Day1
ふと、澪が言った。
「本当に良かったのかよ」
何度も聞いたそのセリフに、私もいつも通り返す。
「何が?」
「家を出てきたこと」
また、同じ回答。
「良いからここにいるんでしょ?てゆーか、それもう3回目ね」
実際に数えているわけではないからわからないが、もう3回は聞いた記憶がある。
「そんなに言ってたか?」
それ以上は言ってたと思うけど、ということは言わないであへる。
「うん。何、自覚ないわけ?」
澪は、おぉ、辛辣~。と言って、続ける。
「ま、それだけ咲のことを大事に思ってるってことだよ」
「そういうことにしておいてあげる。てゆーかそっちこそ家出てきて良かったの?彼女さんは?」
「いいんだよ。あいつとは…別れてきたから」
「え?あんなに仲良かったのに?!もったいない…」
「そうでもなきゃ咲のこと誘わねーよ、浮気になるし。そしていつまで続くかもわかんねえ俺の問題にあいつのこと巻き込むわけにはいかねえし?」
そう言った澪は、どこか強がっているように見えた。
「そう、なんだ…」
本当に、それでいいのかな。
そう思いながらも、この空気感を変えたくて少し話を変える。
「それにしても、びっくりだよねぇ。親がやたらと私たちをふたりきりにする理由がちょっとわかったかも」
辛そうにしている澪の方を見れず、前を向いて話す。
「そうだな。まあ、大失敗してるけど。実際今、『親友』になっちゃってるし」
「そうだねぇ…。てゆーか、そういうことはもっと早くに言えって話」
「言えてる。まあ、おれらがそれに素直に従うとは思えねえけどな」
確かに、という私の声にかぶせるようにつぶやいた澪の言葉を、私は聞き逃せなかった。
「会いてえなあ」
そう言った澪の瞳は、夜明け前の、反対向きの三日月を映していた。




