えい。
そうだなぁ。
液体を消滅させる魔法なんて存在しないしなぁ。
「魔法創るわ。」
「ポンポン創られたらたまったもんじゃないわ。この魔法だって何年かかったか知っているの?
いくら私の先輩、一度魔王になったぐらいであの魔法が使えるとでも?
あんた確か、【望みの願い】っていう薬創ってなかったっけ。」
「よく知っているな。あぁそうだ。俺は薬を創った。いい機会だ、魔法の深淵の一歩手前を見せてやろう。」
「魔法の深淵?なによそれ、まだそんなもの隠し持ってたの?」
「深淵というものがなんなのかは一旦おいといて、この魔法はそうだなぁ...簡単に言うと魔法を魔法で作るのさ。」
「リスクは?」
「リスクはある。深淵に招待されるのさ。招待されたものは糧となる。」
「深淵の糧?深淵は場所ではなく生き物?」
「考察が捗っててなによりだ。こんな状況でも自分を優先にするその意志、俺以上だ。素晴らしい。」
「悪かったね!で、さっさとしないとほんとにやばいかも。私が言うのもあれだけど本気でまずいかも。」
「では始めよう。魔法の本来の力を見せてあげよう。」
俺は服のポケットから瓶を二個取り出した。
「それは?」
「これは、そこら辺に落ちていた葉っぱと、そこら辺の土さ。」
「えぇ。」
うそうそ、実際は神聖な樹の若葉と魔力を多く含んでいる魔土だ。
一般人にはただの葉っぱと土にしか見えないが、目を鍛えているものならば魔眼視でみわけることができる。
「この土に葉っぱを置いて...。」
俺は片手で魔法を使ってヴァ―ナに葉っぱと土の準備を見せながら、
後ろで別の魔法を発動させた。
あたかも葉っぱと土で魔法を発動させるように思わせるのがミソだ。
後ろで発動させてる魔法は創造魔法。
多分というかこの世界でちゃんとした創造魔法を使えるのは俺だけのはずだ。
悪いがヴァ―ナには見せてあげることはできない。
悪用されたら最悪すぎるからな。
「おぉ、ただのゴミにしか見えないものが魔法の要になるなんて...。」
馬鹿でよかった。たまに熱心すぎて一点しか見ない癖がある。
それを利用させてもらおう。
「えーと、『この代償を糧とし この毒を 祓え』」
「それはついさっき私が使った記述式魔法!3節でなんという魔力...!?」
「えー、えい!。」
えい。なんという雑な魔法発動。
他になかったのか俺。
「えい?なんか適当...。」
葉っぱが光り土が動き出す。
俺は素早く液体に瓶を放り投げた。
「ヴァ―ナもうちょっと上に来い。まきこまれるぞ。」
「は、はいぃぃ。」
ちょっと眩しかったみたいだ。
液体のもととなる球体に土が入った。
ボコボコと音を立てて、液体は土に飲み込まれるように広がっていった。