異世界ノンビリ出来ないスローライフ
山も落ちも無い話。
恒例のナーロッパ世界。
恒例の勇者召喚。
恒例の無能判定。
恒例の王城追放。
しかし、追放された男はタダでは転ばなかった。
サラリーマン時代、ブラック職場に我慢の限界がきて証拠を揃えて労基に駆け込み、未払い残業代と慰謝料をもぎ取った過去があるのだ。
今回も召喚された直後、転んだ振りをして召喚陣に設置してあった宝玉をかすめ取っていた。
中古服屋で着ていた服を中古服三着と交換。
なお靴は交換しない模様。
質屋で商人の振りして宝玉を現金化。
宿屋で宿泊。
料亭の不味い飯に辟易し、翌日は料亭の飯を食べたのだが不味い。
不味いという事は調理法を商人か料理人に売れば金になるのではないかと考える。
市場で市場調査する事にした。
食材と調味料、調理器具を視て回った後、紙(なぜ在るかは気にしないで)とペンを購入。
宿屋で調理法を二十枚、調理器具図案十枚を書き上げる。
手土産も紹介状も無しで商人に会えないし信用してもらえないので、何か一品作って会いにいく事に。
宿屋の女将に、新しい料理一品の調理法を教えるので調理場を使わせてくれ、商人への紹介状を書いてくれとお願いする。
一品作って旦那と女将に試食してもらった所、舌に適う事となり、紹介状を書いてもらえる。
冷めても美味しい料理を一品作って岡持ちみたいな箱に入れ、紹介状を持って商会へ行く。
料理は二十枚の内の一品だ。
商会の窓口で店員に紹介状を見せて、責任者に取次ぎをお願いする。
運良くすんなりと責任者に面会する事が出来た。
挨拶をして話を聞くと、なんとこの商会の副会頭。
無理をして面会したことを詫び、新たな商材としてを売り込みを掛ける。
そして準備した料理を見せ、毒が入ってないとばかりに試食し、副会頭に進める。
食した副会頭、味を褒め、取引に応じる。
男は調理法と調理器具の権利を二十年後に商会に譲渡する代わりに次の条件を了承してもらう。
・農村に移住できるように商会が手配する
・移住が決まるまでの生活費は商会が負担する
・移住後は権利使用料を毎月農村まで持参する
・持参する時は行商人と同行する事(兼任でも良い)
・農村で特産品が生産したら商会に優先的に卸す
ブラック職場で過労死寸前まで逝った男は、農業でのんびりするんだと決心していたのだ。
なんだかんだで二十日後に農村に移住出来る様になる。
馬に荷車を引かせた行商人と一緒に農村に行く。
経由する村々で行商しながら目的の村にたどり着く。
村人に村長を呼び出してもらい、村長に挨拶。
行商人が来たという事で、ぞくぞく集まる村人たち。
村長から紹介された男を見て、村人たちは余所者を歓迎しない雰囲気。
そこで行商人が商品を披露し、売り込みを行う。
塩は容器一杯120トンセだよと。
しかし現金取引なので、現金を持たない村人は手が出ない。
その時、その場で男は村長に月120トンセで世話役を付けて欲しいとお願いする。
村長はピンと来て村人の一人を指名する。
その世話役の奥さんに世話料として120トンセを前金として支払う。
次に麦を120トンセ分買いたいのだが誰か売ってくれないだろうか。お願いする。
村長は別の村人の一人を紹介する。
こうして麦、野菜、藁、薪、油などを売ってもらう様にお願いし、村長は次々と村人を指名し、その奥さんに代金120トンセを支払う。
そして最後に紹介手数料を村長に支払う。
奥さんたちは受け取った代金で商品を買う。
村長の案内で住む家屋に世話役と一緒に移動。
そこで村の決まりを色々聞いていると、次々に奥さんたちがやって来て、先ほど買った麦、野菜などを置いていく。
奥さんたちの反応は、最初の頃とは異なり友好的に見える。
どうやらこの村でやっていけそうだ。
◇◇◇ ◇◇◇
日の出とともに起床して家の裏にある農地を耕しつつ、行商人が来訪する度に使用料を受け取り、村人たちから必要な食料や薪を購入し、日没とともに就寝する生活を送っていた。
そんなこんなで一年が過ぎた頃、村長が一人の男性と二人の女性を伴ってやってきた。
隣の隣の家の両親と、女の子はたしか次女だったはず、と思っていると、村長が
「この村にやって来て一年、もう村の一員だ。村の一員としてこの娘と結婚したらどうか」と言ってきた。
提案の体をなしているが、強制だろう。
恐らく村に利益をもたらしてくれる私を、結婚でこの村に縛り付けたいのだろう。
一応知らない仲ではないので了承し、その日から一緒に住むことになった。
さて困った。
自分一人なら十九年間は使用料で何とかなるが、家族が出来たとなると、そうは行かない。
何か作って生活しなければならない。
かといって、農業は向いていない事は判っている。
ならば木工品か?
いや手先は不器用な方だから無理か。
むむむ。
そうだ、ウィスキーでも作ってみるか。
うまい酒を飲むと泣くバーテンダーの漫画本で、取り合えずウィスキーの作り方は知っている。
幸いこの村でもエールは作っているので、原料は困らない。
村長にはウィスキー製造の事は話さない。
村長指示の元、村を挙げて作ったが失敗したなんてなったら目も当てられない。
まずは小さくても良いから試作品を作って事後承諾だ。
商会に無理を言って銅板と金槌と金切り鋏を入手してもらい、蒸留器を自作する事にした。
まず木型を作る。
玉ねぎの下半分を切った形の木型その一と、玉ねぎを縦に八分割した形の木型その二。
木型その一を銅板の中央において裏返し、周囲を金槌でトンテンカンと叩いていく。
が、上手くいかない。
叩きすぎて穴を開ける、凸部分が中央から外れるで失敗だ。
トンテンカンと音を立てるのに疑問に思った元世話役がやってくる。
こういうのを作りたいんだと図解すると、貸せといって金槌を奪って銅板を叩き始める。
自分とは違ってなんか綺麗に凸部分が出来て行く。
そう言うと
「当然だ、俺は鍛冶もやっているんだからな」と自慢げに返事が帰ってきた。
「所でこれは何なんだ?」という疑問に、蒸留器を作ってもらっている手前、正直に酒を作る道具だと答える。
すると俄然張り切る元世話役。
あぁ、飲ん兵衛なんだな~。
二日掛けて蒸留器の底部分が出来た。
綺麗な玉ねぎの形をしている。
上部分にエールを入れる穴を作り、蓋をする。
次は実動作確認だ。
上窓から水を入れて水漏れしない事を確認し、上窓から杓子で水を掬って水を抜く。
竈は作って乾燥させてあったので、蒸留器にかまどを置き、水を入れる。
火入れをし、煙突部分から蒸気が出てくる。
成功だ。
今度は管の部分を作る。
ラッパの様にすそ野を広げ、その先は一定の太さの管を作る。
作る時に長すぎると折れるので幾つかに分割。
そして管の先はグルグルと回した銅管だ。
それらを一つ一つ繋ぎ合わせる毎に実動作して蒸気漏れがない事を確認する。
最後にグルグル銅管を接続し、実動作、管の先から水がぽたぽたと落ちてくる。
成功だ。
ここでやっと村長に話を付けに行く。
新しい酒を造る迷惑は掛けない金はこちらで準備すると言い、村長の許可をもらい、エール蔵元から小さな樽一つを買い取る。
許可を出す村長の顔は引きつっていたが。
蔵元はエールから新しい酒を造るという言葉に興味を覚え、一緒に樽運びを手伝う。
蒸留器にエールを入れ、火入れだ。
エールをつぎ足しながら凡そ半日。
が、失敗。
火力が強すぎて底を焦がしてしまう。
出来た蒸留エールもアルコール感がない。
蒸留器の滞留物を取り出して掃除してその日は終了。
エール蔵元からもう一つ樽を買い取って再度挑戦。
エールをつぎ足しながら凡そ半日、前回よりも弱火で火番をする。
出てきた蒸留エールを全て空き樽に入れるが、元の量の半分もない。
三人で味見、アルコール感は有るものの、雑味が強い。
蒸留器の滞留物を取り出して掃除してその日は終了。
翌日、蒸留器に蒸留エールを入れて二回目の蒸留開始。
蒸留エールをつぎ足しながら凡そ半日、強火力になってエールを焦げ付かせない様に火番をする。
出てきた蒸留エールを全て空き樽に入れるが、一回目の量の半分もない。
三人で味見、完全にアルコールだが、風味が無い。
蒸留器の滞留物を取り出して掃除して終了。
蒸留エールを保存用の樽に入れる。
今までコツコツと貯めていたお金を使って手のひらサイズの樽を作ってもらっていた。
樽に適した木材が何なのかは判らないので、三種類の木でそれぞれ三個ずつだ。
三個ずつあるのは、一年置きに試飲する為だ。
樽の内側は焼き入れをしておいた。
保存場所は家の土を掘って半地下にし、そこに樽を設置して木床で塞ぐ。
二人には来年試飲をする事、味が良ければまたウィスキー作りをする事を告げて解散。
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ここまで書いて疲れたので終了。




