その14
二人いる内の一人、茶髪パーマの男がクレアに話しかけ、
「そこに座っているお嬢さん、もしかして帰れなくて困っているのかな?」
性欲を隠そうともせず、気持ち悪い笑顔を浮かべた。
もう一人、眼鏡をかけた細身の青年も話しかける。
「よかったらさ、俺らが送っていてあげるよ」
眼鏡をクイっと上げて、不敵に頬を吊り上げる。
座っているクレアは二人を見上げると、ため息をつき眉間にシワを寄せる。
「まずアンタらは一体誰? 警察だろうが善人だろうが、話しかけたら名乗るのが普通じゃん」
あくまで上から目線。ぶっきらぼうに言い放つ。
ク、クレアってば、僕が自己紹介する前には変態と呼んでいただろう。
ギャルという人種は皆こんなに肝が据わっているのだろうか……。
僕が感心していると、二人の男は顔を強張らせた。
恐らく反発されているとは、思っていなかったのだろう。
こめかみをピクピクと動かして、感情を面に出さないように踏ん張っている。
パーマの男は、腰を曲げてクレアと同じ視線になる。
「そ、そういえばそうだったな。オレの名前は太郎、この細くて眼鏡かけてるのが森田だ」
眼鏡の男は再びクイっとして、パーマの男と同様に腰を曲げて視線を合わせる。
見つめてくる二人の男に、クレアは面倒そうに言った。
「……クレア」
「へ~クレアちゃんか、可愛い名前だね。オレらと一緒に楽しいことしようよ」
「こんな時間に一人でいたら危ないでしょ。遊び終わったら家まで送っていてあげるからさ」
二人の男が欲望の籠った声色で、クレアへと手を差し伸べる。
さすがにクレアを馬鹿にしすぎだ。容姿はロリでも、中身はギャル(自称)である。
こんなのに騙されてついていくような馬鹿では……。
「え? マジで! 普通にお願いしたいんだけど」とクレアが満面の笑みで言う。
訂正。やっぱりバカでした。
普段からギャル風の口調で話しているけど、中身は純情な女の子ってか⁉
まあクラスの奴らも、大人ぶるクレアが可愛いって話していたし。
僕が頭を抱えていると、クレアはパーマの男の手を掴むと立ち上がる。
安心したような表情を浮かべるクレアだが、違和感に気づいて顔を強張らせる。
「ねぇ、この手離してくれない? 立ち上がったんだし、邪魔なんだけど」
クレアが手をぶんぶんと激しく動かすが、パーマの男は手を離さない。
「こら、話しなさいってば! 聞いてるの⁉」
「……いい加減黙らないと、この場で犯すぞこのクソメスが!」
パーマの男の顔が真っ赤になり、血管が浮き出る。目を吊り上がらせて顔を鬼のように歪ませている。
クレアはビクッと肩を震わせて、怯えたような表情を浮かべる。
眼鏡の男の方は気持ち悪く手をワチャワチャを動かして、
「早く連れて行こうぜ、太郎。快楽の渦に閉じ込めて逃れられないようにしたいんだ!」
耳障りな声で、気持ち悪く笑う。
や、ヤバいこのままだと、目の前にR18な展開になってしまう。同級生がいつの間にか妊娠して、性奴隷になるのは目覚めが悪い。
僕は催眠アプリを起動する。急いで近づこうと足を前に出した瞬間に、
「それにしてもこいつ、本当に胸がないな」とパーマの男が笑う。
震えていたクレアはピタリと動きを止める。
「でもこういうのがいいんじゃないすか、このロリは堕としがいがある」と眼鏡の男。
クレアの表情が、怯えから……憤怒へと変化する。
僕はクレアを掴んでいる男の腕に、渾身の手刀をくらわす。
颯爽と登場した僕は、出来るだけ低い声で格好よく言い放つ。
「泣いているのかクレア? 大丈夫、僕が来たか――」
「誰が貧乳ペチャパイロリ顔小学生だァー‼」
クレアが本気で足を蹴り上げる。そして僕が間にいることに気づいた。
勢いが止まることなく……僕の股間に鈍い衝撃が走る。
神経が危険信号を出す。内臓を直接握りしめられた感覚に襲われた。
僕は寸前の所で、意識を踏ん張りスマホを二人の男に見せつける。
「め、命令。今すぐここから立ち去り帰宅、ぼ、僕とクレアの記憶を削除……」
手に力が入らなくなり、スマホを地面に落とす。破損音が鳴り響く。
僕の命令を聞いた二人の男は、ビシッと視線を正してその場から立ち去っていく。
僕は地面に膝をついて、下腹部を抑える。
クレアは申し訳なさそうに瞳を潤わせて、僕の体を揺さぶる。
「ご、ごめんっ! ワタシが合気道やってるせいで、多分潰しちゃったかもしれない」
クレアが僕の体を揺らすたびに、仄かな刺激が全身を駆け巡る。
意識が朦朧としていき、視界が徐々に狭まっていくなかで、
「あ、合気道をやっていたから、そんなにぷりけつだったんだな」
クレアのスカートの中を覗いた時のことを思い出した。
あの時は下着の方に注目してしまったが、今は引き締まった綺麗なお尻が脳裏に浮かんできた
僕がボソリと呟いたことを、クレアは聞き取っていたらしく、
「……ッ⁉」
視界の端でクレアの顔が真っ赤に染まる。
クレアは何度か声を荒げたあと、足を振り上げて――僕の意識が途切れた。




