“錯覚(さっかく)”
~前回までのあらすじ~
紅彼の“超力・無い物ねだり”の力によって復活した燻楽、無太、与志高の3人。報告会に東京支部のメンバーが顔を連ねる中、南己は冷静を装うも様々な感情が爆発する。
後日、南己、紅彼、燻楽の3人が依頼を受け現場に着く。その場所は地下鉄通り魔殺人事件の現場であり、奇妙なメッセージが残されていた…。
~登場人物~
・名井南己
・庵藤紅彼
・亜駆童燻楽
南己「ここは使われなくなった地下通路
数年前から閉鎖されている曰く付きの場所だ」
燻楽「それは良いですけど…
なんで3人なんですか?」
南己「紅彼の試用期間はまだ終わっていない
それに燻楽の指導も兼ねてだ
千駄ヶ谷での反省を活かして
どこまでやれるか見たい」
燻楽「まいいですが…
この年上後輩使えるんですか?」
紅彼「ちょっ
年上後輩って!
名前で呼べよ名前で!」
燻楽「うるせ後輩」
紅彼「あー!?」
燻楽「やんのかー?」
南己「はいはい喧嘩は仕事が終わってから
とりあえず場所の説明をする
ここは地下鉄通り魔殺人事件が起きた現場だ
死者数は”1”
両親を庇って小学5年生の男児が命落とした
犯人はその場の人間に取り押さえれ逮捕
勾留中に脱獄」
紅彼「脱獄?
今の時代そんなことできんのかよ」
南己「脱獄から4日後
この場所で切断された犯人の左腕が発見された」
燻楽「胸糞悪りぃったらありゃしねぇ」
南己「事件後肝試しに来た大学生が相当数行方不明になっている」
紅彼「相当数?
何人?」
南己「”80人”だ」
紅彼「げっ!?」
燻楽「……バカ野郎が」
南己「行方不明者は多数いるものの
先人はちゃんと事件解決のヒントを残してるみたいだ」
紅彼「なんて?」
南己「”引き返せ”」
閉鎖用に作った鉄の扉の中に入る。
◯地下通路・0番出口
紅彼「引き返せ…
一体なんだろうな
さっぱりわからん」
燻楽「バカ丸出しだな」
紅彼「テメェいちいちうるせェぞ!」
南己「落ち着け」
しばらく歩くがまた同じ場所に来る。
南己M「0番…」
紅彼「ナァ南己
腹減った」
燻楽「次無駄なこと喋ったらぶっ飛ばす」
紅彼「やってみろよ
燻楽ちゃん」
「バシュッ!」
燻楽が紅彼に殴りかかる。
燻楽「……」
紅彼「ほんとに殴ってきたね」
喧嘩モード突入する2人。
南己「チョップ」
「ドカッ!」
2人の頭にチョップする南己。
南己「2人とも仕事中だ
しっかりしなさい」
燻楽「はい」
紅彼「はい」
またしばらく歩くも同じ場所に戻ってきてしまう。
南己「これは…」
燻楽「南己さん」
南己「あぁ
ループしてるみたいだね」
紅彼「ん?
ナァナァ」
2人とも紅彼の指さしてる方に向く。
紅彼「この求人のお姉さん
さっきより目が怖くない?」
南己「紅彼…お前もしかして」
紅彼「?」
南己「視野広いな」
紅彼「観察眼がいいだけヨ!」
紅彼、ツッコむ。
燻楽「2人とも
マジな話場所がループしてる以外
異変なんて起きなかったのにこれは明らかにおかしい
それに先人の謎メッセージ ”引き返せ”
ひょっとすると…」
真剣な顔をする南己、紅彼。
燻楽「”異変が起きたら引き返せ”って事じゃないか?」
来た道を引き返す3人。
◯地下通路・1番出口
南己「1番だ」
紅彼「だな」
燻楽「ウン」
紅彼「”異変が起きたら引き返す”
これを繰り返せば解決って事?」
南己「それで間違いなさそうだが
ここに潜む暗魂の鎮静には」
進むと狐の面をした人間が立っている。
南己「現れたな」
紅彼「っ!
暗魂か!!」
南己「待て」
南己M「動かない…」
南己「2人とも
一旦戻るぞ」
紅彼「なんでだ!
暗魂がいるのに!」
燻楽「良いから戻るぞ後輩!!」
◯地下通路・2番出口
南己「2番だ」
紅彼「おう」
燻楽「ウン」
「スタスタスタ…」
紅彼「あれさっきの狐男
いなくなってる」
燻楽「…….ん?
この音は…
南己さん!後輩!
走れ!!!」
大きな赤い波が押し寄せてくる。
紅彼「おおおおいこれ引き返しても止まらないんじゃないのか!!」
南己「とにかく走れー!!」
地下通路・3番出口
必死に走る3人。
南己「うおおおー!!」
紅彼「知恵捨〜!」
燻楽「死にたくねぇ〜!!!」
目の前に双子のリーマンが現れる。
南己「はっ」
紅彼「はっ」
燻楽「はっ」
3人M「これは…異変?」
南己「戻るぞー!」
紅彼「知知知恵捨〜!」
燻楽「まだ女の子とキスもしてねぇぞォ〜!!!」
真っ黒のリーマンが3人に襲いかかる。
南己「はっ」
紅彼「はっ」
燻楽「はっ」
目の前が真っ暗になる。気がついたら0番に戻り3人棒立ちになっている。
◯地下通路・0番出口
目が覚める3人。
南己「ん…んん…」
紅彼「何が…起きてんだ」
燻楽「……」
南己M「怪異…だよな」
自分の顔を叩く。
紅彼「ブルブルブル!
なんだよこれ!
訳わかんねー!!」
燻楽「くそっ……いつまで続くんだ」
南己「とにかく異変が来るまで前に進むしかなさそうだな」
紅彼「でもよ
さっきのは異変があったけど元に戻れなかったよな」
南己「確かに」
燻楽「……」
燻楽M「”異変” “引き返せ”
ルールに準じているとは言え
いま発生したバグは一体…」
南己「燻楽…なんか思いついたか?」
燻楽「いえ…ただこの理不尽な現象が気がかりで」
進む3人
◯地下通路・8番出口
燻楽「……」
燻楽M「8番…出口
さっきまで振り出しに戻ってたはず」
男児「う”っ!
ぶふぇっ!!!」
驚愕する3人。
南己「うッ!」
紅彼「これは!!」
燻楽「!!!」
男児「に…逃げ…て
パパとママ…
お兄ちゃん達……
逃げ…」
燻楽が立ち尽くしてしまう。
南己と紅彼は引き返そうとする。
南己「燻楽!!」
紅彼「早く!!!」