とあるスナックママの証言
「寂しくなるなあ」
そういう常連客を見て、なんとも言えない気持ちになった。
正直に言うとたかしさんは厄介な客だった。
自分より年下だとわかるとすぐに横柄な態度を取ったり、誰彼構わず説教したり。
お客さんにはたかしさんがいるとわかったらすぐに帰ってしまう人もいた。
そんな人だったが、居合わせた人に奢ったりもして一部の人にはとても慕われていた。
それだけだったら気前がいいというだけで終わるがそうはいかなかった。その代金をツケてくれというのだ。
金がないなら奢るな、と叫びたかったがそれはなんとか抑えた。
「クレジットカード使えますよ」
そういうと、「早く言えよ」と呟きながらクレジットカードを出してきたので本当に使えるかどうか心配しつつ決済した。
クレジットカード使えるように環境を整えておいてよかったとこの時、心底思った。
しかし、別の店でツケをして支払いが滞っているという噂をしきりに耳にしていたので油断はできなかった。
周囲の噂を聞いているとほぼ毎日夜は外に出て飲み歩いていたようだった。飲み歩くのが好きでも毎日のようにそんなことしていたら金はすぐにそこをついてしまう。ツケにしていたのは苦し紛れの金策だったのかもしれないと考えてしまう。
そんな苦し紛れの金策をして飲み歩いていた。そう考えるとなんだか可哀想だった。
たかしさんからは家族の話を聞かなかったから家族がいるのかいないのかもわからなかった。
でも毎晩の飲み歩きを注意されたとか、酒を控えるように言われているなんてことも言っていなかった。身近に言うような人がいないのか、ただ単に聞いていないだけなのか。
勝手な想像だが、家族からは愛想を尽かされたんだろうと思った。毎日のように飲み歩いて、金を使っていく様は浪費をしているという印象しか持てなかった。ツケを頼まれてからはお金持っているという印象はキレイさっぱりなくなっていたから余計に。
たかしさんにこれ以上関わることはないだろう。そう思って少し安心している私は薄情なのかもしれない。
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