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その25


 二週間はあっという間に過ぎ去った。緑仙先輩とクレア、タケルの三人に連絡を取りつつ、鈴音に心配かけないように僕は気丈(きじょう)に振る舞った。


 一週間が経過する頃、緑仙先輩とクレアからの連絡が途絶(とだ)えた。タケルから彼女達のスマホ壊れたらしいと連絡があり、以降はタケルと連絡をとっている。


 久しぶりの学園に着いた僕は、スマホを開いてため息をつく。


『タケル:学園だと大変なことになってるから、ちょっとマズいかも……』


 詳しいことを聞いてみても、言葉を濁されて、その目で確認してほしいと返ってくる。


 昇降口(しょうこうぐち)で靴を履き替え、廊下を歩き、教室の扉を開ける。


「鈴音の反応から、なんとなくは察しているが……こうして現実に直面すると、かなり心にくるな」


 周囲からの反応の半分は、()。であった。僕の存在に目を向けず道端に捨てられた石のような扱いをされているのを感じる。主に女子生徒からだ。


 男子生徒は、(おび)えているようすを明らかに感じる。僕にではない。周囲の視線に過剰に反応しているのだ。


 猥談を話そうと近づくと、距離を遠ざけられたり、耳を塞がれたり、発狂したり。僕が口を開くたび、周囲の女子の視線が集まり、男子生徒はひたすらに僕との会話を(こば)む。


 そんななか、教室の扉が開いて、ハッキリと濃い(くま)をつくったタケルが現れた。


「おはよう、タケル!」


 あくまで謹慎前(きんしんまえ)と同じテンションで話しかけ、タケルは下手くそな作り笑いを浮かべ、


「お、お、おはよう……は、蜂……」

「どうしたそんなに緊張して、もっと元気だせよな」


 タケルは強張ったようすでぎこちない動作。僕が(はげ)ますように背中をパシッと軽く叩くと、「ぴゃッ!」と、タケルが声を漏らす。


 僕はなんてことない笑顔を浮かべると、タケルは頬を赤らめつつ満足に微笑む。


 共に自席へと行き、HRまでいつも通りの雑談こと猥談で時間を過ごす。

 久しぶりに話すことに対する高揚感(こうようかん)と、周囲に左右されないという意思から、普段以上に声を荒げ、笑いながら話した。


 HRのチャイムが鳴り、皆が席に着く。担任の海苔が教室に来て、業務報告を行う。


 僕の方をチラチラと確認するように見てくる海苔。彼は手を微かに震わせ、恐怖心の混じった表情を浮かべ、


「……それでは、以上でHRを終わりにします」


 と言って、早々に教室から立ち去った。


 てっきり僕のことをネチネチと(さらし)あげて、激しい口論でも勃発(ぼっぱつ)すると思ったのだが、拍子抜けである。


 問題児だとしても勢い任せに話したのを後悔しているのだろう。しかも、話した僕に殴られ、机を叩き割って脅すとは想像もつかなかったはずだ。


 午前中の授業の準備をしていると、気難しそうな顔をしたクレアがスマホ片手に僕とタケルに近づいてきた。


「あのさ、スマホを買い変えたんだけど、ちょっと設定に苦戦してるの。暇なら手伝ってくれない」


 僕はタケルに目配せをして、


「そういえば、タケルって電子機器に強いんだよ」

「たしかにスマホが壊れたのも教えてくれたわよね」


 クレアと僕がタケルに視線を向けると、彼は照れたようすで手をモジモジと動かす。


「そ、そういうことだったら、ま、任せてよ……そういえば、蜂と同じ機種だから、ちょっと貸してくれない?」

「お? 別に構わないが、検索履歴(けんさくりれき)は見ない方が賢明だ。タケルでも衝撃が強すぎるのがいくつかあるからな」

「も、もうっ」と照れるタケル。「し、衝撃ッ⁉」と驚くクレア。


 僕はまだ時間があるため、二人を残してトイレに向かう。教室を出る際、何故か誰かから「チっ」と舌打ちをされた気がして振り返る。


 だが、誰がやったかは分からない。気にせず教室を出る。


 膀胱(ぼうこう)の液体を出し切り、スッキリした僕は手を拭きながら廊下を歩いていた。


 鼻歌スキップで意気揚々になっていると、刹那、数人の女子生徒が目の前に現れ、道を塞ぐ。


「ちょっと調子に乗りすぎたよね」「いい加減にしたら」「そろそろ大人しくなろうな」と、各々が僕に対する不満をぶつけてくる。


 その中の一人に、以前、罰則中にぶつかってしまった女子生徒がいた。彼女は親の仇を見るかのような復讐心の(こも)った瞳で、僕を睨んでいる。


 僕は彼女達から数歩離れると、全力で駆けより――甲高い悲鳴――咄嗟に屈んだ女子生徒の上を飛び越えて、教室へと戻る。


「やれやれ、これは思ったよりも深刻な問題かもしれないな」


 頭を抱えながら席に戻ると、クレアが幸せそうな笑みを浮かべスマホを自由自在に操っている。(なめ)らかな指の動きは目にも止まらぬ速さだ。


「……タケル、何したの?」

「え? 別にちょっと設定を変更して、くれあちゃんが操作しやすいように改造しただけだよ」


 なんてこともないように言うタケル。僕が感心していると一限目のチャイムが鳴る。クレアが機嫌よく自席へと着席した。


 いつも通りの授業が始まり、45分という時間が過ぎて、終了する。

 15分の小休憩。僕がタケルに話しかけようとして、クラスメイトが壁を作るかのように僕を取り囲んだ。


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