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私の進化は、まだ終わっていない

世界の理が静かに揺らぎ始めていた。

女神と悪魔――その絆は、ただの契約ではなく、運命そのものに刻まれた印。

天音は迷いながらも、自らの“創造”という真の力に気づき始める。

そして、その覚醒は、新たな進化と別れの予兆でもあった――。

街を離れるために走り抜ける天音。

さっきの気づきがまだ頭の中で渦巻いていて、彼女は静かな場所を探していた。

やがて、木々の間にぽっかりと開けた小さな草原にたどり着くと、足を止めた。


「エレノア、魔王の復活はいつになるの?」

焦った声でそう尋ねる。


足元の影が波打ち、そこから優雅にエレノアが現れた。

「ちょうど四ヶ月後でございます、女神様。」


天音はしっかりと頷いた。

「そう。じゃあ、任務を与えるわ。」

その声は一層低く、重みを帯びていた。

「王都に潜入して、勇者たちの動きを見張ってきて。」


エレノアは深く頭を下げたが、その声音にはわずかなためらいが混じっていた。

「いつ、再びあなたのもとへ戻ればよいのでしょうか?」


天音は少し目をそらした。

「まだわからない…もしかしたら、もう二度と会えないかもしれない。

神々が私を消す気なら、ね。」


エレノアの唇に、かすかな笑みが浮かんだ。

「それは…私を守ろうとしておられるのですね。」


天音は思わず頬を赤らめ、慌てて顔を背けた。

「まあ…そんなところよ。でも、私はまだ終わってない。

きっとまた会えるはず。」


その言葉に、エレノアはゆっくりと顔を上げた。

微笑みはいつになく柔らかく、空気が温かくなるようだった。

天音は思わず息をのむ――

冷たく無表情なはずのこの悪魔が、まるで光を纏ったように美しく見えた。


「それでは――さようなら、愛しき女神様。」

その声は静かで、確信に満ちていた。


彼女の姿は影の中に溶けていった。

いつもよりもゆっくりと、どこか名残惜しそうに。


> 「やはり、あの方は神というより…人の心を持つ存在なのかもしれない。」

それがエレノアの最後の思念だった。




天音は空を見上げた。

「今、神眼に記録したわ。あとで彼女の過去を見よう。

でも今は――」


指先でキーボードを出現させ、素早く入力した。


→【統合AI生成】


次の瞬間、頭の中に女性の声が響いた。


> 『ごきげんよう、天音様。私に名をお与えください。』




天音は目を見開いた。

「成功した…!やっぱり、私は既存のスキルを“コピー”してるんじゃない、

“創り出してる”んだ!」


胸の奥が高鳴る。

「つまり、スキルを発現させるには――効果を正確に“想像”しなきゃいけない。

私の力の根源は“想像力”そのもの…!」


腕を組み、少し考える。

「さて、名前はどうしようかな……ネーミングセンスないんだよね、私。」


> 『提案:アリア。

キーボードで入力してください。』




天音はくすりと笑った。

「自分で提案までしてくれるなんて優秀ね。アリア、いい名前。採用!」


> 『名前登録完了。ステータスシステム解析を開始――

進行度:0.02%…4.25%…19.34%…55.01%…99.98%…100%。』




「早い!優秀だね。じゃあ、質問にも全部答えられる?」


> 『はい。この世界に存在する全ての既知データを保有しています。

ただし、神々に関する正確な情報は存在しません。伝承と聖典の記録のみです。』




「十分よ。ふふ…これで思う存分、新しいスキルを作り放題ね!」



---


スキル【神筆の女神】がレベル3に上昇。


> 新スキル解放:神眼・第一門。




スキル【神筆の女神】がレベル5に上昇。


> 新スキル解放:神眼・第三段階。




スキル【神筆の女神】がレベル7に上昇。


> レベル上限+1。




「よし、全部9999に書き換えてやる!」


スキル【神筆の女神】がレベル9に上昇。


> 新スキル解放:神眼・最終段階。




スキル【神筆の女神】がレベル10に到達。


> 新スキル解放:絶対神眼。

『習得スキル数200到達。進化開始――』




天音は瞬きをした。

「……は? 進化って、ちょっと待って――!」


> 『“神筆の女神”が限界に達しました。

進化を開始します――』


彼女の肌が、ほのかな輝きを放ちはじめた。

それは次第に強まり、やがて眩い黄金の光に包まれる。

髪が光の中で舞い、まるで内なる太陽に燃やされているかのようだった。

鼓動が鳴るたびに、神聖な鐘の音のような響きが広がり、

その余韻が黄金の粒子となって周囲の闇を払っていく。


「……進化、完了。」



---


名前: 天音セイレン

種族: 下位女神

職業: 未設定

レベル: ??

HP: 100/100

MP: 200/200

力: 6

敏捷: 7

耐久: 4

魔力: 0

幸運: 1

固有スキル: 【神筆の女神 – レベル10】

効果: この世界に存在する、または潜在するすべてのスキルを「書く」「書き換える」ことができる。

ボーナス: 【絶対神眼】 – 世界規模のすべての領域にアクセス可能(ただし、原初位階には未到達)。

状態: 異常

潜在能力: 無限

追加スキル: ……



---


手に入れた力を見つめながら、天音はしばらく言葉を失っていた。

「……下位女神? でも、神ってどうやって分類されてるの?」


> 『記録によると、最上位には“絶対神”、次に“至高神”、その下に“上位神”、“下位神”、そして“半神”が存在します。進化の記述は一切ありません。』




胸の奥で、複雑な感情が渦巻いた。

鼓動が速くなり、口元が自然とほころぶ。

時折こみ上げる笑いを抑えきれない。


「すごい……私だけが、この神の序列を超えて進化できる存在ってわけね。」


> 『ドメイン(領域)を選択してください。』




「ちょっと待って。まず、“領域”って何?

それと、“絶対神眼”は何ができるの?」


> 『領域とは、この世界の存在そのものを支配する根源的な概念です。

各神は一つの領域を持ち、それを通して現実を己の本質に従って再構築できます。』




「……つまり、究極兵器ってことね。」

天音は空を見上げ、呆れたように息をついた。


> 『絶対神眼は、抽象的な概念を具現化することが可能です。

たとえば、“遠くを見たい”と望めば、世界を越えてでも観測できるようになります。』




「なるほど……つまり、過去が見えるのも、私が無意識にそう望んだから。」

彼女は手を空へ伸ばし、風に金色の髪を揺らした。

穏やかな笑みが浮かぶ。


「もう悲しくない……これが、“前を向く”ってことなのね……ユキヒラ。」


> 『現在、選択可能な領域は――時間・空間・魂・現実・叡智・精神・力です。』




「ふぅん……迷うわね。空間を選べば、元の世界に戻れるかも……

いや、ダメ。神たちがそれを許すはずがない。」


> 『提案:叡智の領域を選択してください。』




「ちょっと! 作ったばっかりなのに、もう賢ぶるの?

もし私より頭良くなったら困るんだけど!」

天音はぷくっと頬を膨らませた。


しばらく考え込んだ末、彼女は決断した。


> 『おめでとうございます。魂の領域を取得しました。

新たなスキルツリーを開放――精神的本質に関わる技術専用領域です。』




「完璧……これでもう、誰にも負けない。」

口元に不敵な笑みを浮かべながら、彼女は新しいスキルを書き始めた。



---


「ところで、この序列……聖典に書かれてたの?」


> 『いいえ。』




「じゃあ、伝説とか?」


> 『それも違います。』




天音は眉をひそめ、頬を紅潮させた。

「じゃあ、神の情報はどこから来たのよ!?」


> 『私のシステムを拡張し、“絶対神眼”と部分的に接続しました。

その結果、宇宙規模――いえ、“多元宇宙的叡智”の断片へアクセスすることができました。』




「……た、多元宇宙……?」

天音の顔が引きつる。

次の瞬間、膝から崩れ落ち、両手を天に突き上げた。


「うわあああああ! なんで叡智選ばなかったのよおおお!!!」


そして、力なく腕を下ろし、苦笑した。

「……あの領域なら、私の“答え”も見つかったのかもしれないのに。」



---


そのとき、森の奥から二十体のゴブリンが現れた。

他より五倍は大きい、リーダー格を先頭にして。


天音はゆっくりと立ち上がり、黄金の瞳を細める。

「ちょうどいい。実験台が来たみたいね。」


新しいウィンドウを開き、指を走らせる。


→【魂の刃・追加】


魂の領域スキル:

→【魂の刃 – レベル ??】

効果: 目に見えぬ刃で対象の魂そのものを切り裂く。


> 【魂の刃 – 発動】




彼女は手をかざし、微笑んだ。


「必殺技には、決め台詞が必要よね。」

そして静かに――だが確かな威厳を込めて言い放った。


「その存在、我が手により浄化せよ。」


見えない波動が草原を走り抜けた。

次の瞬間、ゴブリンたちは倒れた。

傷ひとつないまま、魂だけが消滅していた。

――たった一撃で。

静寂の中、黄金の光がゆっくりと消えていく。

天音は空を見上げ、微笑んだ。

――この力は、誰かを傷つけるためではない。

失われた魂を救うためにあるのだと。


新たに得た“魂の領域”は、彼女をさらなる高みへと導くだろう。

だが、その光の先に待つものが、果たして救いなのか、それとも――。

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