予知夢と奇妙な男
「うっ、うわっ!只のアヒルが喋ったぁ!」
気絶したジークが目を覚ますとアヒルはニヤリと笑ってジークを見下ろしていた。
「劇場はそこですか?劇場は町に有りますか?」アヒルが繰り返す。
「…劇場は何処ですか?」
訳の解らない夜の町、訳の解らない喋るアヒル、しかもジークが路地に目をやると何故か魔人ムシンまでが居て含み笑いを堪えていやがる…、
とりあえずジークはムシンに言われるがままに近くのレストランに入った。
「ここまでは来ないかな?…変だよ何で、何で只のアヒルが喋ったんだ??」
ジークが言って一人の小太りのぶかぶかのスーツを着た、黒髪の日本人の真っ黒い瞳の男がジークにビーフステーキを差し出した。
「お客さん、まあ私は店員ではありませんがね?」
ジークが右往左往していると魔人ムシンが話をきりだす。
「…ここはな、ジーク、この町は【悪夢】の中だ」
ジークがビーフステーキを一口も食べずに疑問を口に出す。
「え!じゃあこの町は【夢】の中なのかあ?」
「ってちょっと待て、夢の中ならアヒルが喋るのか?喋るもんなんか?」
小太りの男が言う。
「お客さん、ビーフステーキが冷めますよ」
ジークが空腹に耐えきれずビーフステーキを食べ始めた。
ムシンが話を続ける、
「勿論、悪夢の中と言うのは、只のアヒルが話す事は珍しくはない、安心しろ」
ジークは納得したようで、食べ終えて男とムシンに悪夢から出るやり方を問いただす。
ムシンが口を開く、
「厳密には、此処は悪夢の、更にジークが話し掛けられたアヒルは予知夢の現れのようだ、しかし…」
男が口を開く、
「私はほら、さっき空間の裂け目から迷い込みました、ムシンさんは?」
「いや、俺はジークを追い掛けて、魔道具である湯呑みが開けた扉から入ったんだよ」
ムシンが何故、アヒルが予知夢の現れだと解ったのかは知らない…気味が悪い奴だ、相変わらず、セフィーやカナタ爺さんがああならコイツはまたコイツだ…。
とかジークが考えた。
しかし小太りの男が言う。
「悪夢の中で死んだら元も子もない、あなた方がいくら優れた剣士でも、相手は悪夢ですからねえ?」
とりあえず三人は悪夢から抜け出すやり方を探し始めた。




