高校特殊戦
異世界侵攻
遠い時空の彼方、我々とは全く異なる世界に、強大な科学技術と魔法で知られる古代帝国があった。
この帝国は山々に囲まれた地に位置し、桃源郷のような風景は、これが貪欲な軍国主義帝国だとは想像もつかないほどであった。この国はすでに三千年以上もこの世界に存在しており、広大な領土を擁しながらも、貪欲な欲望が依然としてこの帝国を駆り立て、科学技術と強力な魔法を用いて絶え間なく外へ拡大を続けていた。
今、この国の王都で、皇帝はいつものように大臣たちと侵略計画を議論していた。しかし今回は、これまでとは少し様子が違っていた。
「陛下、『空間転移機』の準備が整いました」
「見事だ。さすが我がヴァルガード帝国の偉大な科学者よ」
ヴァルガード帝国の皇帝、ロイド二世はそう言いながら、杯の酒を一気に飲み干した。
「さあ、全ての兵士を集結させ、異地への遠征を開始する時だ」
「「「「「承知いたしました、陛下」」」」」
「軍隊の集結は準備済みか?」
「陛下、軍隊は既に集結しております。出撃のご命令をお待ちしております!」
「よし。」
そう言うと、ロイドは立ち上がり壇上に歩み出た。
「諸君、我が偉大なる帝国の戦士たちよ!今、諸君が遂行すべきは、我が帝国を強大にする聖戦である。敵に出会えば情けをかけるな。手にした武器で、世に我が偉大なる帝国を見せつけよ!」
「「「「「承知しました!」」」」」
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------場所は現代に戻り、日本の東京では人々がいつも通り街を歩いていた。彼らはこれから血みどろの戦いが始まることなど全く知らず、その平穏が突然現れた時空の裂け目によって破られるまで気づかなかった。
「あれは何だ?」
「わからない、撮影か?」
「いや、撮影でこんな時空の裂け目みたいなものが現れるなんてありえないだろ?」
「中から人が出てきたぞ!」
「え?マジかよ?」
その時、中世の鎧を身にまとった兵士たちが剣や刀を手に時空の裂け目から飛び出し、傍観者に向かって斬りかかった。
兵士に斬られて倒れた男を見て、人々はようやく異変に気づいた。
「おいおい…冗談だろ?」
「お前…お前たち、何やってんだ?」
「警察を呼べ!」
街の人々は一瞬でパニックに陥り、皆一様にこの地獄のような場所から逃げ出そうとした。しかし異世界から来た兵士たちは攻撃を止めず、むしろ通りすがりの人々を無差別に襲い続けた。
「「「武器を持った者、直ちに武器を捨てて伏せろ!!」」」
その時、MK18アサルトライフルを構えた警官隊が現場に駆けつけ、兵士たちを包囲して狙いを定めた。
「ちっ…邪魔者が現れたか」
「さて、どうする?」
「全員殺せばいい」
そう言うと、先頭の兵士が警察に向かって突進した。
「「「射撃!!!」」」
瞬間、街は密集した銃声に包まれ、異世界から来た兵士たちは次々と撃たれて倒れた。
「魔導兵出動!!」
その時、白いローブをまとった、修道女のような姿の三人が時空の裂け目から現れた。
「「「アミガ――爆!!!」」」
三つの巨大な火球が空高く舞い上がり、先ほど発砲した警察官たちめがけて直撃し、大爆発を引き起こした。
「早く…早く自衛隊に支援を要請しろ!」
「彼らはもう向かっている。もう少し持ちこたえてくれ」
「そんなことできるわけないだろ!」
警官たちが言い争う間にも火球は降り注ぎ続けたが…
「おい!撤退だ!早くしないと時空の裂け目が閉じられる!」
「ちっ…こんな時に…」
「構わない。ここはとっくに我々帝国の手中に落ちているのだから」
そう言うと、一行は全員時空の裂け目の中へ戻っていった。間もなく裂け目は消え、陸上自衛隊が到着し、後始末を始めた。
------------------------------------------------------------ ---------------------------------------------------
「…以上、東京襲撃事件に関する報告です」
役人は報告を終えると壇下へ降りた。
「ところで、この件は上層部へ報告済みか?」
襲撃事件発生後、防衛省と日本首相ら上層部は直ちに緊急会議を開いた。
会議終了後、防衛大臣が役人を呼び止めた。大臣が手を振って招くと、その役人は近づいてきた。
「はい、すでに天皇陛下と防衛大臣には報告済みです」
「そうか…それならよい」
「どうしました?なぜお尋ねになるのですか?」
「何でもない…しかし、すでに通知済みなら『あれ』を実行に移せる。急いで全員を集めろ、会議を始める」
「承知しました!」
こうして、国家の最高幹部だけが知る秘密会議が始まった。
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------数日後、私立北峰高等学校、二年B組の教室。
「おはよう~」
「おはよう~」
「またニュース見たの?」
「うん~」
「怖いよね、アメリカと中国まで襲撃されたって聞いたよ」
朝、教室では当然のように数日前に起きた襲撃事件の話題で持ちきりだった。
「おはよう~霧島くん、今日はすごく早いね!」
「仕方ないよ…朝早くから母さんに追い出されちゃったんだ」
そう言いながら、少年は次の授業で使う教科書を取り出した。
霧島迅は、学業成績がトップであるだけでなく、スポーツも何でもこなす。今学期は学級委員長を務め、さらに端正な顔立ちも相まって、人気ランキングでは全校トップ5に入るほどだった。
もう一人の少年も負けてはいなかった。陸上部のエース、天野空輝。成績は迅には及ばないものの、かなりの人気者だ。そんな二人が一緒にいると、当然多くの女子の視線を集めるが、彼らは気にしている様子もなく、相変わらずおしゃべりを続けていた。
ちなみに、迅は表向きは真面目そうに見えるが、実は生粋のオタクである。
「ああ、だってあんなことがあったからな…」
「だからって朝一番で俺を追い出す必要あるかよ!!!『早く出かけた方が安全だ』なんて…まったくのデタラメだ!!!」
「いいから、怒るなよ…」
空輝は迅をなだめながら、机の上に置かれた彼のノートを素早くめくった。
「お前のノート、整然としすぎじゃないか!!!」
「きれいに取らないと意味ないだろ!」
二人がいつものように雑談していると、ちょうど生徒会からの放送が始まった。
『生徒会よりお知らせです。全校生徒は講堂へ集合してください。繰り返します…』
この放送を聞いて、全校生徒は「ああ…今日は定例集会だった」と思い出し、講堂へ向かって集合した。
北峰学園では毎週金曜日に全校生徒を集めて集会を行う。
集会の目的は学校の重要事項の発表と指導である。
しかし今日の集会は以前とは明らかに違っていた。入口と出口には小銃を持った自衛隊員が立ち、さらに壇上に立っていたのは生徒会役員や校長ではなく自衛隊員だった。明らかに異常な雰囲気は、下座の生徒たちの間で噂話を巻き起こしていた。
「どうしたんだろう?」
「わからないけど、あれ自衛隊員じゃない?」
その時、スーツ姿の男性が壇上に上がった。
「静粛に」
彼の響き渡る声が、講堂に漂う恐怖と好奇の声を断ち切った。
「私は防衛省特殊襲撃対応班の班長、渡辺近次郎と申します。数日前に発生した襲撃事件については、皆さんも多少は耳にしているでしょう。この件については深く遺憾に存じます。政府は自衛隊を派遣して襲撃者を鎮圧しましたが、人数があまりにも多く、自衛隊の人員も不足していたため、多数の死傷者が出てしまいました。この事態を解決するため、新たな法令を公布します 『非常時学生特別動員令』を公布します。」
「「「えっ?」」」
この衝撃的な知らせに、大半の学生は一瞬反応できず反射的にツッコミを入れた。
「つまり具体的に、学生を戦場に送り込むってことですか?」
長い沈黙の後、一人の学生が手を挙げて質問した。
「その通りです。ただし訓練期間を設けるほか、政府が武器を提供します。」
渡邊は学生たちの不安を見透かすように、優しく答えながらなだめた。
「もちろん、政府は君たちへの恩恵も忘れません。数年後に行われる大学入学試験では、軍隊での成績優秀者は東京帝国大学に直接出願できます。さらに、訓練期間から毎月給与が支給され、その額は自衛隊員と同等です。」
「でも…戦場では人が死ぬじゃないですか…」
「その点は心配無用だ。我々が使用する近代兵器は敵に決して劣らない。さらに、各作戦には必ずベテラン自衛官が同行する」
「でも…」
『皆さんの意思に関わらず、命令は命令だ。明日から基礎検査と訓練を開始する。以上』
渡邊はそう叫ぶと、振り返りもせず講堂を出て行った。場に残った学生たちに反論の余地はなかった。
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------「だから…どうすればいいの?」
放課後、迅と空輝は二人で夕食を買いに行く約束をしていた。朝の集会での出来事を思い出し、空輝は思わず口にした。
「どうしようもないだろ、命令なんだから。ここまで来たんだから、思いっきりやっちまえよ!」
「待って、漫画読みすぎじゃないの!」
「俺がオタクだって知ってるだろ!」
「だからってやりすぎだろ!」
「そうか?今の状況、漫画の事件みたいだと思わないか?」
「もういい、お前は本当にオタクだな!」
二人はそんな会話を交わしながら駅へ向かい、別れてそれぞれの家へ帰った。
(さて…これからどう展開するんだろう…)
迅はそう考えながら家に入った。
「ただいま」
「あっ…兄ちゃん、生きてたんだ!」
声の主は迅の妹、霧島紫陽花だった。
「何言ってるんだ…俺に何かあった方がいいとか?」
「そんなことあるわけないでしょ、無事でよかったじゃない」
「じゃあありがとう…待って、いきなり飛びついてくるなよ!!」
「どうしたの?私嫌い?可愛い妹に飛びつかれるのって男子高生の夢じゃないの?」
「いや、そんなわけないけど…」
紫陽花は普段、漆黒のロングヘアを後ろでプリンセス風にお団子に結い、それに可愛らしい顔立ちも相まって、学校での地位と人気も非常に高く、校内で最も告白を断った回数が最多の女子だという噂もあった。
迅はツッコミを入れながら、どんどん近づいてくる妹を押し返した。
「あらまあ、冗談で言っただけなのに、どうして急に緊張しちゃうの?そういえば、兄貴のクラスはどの部隊に配属されたの?」
「特殊急襲隊みたいなところだったと思うよ」
その日の放課前、自衛隊はくじ引きで各クラスの所属部隊を決定していた。
主に戦闘部隊と後方支援部隊に分かれ、戦闘部隊はさらに一般歩兵連隊と迅が所属する特殊急襲隊に細分化されていた。
防衛省の説明によれば、特殊急襲隊は一般歩兵のように頻繁に戦闘任務に参加せず、主に特殊任務(敵情潜入や敵施設破壊など)を担当する。
想像と大きく異なり、この部隊について何も知らなかったため、迅はこれで安心すべきかどうかもわからなかった。
「そうか、じゃあ兄貴は結構ラッキーだな。少なくとも頻繁に戦場に行かなくて済むし」
「そうかな?僕はそうは思わないけど。ところで、君のクラスは?」
「僕たち一年生グループは後方支援と医療担当で、クラスとしては後方部隊ってとこかな」
「じゃあ、僕たち両方とも比較的安全ってことだね!」
「それは良かった!」
「そうだ…」
紫陽花は突然何かを思い出したように顔を上げた。
「死んじゃダメだよ」
「気をつけておくよ」
妹の言葉は冗談のように聞こえたが、シュンはその言葉に溢れるほどの気遣いを感じ取った。
そんな兄妹が和やかに会話を交わす中、異世界からの陰謀は依然として進行していた。--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------その時、世界各地の有名なランドマークに新たな時空の裂け目が出現した。しかし今回現れたのは異世界からの兵士ではなく、全身を白いローブで覆った一人の男だった。男は裂け目から現れると、世界各国の要人に向けて宣言した:
「 「ご列席の皆様、私はヴァルガード帝国五大主教の一人、セルトン・ティモンズと申します。本日ここに参りましたのは、この地が我が帝国の植民地となったことを宣言するためです。明日より植民軍を派遣し、植民活動を展開いたします。どうぞご期待ください。なお、私の職務が極めて多忙なため、ここに参っているのは分身に過ぎません。深くお詫び申し上げます」 」
三時間後、大司教が正式に侵略宣言を発表すると、世界各国の指導者たちがアメリカ国防総省に集結した。
「先ほど、侵略者が再び挑発にやって来た」
世界各国から集まった指導者たちは皆、険しい表情を浮かべていた。このような侵略は大量の犠牲者を生むだけでなく、多くの不必要な緊張を引き起こすからだ。
「では我々は今、どうすべきか?あの司教を名乗る野郎の言う通り、植民者たちはすぐにでも来る。急務は彼らを収容する場所を見つけることだ。決して都市内に入らせてはならない」
「こうしよう。最近オセアニアで海底火山が噴火し、いくつかの小島が新たに生まれた。我々は彼らと交渉できる。皆、どう思う?」
男がそう言うと、しばらく沈黙が流れた。
「了解」
「私も賛成だ」
「我々も異存ない」
最終的に全員がこの提案に合意し、一時的に待機することとなった。
翌日、異世界への門が再び開く。今回は兵士だけでなく、大量の飛竜や異獣が現れた。
「異界からの来訪者たちよ。私は今、あなたがたが立つこの地の指導者である。我々はあなたがたの侵入を阻止する力を持たない。ゆえに平和共存を望む。我々の南方には群島がある。まずはそちらに滞在していただきたい。ご意向はいかがだろうか?」
日本の代表は植民軍団の前に立ち、そう告げた。
しばらくの沈黙の後…
「承知した」
「では、移動についてだが…」
「その点は心配無用だ。我が軍は自力で移動する」
そう言い終えると、将軍は傍らの飛竜に飛び乗り、軍団を率いて南へと飛び去った。
日本代表はこの光景を見て安堵の息をつき、手の甲で額の汗を拭った。
「ふう…予想以上に順調だったな」
北峰学園に戻ると、今日は合宿初日だった。
「皆さん、初めまして。皆さんのクラスを担当する自衛隊教官、田中翔助と申します。よろしくお願いします。他に質問がなければ、授業を始めましょう」
教官はそう言うと、そのまま教壇に上がり、点呼板を手に授業を始めた。
「本日の訓練内容は主に体力強化が中心で…」
教官が教壇で説明を続けるのを聞きながら、迅が最初に思ったのは…
(眠くて仕方ない!)
特に理由があるわけではなく、単に昨日読書を終えた後、追いかけていたアニメ映画の第2期が制作されていることを知り、真剣に映画を観た後、気が向いて第1期をもう一度観直してしまったのだ。
だから別に何も起きてない、純粋に自業自得だ。
結果、今は全く授業に集中できず、うつらうつら状態。
「だからさ…おい!霧島、聞いてるのかよ!もう寝てるじゃないか!」
「うーん…わっ!本当に寝そう!」
「いや、君の様子を見ると、昨日全然寝てないだろ!」
隣の席の同級生はそう言いながら迅をからかい、意味のない会話を続けた。
「ああ、昨日ね…」
「はあ…また深夜アニメかよ!」
「はっ…私を理解する翔沢君も!」
「そんなこと言ってる場合かよ…」
「いいか、夜に何をしていようと、授業中に寝るなんて許されないぞ!」
教官は呆れた表情でツッコミを入れ、教壇に戻って授業を続けた。
「よし、それではグループ分けをしよう。」
約5分後、教官がほぼ全ての説明を終えるとそう言った。
「どうやって分けるの?」
「とにかくコンピューターで抽選しよう!」
「それで行こう」
教官はコンピューターの前へ移動し操作を始め、抽選結果を読み上げた。
「では10人ずつグループ分けしよう… 第一班:霧島 迅、翔澤 斗真、天野 空輝、水野 海斗、三条 悠介、大森 優作、葉山 陽介、雪村 理沙、黒川 琴音、結城 穂香、第二班…」
五分後、班分けを終えた一同は教官から兵科配分の議論を指示された。
「おっ、また君と同じ組か!今回もよろしくね!」
空輝は伸びをしながら、迅の席へと歩み寄った。
空輝が言う『また君と同じ組』というのは、彼が頻繁に迅と同じ組に選ばれるためだ。空輝は迅と友達だと思っているが(空輝の自己認識)、迅はいつもこれを「因縁」だと言っている。
「「「「「じゃあ、こっちもよろしくお願いします。」」 」」」
「「はい、承知しました!」」
迅は返事をしながら、教官から渡されたばかりの用紙を受け取った。
「さて…まずは隊長を選ぼう。立候補者は?」
「いや、選ぶ必要なんてないよ。君に決まりだ!迅!」
「え?なんで?はあ、わかったよ。」
迅はそう言うと、自分の名前を『隊長』欄に記入した。
「え、口ではそう言ってるけど、本当はやりたかったんでしょ?」
「いや、そんなことない」
迅は白目をむいてツッコミを入れた後、再び用紙に視線を戻した。
「では次は兵科の割り当て…ああ、うちの組の女子3人は後方支援班にしよう。異論ある?」
「「「ない」」」
「よし、それ以外の人は歩兵小隊だ。問題ないか?」
「それでいいよ」
「全員グループ分けは終わったか?じゃあ全員、グラウンドへ移動!起立!」
その後、大組はグラウンドに移動し、今日の訓練を開始した。予想通り、訓練内容は非常にシンプルで、普段の体育の授業の体力トレーニングを強化版にしたようなもの。簡単に言えば、全員をぐったりさせるまで追い込むというものだった。
「今日の内容は──グラウンドを十周走れ!!!」
「「「「「えっ???」」」」」
北峰学園のグラウンドは珍しい600メートルトラックだった。
ちなみに、迅は様々なスポーツに精通しており、表向きは完璧に見えるが、実は弱点があった。そう、彼の弱点は走ることだった。
なぜか、迅は幼い頃から走ることが苦手だった。体力の問題ではなく、走った後に息が切れるのが嫌だったのだ。その息切れ感が、彼にとっては命取りになるほどだった。
そしてこの日、皆は本当にグラウンドを10周走り、迅は倒れてしまった。
その後も、異常なほど過酷(非人道的)な体力トレーニングが1週間続いた…
「迅、おはよう。元気なさそうだな」
「ああ、訓練のせいだよ。毎日体力が限界を超えちゃって…」
迅は今日も変わらず、空輝と地体駅で待ち合わせ、学校へ向かった。
人生で経験したことのない訓練を1週間続けた後、迅は疲れ切った表情で空輝と話しつつ教室へ入った。
「みんな、おはよう…わあっ!!!」
空輝が突然叫んだのには理由があった。それは、全員の机の上にライフル銃と弾薬箱が置かれていたからだ。
「これ何の銃だよ?」
……一方、迅は机の上に置かれた武器に強い興味を示していた。
「……見たところ、これは米軍のM4 CQBRだろう…」
「おい!いい加減にしろよ…」
空輝が迅がライフルを分解しようとするのを止めようとしたその時、教官が入ってきた。
「おはよう…おや、今日はみんな早めに来たな。では今日の訓練内容の説明を始めよう!」
そう言うと教官は教壇に上がり、説明を始めた:
「机の上のライフルと弾薬はみんな見ただろう?ご覧の通り、今週は近接戦闘射撃(CQB)訓練を行います。机の上のライフルは実銃ですが、弾丸はFX弾と呼ばれる訓練用ペイント弾です。見た目は実弾に似ていますが、訓練専用のものです。これから行う訓練ではこの弾丸を使用します」
教官は説明しながら、机の上の弾丸を手に取って見せた。
「……これから行う訓練は『殺人ハウス訓練』と呼ばれ、狭い空間での銃撃戦訓練です。皆さんはこの小銃でC班と対戦し、一発でも撃たれたら即座に戦死となります。」
「おぉ、それなら結構簡単そうだな」
「撃たれると結構痛いんだよ」
「それなら真剣にやらなきゃダメだな」
「では皆さん、まず弾丸をマガジンに装填してください!作業開始!」
教官の指示で、皆は弾丸をマガジンに押し込み始めた。動作自体は単純だが、マガジンのバネはかなり硬く、一人当たり10個ずつ配られたため、想像以上に手間取った。
「うっ…指が痛い…」
「こんなに難しいとは思わなかった…」
文句を言いながらも弾を押し込み、5分後ようやく全員完了した。
「よし、全員終わったか? では『殺人屋』へ向かう。乗車後はライフルに弾倉を装着せず、全ての銃の安全装置を解除すること。わかったか?」
「「「「「了解しました!!!」」」」 」
一時間後、二年B組は自衛隊の訓練場に到着した。C組はとっくに待機していた。
B組の生徒たちが近づいてくると、彼らはすぐに話しかけてきた。
「やっと来たか、待ってたぞ」
「後で俺たちにやられちゃダメだぜ」
「いい、騒ぐな。戦術協議、5分間開始」
教官が言うと、一同は集まって議論を始めた。
「よし…相手の戦術が読めないから、まずは一室ずつ捜索していく」
迅は手にした小銃を弄びながら言った。
「その戦術に賛成だ。ただし、少なくとも狙撃手は2名必要だと思う」
優作は考えながら戦術を提案した。
「「じゃあ、僕たち二人が狙撃手を担当しよう」 」
発言したのは、これまで意見を述べていなかった二人の女性だった。
「君たち二人で大丈夫か?」
「「大丈夫ですよ。二人で祭りの射的ゲームをやっても満点取れるくらいですから。」」
(いや…なんで同時に言うんだよ?)
「では二人にお願いする!! これは君たち専用のM21狙撃銃だ。」
「「はい。ありがとう。」」
(違うって言ったのに、なぜ同時に言うんだ?テレパシーか?双子なのか?すごく怖い!!!)
心の中で大げさにツッコミを入れても無駄だと悟り、彼は虚ろな目で遠くを見つめた。
(わあ!今日の月はすごく丸いね!すごい!)
-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------五分後、戦術協議を終えた二つの班が向かい合って立った。
「よし、問題なければ三分後に開始する。C班はA区へ、B班はB区へ。笛の合図で開始だ。どちらか一方が全滅したら終了。行動開始!」
「B班の皆さん、一緒に頑張りましょう~行くぞ!」
そう言うと、迅は小隊を率いてBエリアへ向かった。
「さっきの戦術を繰り返す。黒川と結城は先に二階の制高点に狙撃陣地を構築し、他の者は火力支援を担当する。二人が設置を終えたら、残りは二人一組で、一人が前方を、もう一人が後方を担当する。壁に沿って歩かず、敵に遭遇したら即座に撃破する。以上だ。何か分からない者はいるか?」
「「「「「ありません!!!」」」」」
その時、哨音が鳴り響き、作戦が正式に開始された。
迅が合図を送ると、2階へ突撃した狙撃手2名を除く全員が、C班の位置に向けて小銃を構えて発砲した。相手も反撃として散発的な銃撃を返してきた。
迅たちが2つ目の弾倉を交換した直後、胸元の無線機から「制高点を制圧した」との連絡が入ると、迅は手を振って他の隊員に進撃を指示した。
「翔沢と水野、お前たちは機関銃を使っているから、後方の火力支援はお前に任せる!」
「「了解!」」
大半は小銃や狙撃銃を使用していたが、火力の分散を図るため、各班には必ず2名がM60のような軽機関銃を担当していた。
「空輝、優作、悠介、空輝は俺と、優作と悠介は二人一組で、前進開始!」
「「了解!」」
四人は互いにカバーし合いながら前進し、激しい射撃の末、ようやく境界地域に到達した。
『黒川、結城、我々は境界に到着した。カバーの準備を』
『了解』
ドンッ。
突然の銃声に迅は驚いて即座に銃を構えた。その時、狙った角から青いマーカーの付着した学生が両手を上げて現れた。
C組の東城だ。
『殲滅1名。』
その時、無線から声が届いた。黒川が撃ったらしい。
『よくやった、続行せよ。』
迅は無線で感謝の意を伝えた後、再び仲間と共に前進した。
その後、迅の小隊は勢いよく突き進み、角を曲がったところで三人を立て続けに撃破した。順調に進んでいると思ったその時、隣の仲間が銃弾に撃たれた。
「うわっ!!痛い!」
「おい!大丈夫か?」
「…怪我はなさそうだけど、めちゃくちゃ痛い…」
「とにかく無事なら良かった。お前は一旦下がって休んでろ、残りは俺たちが勝つから」
「頑張れ」
悠介はそう言うと戦場を離れ、迅と優作の二人が作戦を続行することになった。
『…翔沢と水野…12時方向。』
『了解。』
瞬間、密集した銃声が響き渡った。
それはM60軽機関銃が火力を注ぎ込む音だった。
B班の機関銃陣地から、一本一本の火の舌が噴き出す。
この攻撃でさらに四、五人が撃たれて降伏した。水野の射撃が終わる頃にはB班の隊員も続々と到着し、迅は部下を率いて敵陣に突入。残存敵を殲滅し戦闘を終結させた。
敵はこの猛攻に完全に不意を突かれ、抵抗すらできなかった。
「…くそっ…」
-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------「ああ、本当に熱い戦いだったな。」
「ああ、でも俺たち、危ないところだったぜ。」
戦闘を終えたB組第一班は、第二班と第三班を待つため、すぐには帰らず、残って話していた。
「ああ…もし後で問題なければ、俺は先に帰るよ。」
「ああ、いいよ。」
ほとんどのメンバーは残るつもりだったが、早く帰りたい者もいた。迅がその一人だった。
「親と仲が悪いんじゃないの?なんでそんなに早く帰るんだ?」
悠介はスポーツドリンクを飲み干しながら、疑わしげな目で迅を見た。
「妹が待ってるんだ!」
迅の照れくさそうでイライラした返答に、多くの者が目を見開いた。その理由は…
「「「「「妹コンめ!!!」」」」」
「仕方ないだろ?迅の妹は超可愛いんだから」
「あ…」
…結果、大騒ぎになった。
皆が和やかに話している間も、事件は続いていた。
南方のオセアニア諸島、異世界からの軍隊が駐屯する地。
将軍たちが作戦会議を開いていた。
「我々がここに来て一ヶ月以上が経つが、ほとんどここに留まり、何の行動も起こしていない。そろそろ周辺の小島を占領すべきだと考えるが、諸君はどう思う?」
「大将軍の意見に賛成だ。私が自ら五千の兵を率いて向かおう」
「では決まりだ。明日出発」
「「「承知しました!!」」」
翌日、異世界軍はオセアニアの複数の島々を制圧すると、数名の将軍が飛竜に跨り世界へ宣戦布告した。
二つの世界の大戦がついに幕を開けた。
「あの侵略軍はオセアニアの島々を次々と占領している。我々も出兵して討伐すべき時だ」
二日後、世界各国の指導者たちが会議を開いた。
「どうすれば?各国軍隊は自国の戦線処理で手一杯だ。どうやって出撃するんだ?」
議論が白熱する中、これまで沈黙を守っていた日本代表が口を開いた。
「学生軍を派遣しましょう」
「「「「「学生軍?それは何だ?」」」」」
各代表が疑問を呈した。
「我が国が訓練した学生たちです。学生ではありますが、その実力は私が保証します」
「まさか学生を…」
「非常時です。やむを得ない措置です」
外国代表が異議を唱えようとした瞬間、日本代表の発言が遮った。
「日本の対応は正しいと思います」
「それは…」
「私も日本側の方法に賛成です」
「えっ…」
同盟国に背後から裏切られたドイツ代表は明らかに緊張した。
「私も賛成だ」
「は?」
「では具体的にどうする?」
最後にアメリカ代表がドイツ代表の言葉を遮り、議論が始まった。
「学生軍に敵陣深く潜入させ、施設破壊と要員捕獲を実行させることを提案する」
「我が国は移動用ヘリコプターを提供できる」
「我が国はミサイル駆逐艦を当該区域に展開し、離脱時の支援を行う」
「ああ…我々は…」
こうして、世界各国の支援により作戦は成立した。
命令が届いたのは、午前5時12分。
臨時指揮教室の照明はまだ完全には点灯しておらず、プロジェクタースクリーンが明るくなった瞬間、全員が反射的に顔を上げた。防衛省将校の顔が白い壁に映し出され、その口調は冷静で形式的だったが、どんな警報よりも重圧感があった。
「諸君、これから実戦命令を伝達する」
空気が一瞬で張り詰めた。
「異世界勢力が神奈川沿岸に先遣部隊の上陸を完了し、臨時魔導通信拠点を構築した」
「正規自衛隊は正面で交戦中であり、短時間での機動部隊の展開は不可能」
「よって、学生混成部隊に側面突入作戦を実行せよ」
画面が切り替わり、占領された港湾施設の構造が表示された。複雑な構造で視界は狭かった。
霧島迅は地図を見ながら、瞬時に一つの考えが浮かんだ――
ここは新人に適していない。
「霧島迅、本作戦の臨時指揮官に任命する」
迅の呼吸が一瞬止まった。
背後で誰かが軽く息を呑む音が聞こえ、自分の鼓動が異様に鮮明に響いているのがわかった。
拒否する理由は山ほどあった。
経験不足、判断力の未知数、精神的耐性の欠如。
だが、彼は一言も口にできなかった。
「……了解」
それは自信に満ちた返答ではなく、ただ現実を受け入れただけだった。
-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------準備段階は想像以上に早く終わった。
実弾装填完了、通信チャンネルテスト終了、医療班と爆破班が位置を再確認。迅は手順を繰り返し確認しながら、無理に声を落ち着かせた。
「各班、交戦規則を覚えろ」
「脅威のみを処理し、追撃は避ける」
「我々は殲滅部隊ではない」
彼はよく分かっていた。この言葉は同時に自分自身への戒めでもあるのだと。
輸送艇が航行する間、誰も口を開かなかった。
装備が船体の揺れに合わせてかすかにぶつかり合う音だけが響く。
迅は船室の隅に座り、自分の手を見つめていた。
指はまだ震えていた。
突然、昨夜妹から届いたメッセージを思い出した――
「兄さん、無理しないでね」
今その言葉は、息が詰まるほど重く響いた。
上陸時の衝撃は予想以上に激しかった。
ハッチが開いた瞬間、冷たい風が火薬と焦げた土の匂いを伴って襲いかかる。遠くから非人間的な咆哮が低く連続して響き、まるで共鳴しているようだった。
「艇を離脱!前進を援護せよ!」
迅は反射的に命令を下した。
最初の魔導兵が現れた時、距離は予想以上に近かった。
青く流れる魔力の紋様が鎧の表面を這い、まるで人間の武器を嘲笑っているようだった。
「射撃!」
弾丸が命中し、鎧が砕け散った。
敵が倒れた瞬間、迅は胃がぎゅっと締め付けられるのを感じた。
これはシミュレーション映像ではない。
訓練用のダミーでもない。
彼の命令によって倒れた存在だ。
「隊形を保て、前進を続けろ!」
彼は自らを止めることを許さなかった。
通信ノードが施設中央に聳え立ち、地面から生えた異物のように見えた。魔力反応が電子機器を妨害し、通信ノイズが絶え間なく発生している。
「爆破班、作業位置へ移動せよ。」
カウントダウン開始。
その時、側面警戒から敵接近の報告が入った。
「防御陣形、射撃角度を制限せよ!」
迅は陣形を調整し、自ら防線の隙間を埋めた。反動で腕が痺れ、耳鳴りが世界を遠く感じさせた。
通信チャンネルでは、震える声もあれば、言葉が乱れる者もいた。
それでも命令は実行された。
「三秒!」
「二!」
「一!」
爆発音が全てを飲み込んだ。
通信ノードが崩壊した瞬間、周囲の魔導反応は切断されたかのように消え去った。
迅は地面に崩れ落ち、撤退命令が確認されるまで自分がずっと息を止めていたことに気づかなかった。
安全地帯に戻った時、空はすでに明るくなっていた。
彼は一人ずつ人数を確認した。
誰も欠けていなかった。
この結果に、彼はほとんど現実とは思えなかった。
夜更け、迅はキャンプの端に一人で座り、まだ完全に消え去っていない戦場を見つめていた。
通信機が振動した。
「兄貴、ニュースで任務成功って言ってたよ」
彼はその文字を長い間見つめた。
最後に返した言葉はたった一言だった。
「ああ」
迅は知っていた。もう以前のように、試験や日常の心配だけをして過ごせる生活には戻れないと。
今日、彼は初めて「指揮官」という言葉の重みを理解した。
そしてその重みは、今まさに彼の肩にのしかかり始めたばかりだった。
無




