第3話 陰毛多すぎ温泉
日本の上空、大分県付近で旋回。
乗っているのは、源泉至上主義の源泉かけ流し星からやってきた男女2人の源泉かけ流し星人。上月湯菜と部下である珍湯太郎。日本の源泉使用状況をパトロール中。
おんせん県である大分県の別府。湯けむりの上がるエリアから山側へと向かう。
「あの露天風呂、広くて気持ちよさそうなだけでなくて、足元湧出だわ、見て!」
白濁の泥湯の混浴露天風呂。ワニっぽい男性客がすでに膨らんだ前を隠してうろうろしている。
「底に泥が溜まっていて、泥パックもできるみたいですよ。足元湧出の源泉で泥パックは素晴らしい体験ですね。今回は、私たちもじっくり入浴しませんか?」
湯太郎に言われて、嬉しそうに入浴セットを用意しだした湯菜だったが、急に手が止まる。
「どこ見てんのよ!あんた、そんなことで、源泉かけ流しパトロールができると思ってんの!」
「建物が昭和から時が止まっているのがいけないんですか?でも、その無骨なコンクリートの古い建物がまた何とも言えないわびしさを感じさせられて良いと思いませんか?あちこち傷んだままだったり、掃除が出来ていないとか、いろいろありますが、でも、このぎりぎり許されるかどうかの不潔感がたまりません。ああ、興奮してきました。」
湯菜がボタンに手をかけようとしながら、
「ここの源泉はもともと地獄なのよ。大地からの恵みを直接味わえる素晴らしい温泉なのに、泥湯の底が陰毛だらけじゃない!!!しかも、女性を見たがるワニ、女性に見せたがるワニばかり。ここはワニ陰毛地獄だわ!あのワニなんて、股間が膨らんでるのが丸わかりじゃない。ワニは野放し、掃除も適当で陰毛だらけ、めちゃくちゃよ。だんだん、興奮してきた、この陰毛かけ流し風呂、成敗してやろうか。」
と湯菜が赤いボタンに手を触れようとした。
「やめてください!そのボタンは最終手段、足元湧出が途切れてしまいます。」
湯太郎が湯菜の手を握り、必死に訴えた。
「ここの陰毛は、我々の手に負える量ではありません。クチコミも不潔感とワニに関するマイナス評価だらけ。でも、このすばらしい泥湯に罪はないんです。」
「私は艦長よ。いえ、艦長兼マン長の私の言うことが聞けないの?ワニだらけで陰毛まみれで温泉と言えるの?温泉なのに、縮れた毛だらけ、温泉の良さもわからないワニはストリップに行くべきだわ、源泉に失礼だわ。こんなところに温泉を供給する必要なんてない。止めてやるわ!!!」
だんだん興奮してきた湯菜を見て、湯太郎も興奮してきた。
「水虫治療の常連さんもいるし、88湯めぐりの温泉マニアとか珍スポマニアが来ていて、良い雰囲気じゃないですか。止めないでください。そんなに言われると、あのワニの股間のように、僕のポールがテントを張ってくるじゃないですか。」
湯太郎が湯菜の手を取り、テントの中へ滑りこませると、激しく上下に擦り始めた。
こうして、大分で貴重な足元湧出の泥湯の源泉は守られた。