかったので)俺が自分で作ろうとパンを口でくわえながら弁当箱を探し始めた。さすがに勝手が悪い、どこに弁当箱があるのかさえ覚えていない。仕方がないので柔らかいプラスチックの箱を見つくろうことにした。

 さて、冷凍食品でも詰め込んで済ませようか。

 冷蔵庫を漁る。「自然解凍でふっくら! あらびきハンバーグ家庭用」は見つけたが、他が何も見当たらなかった。冷凍食品だけではバランスが悪い、手作りも入れてみようか。

 存外、俺は料理に苦手意識はなかった。手頃そうな玉ねぎを野菜室から取り出し、半分だけ切って残りはラップに包んでしまう。

 玉ねぎは、皮をむいてからみじん切りにする。若干ぎこちないのはご愛嬌。ボウルに卵を割って入れて、水気を取った玉ねぎと一緒に溶いていく。何か料理番組みたいだな、この説明。

 熱したフライパンに流し入れ、何だかんだあって卵焼きの完成。何だかんだの中身は、「焼く」しかないのだが、加減などはお好みでして頂きたい。……やっぱり料理本っぽいな。

 さっき掘り出した「ハンバーグ」は念のため電子レンジで温めてから弁当箱に入れる。卵焼きとギザギザのホイルで小分けするところには、抜かりがない。

 無意識にゆでていたほうれん草にしょうゆをかけると、おひたしが出来上がった。ちなみに、ほうれん草には水に溶けやすいビタミンなどが含まれており、ただのお湯でゆでる際は一寸の時間だけで十分なので、味を考えても「さっと湯通し」が最良だ。お味噌汁の場合は、そのままお湯を汁に使えるので心配ない。

 二段の弁当箱は、一段目が思ったより見栄えよく完成した。思いつきにしては、良くできたほうだと思う。

 このくらいでいいだろう。あとはご飯を詰めれば……………………。

 残念ながら炊飯器には、米粒一つ残っていなかった。要は、おかずしか用意できなかったのだ。

 食べかけの菓子パンをしっかり二つ食べ終えて、今日の朝食は途中の路線変更もあったが、無事終えることができた。


 気がつけば、居間の時計は五時三十分を示していた。あっという間だ。制服にも着替えていなかったので、すぐさまハンガーにかかったワイシャツを手に取る。今日は六月二十日、まだまだ衣替えの季節までは遠い。学ランを沈んだ気持ちで羽織る。


 六時十分前には家の外に出ていた。ここまで早く学校に行くのは小学校以来だ。大通りに出るまで、長い一本道を歩き進める。

 そのとき、後ろから女の子の声がした。まさか彼女も早く起きていたのだろうか……。だとしたら驚きだ。

 俺はおそるおそる後ろを振り返った……。

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